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第352話 カタリナ到着

 



 リオの空気を読まない発言によって気まずい雰囲気になってしまった。ここは嘘でも二号のほうが良いと言うべきでしょ。


 いたたまれなくなったわたしは所在なげに前を見つめていたんだけど、海の上に小さな丸い点を見つけた。


「ねえ!あれってカタリナ?」


「うん。正確にはカタリナの周りにあるたくさんの小島の一つだけど、もうほとんどカタリナに付いたと言って良いわね。」


 丸い点が大きくなるにつれて他にもイサキの言う通り多くの点(島)が見えてきた。


「あ!あれね?」


「そう!あれよ!」


 興奮するわたしに釣られて答えるイサキも興奮していた。


 イサキの答えた、あれ(カタリナ)はいきなり目の前に現れた陸地だった。今まで海しか見えなかったのが今度は見渡す限りの緑の大地だった。


「イーラムと違って緑の豊かな所ね。」


「そうよ。二号、米が採れるから美味しいご飯を期待しても良いわよ。」


「「米!」」


 イサキが二号アメリに言ったんだけど。米という言葉に元日本人のわたしとサオリは思わず反応してしまった。それも仕方ない事だ。わたし達も一号の料理でたまに米のご飯を食べる事があるけど、王国において米は非常に貴重で高価な穀物であるから特別な時だけであった。つまりは米のご飯に飢えていた。


「ねえねえ。美味しいご飯て、どんなの?」


 サオリが質問したがわたしも気になる。


「そうね。この前アメリが作ったカレーみたいな辛い料理が多いかな。」


 イサキが答えたけど辛い料理って事はやはりここでもエスニック料理みたいな感じの料理が出るのかな。そう言えばここ何日か暑かったし、どうやら南国に来ているみたいね。


 そうこうしている内に船は港に着いたみたいだった。船が港に着岸すると役人らしき人物が何人か船に乗り込んできて簡単な取り調べをした。どうやらジパン語で言っているようなので、わたし達の審査はイサキが代表して受けてくれた。入国審査はあっけなく終わりいよいよカタリナに上陸だ。


 カタリナの街はいわゆる南国の街で行きかう人も多く活気あふれる街だった。しかし街の様子なんかよりも特筆すべき事は街の人の顔であった。ちょっと浅黒いけどわたしやサオリと同じような顔をしていた。地球で言う所のアジア人顔である。黒目黒髪に平べったい顔。わたしはタイランド人に親近感を持った。


「それでこれからどうするよ?」


 イサキが聞いてきたけど、この脳筋パーティならもちろん魔物狩りとか言うんだろうな。そう思ってリーダーのアメリの方を見た。


「何をするって?わたしのこの格好を見て分からないの?もちろん観光にショッピングよ。」


「「「やったー!」」」


 そうだった。アメリはアメリでも今は大人しい方のアメリ、二号だったんだ。二号なら魔物狩りとか野暮な事は言わないよね。あ、でも借金王のわたしには先立つものがない。


「どうしたの?ホノカ。浮かない顔して。」


 二号アメリがやさしく声を掛けてくれた。


「わたし、お金持ってない。」


「ああ、大丈夫。旅で使ったお金は美少女戦隊の財布から出すから。気にせずじゃんじゃん使ってよ。」


 そう言って二号アメリはアイテムボックスから、先程船で両替したカタリナの通貨が入った重そうな布袋を取り出した。


「じゃあ何買っても良いの?」


「あまりに高い物とつまらない物はみんなで審査するけど、そうでなかったら基本何買っても良いよ。」


「やったー!」


「じゃあそう言うわけでまずはショッピングね。欲しい物があったらわたしが買ってあげるけど、無駄使いはだめよ。」


「わかりました。お母さん。」


「誰がお母さんや。」


 私のボケに二号アメリは突っ込んだけどまんざらでもない様子だった。


「ねえ。お腹すいてない?さっきから良い匂いがするんだけど。」


 リオの言う通りわたしもお腹がすいていた。なんせ朝早くから活動しているのにお昼近くの今まで何も食べてなかったからだ。


「よし!じゃあそこの串焼き屋さんで串焼きを買って来る。」


 そう言って二号アメリは屋台の串焼き屋に入って行った。片言のジパン語で店主に話しかけていたが何とか買えたみたいだった。焼いた串焼きをバナナのような大きな葉に包んでもらって出てきた。串焼きは牛肉みたいな肉の塊と野菜を交互に串に刺して焼いたバーベキューみたいなものだったがお腹がすいてた事もあって大変美味しかった。


「美味―い!もう一本ないの?」


「まあ待ってリオ。今日は初日だしまだ他にも美味い物あるかもしれないから。一つの物でお腹膨らませるよりいろんな物を少しずつたくさん食べた方が良くない?」


「それもそうね。」


「そう言う事で次はあのお店ね。」


 二号アメリの言う通りだ。ここは屋台通りで美味しそうな雰囲気のお店が軒を連ねていたのでわたしももっと色々と食べ歩きたかった。二号アメリの指し示したお店は今度はラーメンみたいな麺を売っているお店だった。


「あ、なんか辛さが選べるみたいだけど?」


 店主と片言のジパン語で話していた二号アメリが聞いてきた。


「わたし、辛口で。」


「わたしも。」


 辛いのが好きなわたしは辛口と言ったけど、サオリも辛口と言った。結局、偶然にも元日本人コンビは辛口で他の3名は無難な普通味を選んだ。出てきたのは米で出来た麺のラーメン。フォーみたい物だった。久しぶりのラーメンはうまいんだけど、とんでもない辛さだった。わたしとサオリは涙を流しながらせき込みつつもなんとか食べる事ができた。ちなみに二号アメリに一口もらったけど普通味でも相当辛かった。今後二度とカタリナでは辛口の食べ物は食うまいと思ったわたしとサオリであった。


