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第357話 ホノカVSトシコ

 



「これは剣道じゃないから、籠手一本とかないよ。片手斬られてももう片手が残ってるからね。頭か胴を斬られて審判のわたしが致命傷だと判断したら一本だから。後、ホノカの申し出で魔法あり、スキルありになったから。トシコはスキルキャンセルを使っても良いよ。」


 審判の二号アメリが注意事項を説明していたけど、わたしはそれどころじゃなかった。なぜならファイアーボールの呪文を唱えていたからさ。うん。魔法が駄目なのは知ってるけどさ。一応ダメ元で唱えたんだ。


「それじゃあ始め!」


「スキルキャンセル!」


 二号アメリの開始の合図と同時にトシコが叫んだ。


「ファイアーボール!」


 ちょっと遅れてわたしも魔法を撃ったんだけど、やはり不発に終わった。え!もしかして今のがトシコのスキルの発動条件?もしかしてタッチの差で負けたの?しまった。ダメ元とか言ってないでさっさと撃てば良かった。とにかく魔法を封じられたからには後は剣と剣の勝負よ。


「いやー!」


 掛け声とともにトシコが斬り込んできた。上段斬りね。わたしはこれを竹刀で受けた。さらに連撃が来たが全部竹刀で受け流した。そしてつばぜり合いになった所でそれを嫌ったトシコがわたしを力任せに突き飛ばした。突き飛ばされたわたしは体勢が崩れてしまった。やばい。もうダメだ。しりもちをつきながらわたしは負けを覚悟していた。しかしトシコは撃ってこなかった。


「どうして?」


「弱い相手が倒れてる所にとどめをさしても面白くないからね。」


 わたしが聞くとトシコは小ばかにしたように答えた。


「今のが最大にして最後のチャンスだったのに。バカね。」


「ふん。相変わらず威勢だけは良いわね。」


 威勢が良いだけではないよ。わたしの地獄の半年は無駄ではなかったんだ。ホーンラビットやゴブリン達と生きるか死ぬかの死闘を繰り返してきたわたしにはトシコの剣がよく見えた。ホーンラビットの地獄突きに比べたらトシコのぬるい突きなんて止まって見えるわよ。


「てりゃー!」


 またトシコの連撃が始まったわ。上段から始まり、中段斬りに今度は籠手まで狙って来たわ。わたしはそれらの攻撃を竹刀で受け、自分から距離を取った。


「ふん。避けるのは上手いみたいね。でも避けてるだけじゃ勝てないよ。めーん!」


 今度は剣道の飛び込み面を撃って来た。わたしは竹刀を上に上げてそれを受け流した。


「さすがにわたしのへっぽこ剣じゃ通用しないのは分かってるよ。だけどね。攻撃を止めて守備に専念すればトシコの剣ぐらいは簡単に見切れるんだよ。」


「ふん。そうやっていつまで逃げ切れるのかしら。そろそろ疲れてきたんじゃないの?」


 またもや連撃が始まった。しかし防御に徹したわたしには有効打が入らなかった。


「たしかに避けるのは上手いわね。だけど何回も言うようだけどそれじゃわたしに勝てないよ!攻撃したら?」


 攻撃パターンを変えたようで、今度は突きばかりの連撃だった。悪いけどホーンラビットの地獄突きをかわし続けてきたわたしにはそんなもの通用しないよ。


「さっきから見てたらただの面打ちや突きみたいなのばっかりじゃない。盗人斬りとか盗賊突きとかのスキルはないの?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・」


 わたしの問いかけには答えず、トシコは無言で撃ってきた。


 再び距離が開いた時にわたしはかまをかけてみた。


「それはそう言うスキルがないんじゃなくて出せないんでしょ?あんたのスキルキャンセルは凄いスキルだけど、スキルを出している本人もスキルがキャンセルされてしまうんでしょ?」


「そうよ。よくわかったわね。わかったところで逃げ回ってるだけじゃわたしには勝てないわよ。」


 やはりそうだったのか。かまをかけたのが当たった。当たったところでそれでわたしが有利になったわけではないけど。


「待て!」


 わたしがあまりにも攻撃しないので審判の二号アメリが注意をしてきた。まあこの戦いはポイント制じゃないからいくら注意されてもかまわないけどね。


「おい。おい。いくらなんでも逃げ回ってるだけじゃダメでしょ。攻撃しないのなら反則負けを取るよ。」


 え!注意だけじゃなかったの。


「反則負けって。わたしがどれだけの時間逃げ回ってたと言うのよ?」


「うーん。3分少々かな。だらだら逃げ回られたらさすがに見てるわたし達も面白くないわよ。」


 わたしの抗議に二号アメリは懐から懐中時計を出して答えた。ちょっと逃げ回り過ぎたかな。


「大丈夫。もう逃げないよ。仕込みは終わったからね。これからわたしの華麗なる反撃が始まるから期待して。」


「よし!ホノカ、その言葉を信じるわよ。でももしまた逃げたら反則負けにするからね。」


 そう言うと二号アメリはわたしの思惑が分かったのかにやりと笑って離れると試合を再開させた。


「よし!試合開始!」




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