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第36話 バケーション

 登場人物紹介


アメリ・・・異世界転生者、脳筋野郎2


サオリ・・・異世界転移者、王国語を話せない


リオ ・・・魔法剣士、脳筋野郎1


セナ ・・・賢者の卵、守銭奴


メアリー・・四人の師匠、ドエス

 冒険者アカデミーの放課後、オレ達は教室にたむろしていた。サオリのワープで一気にリオの部屋に飛べるのであわてて帰る必要もなかったし、たまり場のリオの部屋が狭いと言うのもあった。


「ねえ。明日から学校が三連休だけど、みんな何か予定はある?良かったら、ダンジョンに潜るのも休んでお出かけしない?」


 オレ達は連日早朝からダンジョンに潜った後、夜は夜で学校で授業を受けていた。この世界の人々にとっては働きづめは珍しくないかもしれないが、現代日本から来たオレとサオリの二人は、休みはしっかりと取りたいと考えていたので、オレは提案した。


「別に予定は無いけど、ダンジョンに潜った後は家で寝て過ごそうと思ってただけだし。それで、どこに行くの?」


 リオがあくびをしながら聞いてきた。


「うん。海に行こうかと思ってさ。」


「「海?」」


 リオとセナがハモった。


「うん。海。」


 オレが答えると。


「海ってそんなに簡単に行けるの?」


 セナが聞いた。


「海って何?」


 リオが聞いた。


「え?」「え?」


「「えー!海を知らないのー?」」


 今度はオレとセナがハモった。でも、良く考えてみれば、魔物が跳梁跋扈するこの世界では、自分の町や村から出た事が無い人が多いだろうから、山奥の田舎に行けば海を知らない人がいてもおかしく無いかもしれない。でも、それが町の若い冒険者のリオだったとは。


「もう、海行きは決定事項ね。リオは嫌がっても連れて行くから。セナも強制参加ね。」


「わたしは別に嫌じゃないけど。」


「わたしもよ。それで、さっきも言ったけど、どうやって行くのよ?」


「馬車でまる一日がかりで行くのよ。」


「えー。そんなに遠いんだ。じゃあ、三日休んでも一日しか遊べないじゃん。二日も馬車生活じゃ、せっかくの休みなのに疲れるじゃん。そんな強行軍じゃ、楽しめないんじゃないの?」


 セナが不満を言った。


「セナ。あんた、忘れてるわね。うちのパーティにはサオリ大先生がいる事を。一日かけて行っても、一瞬で戻れるのよ。しかも、一度行っておけば、これから何度も一瞬で行けるようになるのよ。」


「あっ。そうだった。じゃあ、すぐ帰れるから宿代もかからないってわけね。」


「いや。宿には泊まろうよ。」


 オレはサオリにも日本語で今までの経緯を話して海行きを告げた。


「アメリ。あんたも忘れてるわね。わたしがこの世界に初めて来た場所を。」


「あっ。そうだった。」


 オレはリオとセナに、馬車に乗る必要が無い事を言った。かって、サオリが異世界の日本から飛ばされてこの世界に来たときに保護された、海辺の町にオレ達は行くことになった。リオには海が何か、セナがたっぷりと教えていた。そういうわけでオレ達は明日6時にリオの部屋に集合して海に行くことになった。ちなみに今は夏で毎日暑かった。暑いのに鍋を作ったのかよと突っ込まれるかもしれないが、オレは真夏でも鍋を食べる鍋大好き人間だ。文句あるか?




