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第355話 多数決

 



「ちょっと待った!」


 おもむろに顔を上げて一号アメリが叫んだ。一号アメリの声を聞いて足早に立ち去ろうとしていたトシコとエリカが足を止めた。


「多数決はまだ終わってないわ。」


 あ、この声は一号じゃなくて二号じゃないの。


「まだわたしの票が入ってないわよ。わたしはトシコとエリカの加入に賛成よ。」


 出たよ。究極の自作自演、一人二役。自分で自分の行動を否定する変態プレイ。でもだーれも突っ込まなかった。いや突っ込めなかった。


「トシコ、エリナ戻ってきて!一号がいくら反対しようとわたしが守ってあげる!あなた達は今日からわたし達の仲間よ!」


 トシコとエリナはポカーンとしていた。それも無理も無いだろう。だって自分達を追い払った張本人がその舌の根も乾かぬうちから戻って来いだの守ってやるだのと言ってるんだもんね。


「二号。一号も出して言わないとトシコには分からないよ。」


「そうか。わたしらが二人いるって事が分からないと、わたしが変な事を言うただの危ない人だと思われちゃうよね。ありがとう。ホノカ。」


 そう言うと二号は懐から式神の元となる板を取り出すと念を込め始めた。板はあっという間に二号の分身である一号に変身した。二号の式神の術もイサキに負けず劣らずになるほどに上達しており、どこからどう見てもアメリが二人になったとしか見えなかった。


「自分で言った事に自分で反対するんだもんな。」


 今出てきた一号は何やら納得いかないようでぶつぶつ文句を言っていた。


「え!どうなってるの?アメリが二人?双子?」


「おいおい。ますますトシコが混乱しちゃったじゃねえか。」


「ちょっと、一号は黙ってて!わたし、アメリは多重人格者なの。普段はどちらかがこの体を順番に使っていて一人だけなんだけど。そこにいるイサキに教えてもらった式神の術でわたしのサブ人格であるこの一号を外に出す事もできるの。だからわたし、アメリは一人だけど二人でもあるんだ。トシコを入れないのは血も涙もない一号がかってに決めた事だから、本体のこのアメリさんが仲間にすると言ってる以上はもう仲間で決定だから。安心して!」


「何かよく分からないけど、入れてもらえるんだよね?良いの?わたし達盗賊だよ。」


「良いよ。良いよ。」


 これで大団円かと思われた所に水を差す者が現れた。イサキである。


「ねえ。二号が一票入れても3対3じゃないの?」


「ああ、もう良いんだよ。オレはあくまでも二号のサブ人格だから二号の決めた事には逆らえないんだよ。」


 ああ、それならそう言う事は最初から自分の頭の中で決めてくれよ。おかげでわたし達みんなよけいな混乱したんだから。


「うーん。そうねえ。自作自演者のアメリ達の意見はともかく満場一致でないのはたしかだから、しばらくは仮入団で良いんじゃない。半年間ぐらいトシコ達の様子を見てさ。その間に自分らの仲間にしても良いとみんなが思ったらはれて仲間にしたら良いんじゃない?」


 さすがはいつも冷静なサオリだ。うまくその場をまとめた。


「よし!サオリの言う通りだ。トシコとエリナの入団を認めよう。ただしオレを始め何人かはお前たちを完全には信頼していないから仮入団中の半年は心を入れ替えて頑張ってくれ。」


「ありがとうございます。」


 一号の入団許可にトシコは涙を流しながら深く頭をさげて答えた。


「トシコ。もう仲間なんだからタメグチで良いよ。ごめんね。不安になるような事ばっかり言って。もう安心して良いよ。あんな事言ってるけど、本心じゃないから。一号も本当はトシコと仲間になれてうれしいんだから。今までよく頑張った。もう頑張らなくても良いんだよ。わたし達が守ってあげるから。」


 そう言って二号アメリはトシコに抱き付いた。


「アメリさん。」


「アメリさんじゃないの。アメリ。言ってごらん。」


「ア、アメリ。」


「もう!一人芝居の自作自演のマッチポンプはもう良いわよ。一号もトシコに抱き付きたいんでしょ?ほらほら!」


「ばれたか。」


 サオリに挑発された一号は何を思ったのかトシコでなくエリナのほうに抱き付いた。


 突然訳も分からず抱き付かれたエリナは嫌がっていた。しかしかまわずに一号は抱き続け、あろうことかその唇にキスまでしてしまった。


「な!な?」


 口をふさがれてしゃべられないエリナに代わってトシコが無言の抗議をした。


「さっきのお返しだ!そう伝えてくれ!これでチャラにしてやるってな!」


 さっきのお返しって、斬られそうになったお返しね。そう言えばトシコの陰に隠れてたけど、エリナもなかなかの美少女だわ。


「わたしのファーストキスを返せとエリナが怒ってるけど。」


 トシコが笑いながら言った。


「じゃあトシコのファーストキスはわたしがもらうわ。」


 そう言ってトシコに抱き付いていた二号がトシコにキスをしようとした。


「え!ちょっと待って!わたしもアメリみたいな美少女は嫌いじゃないけど、心の準備が・・・・」


「問答無用!」


 問答無用って斬りつけるわけじゃあるまいし、哀れ、逃れようともがくも二号の腕力に到底敵わないトシコはその唇を奪われてしまったわ。あれ!最初暴れていたトシコが大人しくなったわ。それどころかなんか自分の方から二号に手を回していない?それにしてもこの二人ずっとキスしたまんまなんだけど。それに唇と唇を合わせるだけのただのキスじゃないわ。もっと激しいの。これってデープキスって言う奴じゃないの?これ絶対に舌と舌を絡め合ってるわよね。なんか見てるこっちの方がエロい気持ちになってきたんですけど。


「おい!いつまで乳繰り合ってるんだよ!」


 一号が二人を無理やり引き離したんだけど、そうしなかったらいつまでもキスしてたんじゃないの。おかげでわたしまでキスしたくなっちゃったよ。女の子同士のキスシーンでムラムラするなんてわたしはノーマルのはずなんだけど。わたしにもレズッ気があるのかしら。いや、絶対に違うと思う。わたしの好きなのはイケメンなのよ。イケメン同士のBLがわたしの好物なのよ。これって一時の気の迷いよ。女の子ばっかりで固まって生活してるからこんな気持ちになってしまうのよ。よく女子高とかで女の子同士のラブラブがあるじゃない。それと一緒よ。それにしてもトシコ、こいつはやっぱり要注意人物だわ。盗賊は伊達じゃないわ。二号の心を盗んでしまったみたいじゃないの。あ、わたしったら、トシコに嫉妬してる?




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