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第361話 トシコVSユウ

 



「オークの加護ってのがあんたのスキルらしいね。」


 トシコが向かい合ったユウに話しかけた。


「それがどうしたのよ?」


「ドンパチの前に相手の能力を探るのはバトルの基本でしょ。」


「そんなん聞かれて教えるわけないでしょ。」


「オークってのが何か知らないけど、魔法を弾き飛ばす事から考えてバリアみたいな物なんでしょ?」


「・・・・・・・・」


 どうやらユウは無言を貫くみたいだけど、トシコはオークも知らないのか。


「ま、もともと魔法の使えないわたしには関係ないけどね。でもわたしあんたのスキルの弱点に気付いてるんだ。わたしのスキルも相手の攻撃を無効化するものだからね。似たようなものでしょ。」


「・・・・・・・・」


「わたし、魔法は使えないけどね。盗賊のスキルってやつが使えるの。なんせわたしは冒険者じゃなくて盗賊だからね。そのスキルをオークの加護とやらで防いでみなさいよ。」


「・・・・・・・」


 こいつ、どうどうと自分が盗賊だと言っちゃったよ。


「もう良いかな?おしゃべりはそのへんにして試合を始めても。」


「ああ。ごめん。ごめん。どうぞ。」


 試合前の心理戦が面白いのだが無言を決め込んでいるユウ相手ではトシコの痛い独り芝居になってしまう。その辺の空気を読んだのか一号アメリが止めさせた。


「それじゃあ始め!」


 一号アメリの号令で試合が始まったが、どちらも飛び道具の魔法を使えない者同士だからか、開始直後に攻撃を仕掛けると言う事なくお互いの出方を伺っていた。


「今度はオークの加護とやらを使わないの?」


「ふん。魔法も使えない相手にそんなものは必要ないわね。」


「ふーん。使わないんだ。使う必要も無いって言うんだ。だったらこっちは盗賊のスキルを遠慮なく使わせてもらうよ。」


「まずは盗賊斬り!」


 これ、わたしも喰らった事あるんだけど、斬りながら相手の財布をかすめ取るいやらしい技ね。でも財布を取るのは素晴らしいけど、技自体の威力はそれほどでもないのよね。


「なんなの?どんな恐ろしい攻撃が来るのかと身構えてたけど、ただの袈裟斬りじゃないの。」


 さすがは毎日素振りを欠かさないでいたユウね。トシコの必殺技を難なくかわしたわね。


「ふーん。可愛らしい財布ね。」


 そう言ってトシコは経った今すったばかりの財布をユウに見せた。


「え!いつの間に?泥棒?」


「そうよ。わたしは泥棒なのよ。悪い?」


 とうとう自分で泥棒と認めやがった。悪いに決まってるじゃないの。


「次はわたしの最大奥義よ!オークの加護とやらで、防がないと大変な事になるよ!」


「ふん!だから必要ないって言ってるでしょ!」


 ここまで来てわたしにも分かってきた。ユウはオークの加護を出さないんじゃなくて出せないんだ。おそらくトシコのスキルキャンセルみたいに一日一回、一定時間しか出せないんだ。同じようなスキルを持ったトシコだからこそいち早く気付いたんだわ。それにしてもトシコの最大奥義って何かしら。盗賊の奥義だからどうせろくでもない物に違いないだろうけど。


「それじゃあ行くよ!追いはぎ!」


 そう言うとトシコはユウに斬りかかった。斬りかかったと言うよりもユウの服に竹刀を絡ませたと言うのが正しかった。わたし達冒険者の着る服ならともかく、ただの町娘のユウの着るこの世界の服は非常にもろかった。そのため簡単にびりびりと破り裂かれてしまった。


「キャー!」


 この世界ではブラジャーなんて便利な物は普及していない。さらに悪い事には暑い南国のハナハナである。ユウはアロハシャツみたいなのを一枚しか着ていなかった。せめてもの救いはワンピースでなくて下は半ズボンだった事だ。公衆の面前で胸をさらす羽目に陥ってしまったユウは竹刀を放り投げてあわてて手で胸を覆った。もう試合どころではなかった。


「はい!お終い!」


 そう言ってトシコはユウの無防備な頭をぽこんと軽く撃った。


「お見事!一本!それまで!」


 一号アメリがトシコの一本勝ちを宣言した。


 たしかにトシコの言う通り大変な事になった。水着を着るだけで大騒ぎされるようなこの世界で胸をさらすのはとんでもなく恥ずかしい事だろう。そう言う事にわりとオープンな異世界人のわたし達だって耐えられないのだ。ましてや現地人のユウにおいてやである。かわいそうにユウはうずくまって泣いてしまった。


 わたし達の試合を遠巻きにして見ていたギャラリー達は突然のハプニング、いやラッキースケベに大騒ぎであった。


「これはちょっとまずいな!」


 ビーチパラソルを片付けながら一号アメリが言ったがこれはちょっとどころの騒ぎで収まりそうにもなかった。


「仕方ない!逃げるぞ!サオリ!」


「アイアイサー!みんな!隣の人と手を繋いで!」


 うずくまって泣いているユウにはサオリがやさしく肩にふれた。


「みんな!良いかな!ワープ!」


 突然目の前にいたエロい美少女達がかき消すようにいなくなったものだから、ビーチで大騒ぎしていたギャラリー達はしばらくあっけに取られてぽかんとしていたが、我に返ると前以上に大騒ぎした。わたし達のいた砂浜を念入りに調べる者、海に逃げたんじゃないかと海の中まで調べる者達でビーチは中々人がいなくならなかった。


「「「ギャー!」」」


 いっぽうでわたし達の方はと言うと、ワープ初体験の三人がお約束のように大騒ぎして、どうやらハナハナに初上陸した港に着いたみたいだった。



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