 ************************************




 翌朝6時前にオレはリオの部屋を訪ねた。サオリとセナはもう来ていてドアの前に立っていた。リオはまだ寝ているらしく部屋のドアには鍵がかかっていた。


「サオリ。ワープで部屋の中に入って中から鍵を開けて。」


「ラジャ。」


 サオリが中から鍵を開けてドアを開けてくれた。オレ達が勝手にどかどかと入ってきたのでリオがビックリして目を覚ました。


「なっ、なんで、どうしてみんな中にいるの?」


「うるさい!寝坊助、早く顔を洗ってきな。」


 オレはリオをベッドから出させると、朝食の用意をした。アイテムボックスから出した魔導コンロで目玉焼きとベーコン焼きを作った。お茶はセナが淹れてくれた。


 日本でも朝飯を抜く人が多いが、オレは、朝はしっかり食う派だ。朝のエネルギー補給で過酷な一日を乗り切れる。


 朝飯を食うとオレ達はリオの部屋からワープした。誰もいない砂浜にオレ達はワープして出た。オレはアイテムボックスからテントを出すと、さっそく砂浜の木陰に設置した。夏の日差しを遮る物が無いと日射病になっちまうからな。


「わー。これが海なのね。すごーい。広―い。大きいー。きれいー。」


 初めて海を見たリオが大興奮であった。


 オレは装備と服を脱ぎ棄て、シャツとパンツだけになると海に飛び込んだ。オレの行動を見てサオリとセナも装備と服を脱いで飛び込んだ。初めての海に警戒してリオだけは戸惑っていた。


「リオー!リオも来なよ。気持ちいいよ。」


 オレはリオを誘った。


 リオも意を決して飛び込んできた。濡れたシャツが張り付いてリオの巨乳がその形をあらわにした。凄くエロかった。


「リオー。大好き。」


 オレは興奮してリオに抱き付いた。オレが元男なのはサオリしか知らない事なので、堂々と抱き付けれるのだ。オレがリオの巨乳をもんでいると、サオリにどつかれたが。


 オレ達はキャーキャー言って水をかけあった。リオは初めてのしょっぱい水にビックリしていた。オレとサオリは泳げたが、リオとセナは泳げなかったので、オレとサオリが泳ぎ、リオとセナは浅い所で遊んでいた。ひとしきり泳いだ後、オレ達は陸に上がった。サオリのホットウオーターの魔法で塩水を流した。テントに入ると、オレはアイテムボックスからキンキンに冷えた果汁ジュースを取り出して、みんなに配った。


「海っていいね。来てよかったわ。サオリありがとう。」


 リオがサオリにお礼を言った。オレはサオリに通訳してやった。



「ド、イタシマシテ。」


 サオリが王国語で答えた。サオリもだんだん王国語が話せるようになってきていた。


「リオ。わたしにお礼は?」


「アメリは何にもしてないじゃない。」


「いや。わたしが企画立案したんだけど。」


「うん。アメリは口だけね。」


「口だけって何よ。まあ、体で払ってもらったからいいか。」


「アメリの変態。」


「そうよ。変態で悪い?」


 オレは再びリオの巨乳をもんだ。サオリにどつかれた。


 砂浜を試しに掘るとハマグリみたいな貝が面白いように採れた。オレは木の桶にいっぱいにするとアイテムボックスにしまった。


 岩場に行くとオレはアイテムボックスから釣り竿を出して、釣りを始めた。餌は貝を掘るときに出てきたミミズみたいな動物を鍛冶屋に特別に作ってもらった針に付けた。魚を順調に釣りあげていると、リオが来た。


「アメリ。何してるの?」


「見てわからない?魚釣りよ。」


「魚釣りって言うんだ。初めて見たよ。でも、ずいぶんとのんびりしたことやってるね。魚なんかこうすれば、一発よ。サンダー。」


 リオは海面にサンダーを撃った。


「バ、バカー・・・」


 オレは感電してサオリのヒールを受けるまでの間、気絶してしまった。


 オレは目を覚ますと、オレと同じく感電した魚たちを拾い集めてアイテムボックスにしまった。リオのバカに魚を釣る楽しみを邪魔されたが漁は大漁だった。ここいらいったいの魚は根こそぎ感電させられたので、もう釣りどころのさわぎじゃなかった。オレは仕方ないので、釣りをやめて、料理をすることにした。鯛にそっくりな赤い魚を鱗をそぎ、三枚におろして魔導コンロで焼いた。ハマグリもどきは鍋で煮た。味噌が無いので魚醤で味付けをした。魚を食べれないかもしれないリオとセナのために肉と野菜も焼いた。魚が焼ける香ばしい匂いにみんなが集まってきた。