「今度はあれ食おう。」


 リオの指し示したお店は饅頭のような物を店頭で焼いて売っていた。


「よし。じゃあ人数分買って来るわね。」


 二号の買って来た饅頭をわたしももらって食べてみた。


「あ、これってあんこじゃなくて肉が入ってる。」


「そうそう。肉まんね。」


 元日本人コンビのわたしとサオリはもちろん肉まんが好物だけど、王国人の二号とリオも、それにジパン人のイサキも旨い美味いと言って食べていた。辛口フォーはちょっと苦手だけど、他はみんな美味しい。食に関しては合格の地ね。カタリナは。


 次に入ったお店はどうやら鍋物のお店みたいだった。こんな暑い所で鍋を食べるのもどうかと思ったけど、暑い時に鍋をふーふーしながらすするのも乙な物だった。もちろんご飯に飢えているわたし達はご飯も頼んだ。あ、鍋の味付けはもちろん普通味よ。辛口はもう懲り懲り。


 お腹がいっぱいになった所で今度はショッピングね。まずはおしゃれな服からよ。わたし達は服屋に突入すると片っ端から試着して買い求めたわ。あまりに大量に買うもんだからお店のご主人が目を丸くしてたわ。でももっと驚いていたのは二号アメリがそれを隠しもしないでアイテムボックスに入れた時だったけど。旅の恥は掻き捨てじゃないけど、たぶん二度と来る事もないだろうからスキルをべつに隠さないんだと。服は南国らしくアロハシャツみたいなものが多かったけど、色使いが派手でかわいい服も多かったの。いっぱい買えてうれしい。自分のお金も使ってないしね。服の次は武器に防具よって事で何軒んか覗いたけど、わたしには分からないけどあまり良い物は売ってなかったみたい。ひやかしただけで終わったわ。


「よし。お土産も買ったし、今度は食料の調達だ。」


 アーリン達留守番組に可愛らしい小物とかを買ってお店を出ると二号アメリが市場の方を指さして言った。


「そう来なくっちゃ。」


 可愛い物にあまり興味を示さないリオは市場に行くのを楽しみにしていたみたいだった。


 南国らしく市場の露天にはトロピカルなフルーツや色鮮やかな魚達が並べて売られていた。それを二号アメリは例によって片っ端から買い占めて行った。市場の生鮮食品を全て買い占めるような勢いだったのが突然やめてしまった。なんでも船で両替してもらったお金が尽きたと言う事だった。お金が尽きなかったら本当に市場全部を買い占めそうで怖い。


 こんな買い物をしていれば当然のごとく目立つ。市場の中から大勢のカタリナ人達がぞろぞろ後を付いて来る羽目になったの。それは自分のお店の商品を売り込もうとする店主だったり、何かしらの施しを期待する貧しい人だったり、単純にわたし達が珍しくて興味を持った人だったりで、口々になんか言っているけど、わたし達美少女戦隊の4人は誰もカタリナ語がわからないのよね。


「ちょっとまずい事になったね。」


「うん。このカタリナ人達が鬱陶しいよね。」


 二号アメリが眉をひそめてわたしに言ったけど、元々はあなたに原因があるんですけど。


「いや、そんな事でなくて敵意のある者がまぎれているわ。」


「え!」


 わたしは思わず大きな声を出してしまった。


「し!みんなも聞いて。気づいていないふりをして市場を出るよ。市場の外に出たら海に向かって全力疾走よ。」


「「「おう。」」」


 わたし達三人は小声で返事をした。


 わたしは自然体を装ってさりげなく後ろを見てみたけど、全然わからなかった。後ろを付いてくるのは中年の店のおやじ達や買い物途中の主婦と言った感じの女の人達と言った様子で特に怪しい人物はみあたらなかった。でも二号アメリがそう言ってるんだから間違いは無いわね。二号の索敵能力は一号以上でわたし達美少女戦隊の中でも一番の能力だわ。


 市場の外れまで来ると二号を先頭にわたし達は走りだした。一般の人間ではわたし達の足に付いてはこれない。わたし達の足に付いてこれる者イコール何らかの能力者と言う事だ。


 案の定一人の若い娘を除いて誰も付いてはこれなかった。腰に剣を下げている所をみると冒険者か。わたし達美少女戦隊5人は全員丸腰だった。二号アメリの爆買いを見て金持ちの商人か何かと思われたのか。


「どうやら一人だけみたいね!ホノカ!ちょっと弱めのサンダーでも当てて痺れさせて!」


「オッケー!」


 二号アメリに言われてわたしは覚えたてのサンダーの呪文を唱えた。


「サンダー!」


 万が一にも殺してしまわないように威力を押さえたサンダーだ。この威力を調整するのって難しいのよね。


 威力を押さえすぎたのかわたしのサンダーは不発に終わった。


「何やってんのよ!ホノカ!サンダーはこうやって撃つのよ!サンダー!」


 わたしの不発のサンダーにしびれを切らしたサオリがサンダーはこうやって撃つのよとばかり自分も撃ったがこれも不発に終わった。これはもしかして魔法が妨害されてるの。


「魔法はだめだ!2号!わたしの刀を出して!」


「そ、それが。わたしのアイテムボックスが開かないのよ!」


 二号アメリが真っ青な顔で叫んだ。五対一だからと高をくくってたけどこれってピンチじゃないの。




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