「その良い匂いのするのはわたしがサンダーで捕った、魚ってやつね。」


 リオが聞いてきた。


「ええそうよ。オレと一緒に気絶させられた仲間よ。リオはお魚食った事ある?」


「食うどころか、さっき初めて見たもん。それって美味しいの?」


「うーん。リオとセナのお口に合うかどうかわからんけど、オレとサオリは大好きだよ。」


 オレは四人分の鯛もどきを焼くと皿に盛って素早くアイテムボックスにしまった。魚は熱々がうまいからな。そして、魚と一緒にうちあがったある物を焼こうとアイテムボックスから取り出した。


「え!そんな不気味な物、食えるの?」


 リオが聞いてきた。不気味な物か、小さい頃から見慣れたオレとサオリにとってはうまそうしか感想はないけど、初めて見たら不気味かもな。オレがナイフでバキバキと音を立てて捌くと、リオは悲鳴をあげて向こうに行ってしまった。これは煮ても焼いても生でも旨いけど、今日は焼きでいこうと思った。足をちょっとつまんで食ってみたが、心配しなくても旨かった。オレはアイテムボックスから折りたたみ式のテーブルを出すと、その上に焼き魚と焼肉の皿を並べた。ハマグリ汁は小鉢に入れて全員に配った。パンと冷えたミルクも全員に配った。みんなが席に着いたところで、いただきますをした。


 さすがに初めて食べる物に抵抗があるのか、リオとセナは魚を食べるのに躊躇していた。


「お魚はオレとサオリの国では欠かせない食材だよ。これをちょっとかけたら美味しいから、食べてみて。」


 オレはリオとセナの皿の魚に魚醤をかけてやった。二人はおそるおそるフォークで食べた。


「う、うまーい。お肉と違って淡白だけど、この黒い汁つけて食べるとうまいわー。」


「うん。うまいね。シンプルにお塩をふっただけでもいけるわ。」


 よかった。どうやら異世界人の口にも合うようだ。まあ異世界人の味の嗜好なんてどうでもいいけどな。オレとサオリの二人が食いたいから料理したんだし。久しぶりの魚にサオリが涙を流して食べて言った。


「パンじゃなくてご飯が欲しいよね。」


「うん。欲しい。熱々のご飯と食べると美味しいだろうなー。」


 オレの目にも熱い物が込み上げてきた。


「二人して感動しているところ、悪いんだけど。このスープはどうやって食べるの?」


 リオがハマグリもどき汁を持って聞いてきた。


「うん。これはこうやって器から直接飲むと良いよ。中に残った身はフォークで食べて。」


 オレは小鉢に口を着けてハマグリ汁を飲んでみせると、残った貝を箸で食った。


「このスープも旨いわねー。それで今気づいたけど、アメリ達はスティクで食べてるんだね。」


 リオがオレとサオリの箸に気づき聞いてきた。


「うん。オレ達の国ではこの箸がフォークの代わりなんだ。これでなんでも食べるよ。」


「アメリ。そこで焼いているのはカニじゃないの?」


 涙を流して魚を食べていたサオリが気づいて聞いてきた。


「そうよ。リオのバカが根こそぎ感電させてくれたおかげで思わぬ大物が手に入ったのよ。どうやら、焼けたみたいだから、皿に盛るね。」


 オレは大皿に焼けたカニを盛った。香ばしい匂いが堪らない、サオリと二人でがっついて食べた。うまい。うますぎる。そんなオレとサオリをリオとセナが眺めていた。


「どうしたの?冷めると美味しくないわよ。さあ、食った食った。」


 オレは二人に声をかけた。


「それって、さっきアメリがさばいた蜘蛛の魔物でしょ?」


 リオが恐る恐る聞いた。


 蜘蛛の魔物!カニって初めて見る人にはそう見えるのか。言われて見ると似ているかも、蜘蛛も旨いかもしれないな。


「姿は不気味かもしれないけどうまいんだから。だまされたと思って食ってみ。」


 オレは焼き立ての足を折って身を取り出しやすくしてやって二人に渡した。二人は恐る恐るカニの足を食べた。


「なにこれ。うまーい。」


「蜘蛛の魔物ってこんなに美味いんだー。」


 異世界人の二人も大絶賛であった。


 オレ達は海の幸を満喫した後はテントで昼寝をした。どれくらい眠っただろうか、オレは何かの気配で目を覚ました。そこにはオレ達の食べ残しを漁る大きなタコがいた。まずい。


「みんな!起きて!魔物よ!」


 オレは大声を出してみんなを起こした。


「なにあれ?悪魔?」


 リオが叫んだ。初めてのタコは悪魔に見えるんだ、ってそんな事呑気に考えてる場合じゃないわ。


「みんな!行くよ!」


「「「おう!」」」


 オレ達はマッドオクトパスLV30に向って走り出した。


「ファイアーボール!そして突きー!」


 リオが必殺のファイアー突きを繰り出した。しかし、マッドオクトパスは平気だった。


「何!効かない?あっ。あれー!」


 リオはマッドオクトパスの長い足に捕まってしまった。


「た、助けてー!」


 リオが泣き叫んだ。


「セナ!オレとサオリに強化魔法をかけて!サオリ!海の生き物の弱点の魔法は何かわかってるよね?」


「もちろん。」


「じゃあ、本当の頭を狙って、撃つよ!」


「「サンダービーム!そして突きー!」」


 セナの強化魔法で強化されたオレとサオリのサンダー突きがほぼ同時にマッドオクトパスの足の付け根の部分に決まった。マッドオクトパスの色がどんどん抜けていく。どうやら、やったみたいだった。


「え?頭ってそこなの?リオが最初に撃った所じゃないんだ。」


 セナが聞いた。


「うん。頭に見える所は内臓が詰まってるのよ。それで水の魔物には火の魔法じゃなくて、電気の魔法ってのはオレ達ボケもん世代の常識さ。」


「ボケもん?なんかよくわからんけど、気絶しているリオはどうするの?」


「しかたない。助けるか。サオリ。ヒールをかけてあげて。」


 サオリはマッドオクトパスの足を切ってサオリを救助すると、ヒールをかけて介抱した。


「アメリ。この大ダコはどうするの?」


「もちろん、回収するわよ。」


 アイテムボックスに入るか心配だったが簡単に入れる事ができた。


「わー。死ぬかと思った。」


 サオリのヒールで目を覚ましたリオが叫んでいた。


「マッドオクトパスは怪力だからね。」


 オレが言うと。


「マッドオクトパスじゃなくてアメリとサオリの魔法でよ。ビリってきて気が遠くなったわよ。」


「悪い。悪い。でも、さっきのリオのサンダーがあるから、おあいこじゃん。」


「おあいこじゃないわよ。わたしはアメリとサオリの魔法をダブルで受けてんだから。」


「まあ、これに懲りたら、先走りしないように気を付ける事ね。四人全員のサンダーでもっと楽に倒せるはずだったんだから。」


「え?そうなの?」


 「うん。水の魔物がサンダー(電気)に弱いのはオレ達の国では常識だったんだから。」 


「わかった。気を付ける。」


 リオが素直にうなづいた。


 飛んだ飛び入りでオレ達の浮かれたリゾート気分は一気に吹き飛んだ。きれいな景色でもここは異世界なんだ。油断大敵であった。


 しばらく、みんな無言で呆けていた。


「もう。帰ろうか?」


「「「うん。」」」


 オレ達はテントをたたみ、鍋や食器を洗うとサオリのワープでリオの部屋に帰った。



 ***************************************







 ブクマと評価をお願いします。神様仏様読者様。

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