第351話 二号(アメリ)覚醒
一号はやはり腹黒い野郎、いや賢い女だったわ。
初日にイサキで儲けた観客達がまたイサキに大きく賭けてくると、今度は本気を出したのかそれとも実力なのかは分からないけどイサキに勝ってしまったわ。この勝ちでわたし達美少女戦隊は初日の負債をいっぺんに取り戻せたわ。しかもその後は一号にも賭ける人が出てきたから賭けも成立するようになったからわたし達美少女戦隊が自分に賭ける事もなくなったわ。観客達は勝ったり負けたりして、一号の言う通りわたし達美少女戦隊は手数料だけで儲けられたの。それにあわせてわたし達にもファンみたい物ができて、ジパン人達に受け入れられていったわ。
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「みんな!聞いて!ビッグニュースよ!明日の朝にはカタリナに到着するそうよ!」
船室で暇を持て余してうつらうつらしているとイサキが息を切らして入って来た。
「カタリナって?」
一号が聞いたけどわたしも聞きたい。
「カタリナって言うのは次に寄港する港で、我がジパン国の友好国のタイランドの首都よ。」
イサキは仲良しの船員に教えてもらったみたいだった。そしてカタリナについて船員から聞いた事を話し始めた。わたしにとったらカタリナがどんな所でも良いけど、地面の上に降りられるのはたいへんうれしい事だった。
「やったー!それで何日そこにいられるの?」
「うんとね。出航が三日後の朝だから三日間ね。」
海に辟易していたからわたしは質問したんだけど、三日って微妙ね。もっと長く滞在したいけど、寄港の目的って物資の補充のためだとわたしも思うし、しかたないか。
*
「おはよう。ホノカ。早いね。」
「うん。やっと地面の上歩けると思うとうれしくて目が覚めちゃった。」
今日はカタリナ到着の日だと思うとワクワクしちゃってなんかなんかよく眠れなかったんだよね。そう言う一号もまだ夜も明けきらぬ真っ暗なうちから甲板に出てきてるんだけど、いやもしかすると二号か。
「ねえ。もしかして二号?」
「よく分かったわね。そうよ。わたしが真のアメリさんよ。なんでわかったの?」
なんでかな。姿かたちも変わらないんだけど、なんとなくだけどわたしにはわかるのよね。
「なんとなく。なんか雰囲気と言うかオーラが違うのよね。」
「ふーん。そうなんだ。まあ別に隠してるわけじゃないからどうでも良いけど。ホノカ、お久しぶり。」
「ええ。お久しぶり。」
お久しぶりって、わたしにしたら毎日顔を突き合わせてるんだけど。二号にとったらお久しぶりなんだね。変な話。
「おーす!」
「おはよう。」
そうこうしてるとイサキとサオリまで甲板に出てきた。みんなもうれしくて早く目が覚めちゃったみたいね。
「リオは?」
二号の言う通りリオだけいなかった。
「まだ夢の途中よ。ぐっすりと良く寝てたわよ。」
サオリが答えたけど、リオって大物よね。今日みたい日でもぐっすりとまだ眠ってるんだ。
「ねえ。みんな今日のアメリ見て何か気づかない?」
わたしは二号だと言う事を伏せて二人に聞いてみた。
「あ、分かった。今日はカタリナ上陸の日だから珍しくおしゃれしてる。」
たしかにサオリの言う通りおしゃれしてるんだけど、これはカタリナがどうというより二号だからこういう服を着たって所ね。
「ぶ、ぶー!惜しい!イサキはどう思う。」
イサキにも聞いてみた。
「そうね。ボーイッシュなアメリも良いけどスカート履いたアメリもわたしは好きだわ。」
「イサキの好みを聞いてるんじゃないけど。もう。分からないかな?アメリ。自分で言ってよ。」
「みんな。お久しぶり。わたしが真のアメリ。真アメリよ。」
「なんだ二号か。」
「なんだ二号かって何よ!イサキ!失礼よ!」
「ごめん。ごめん。」
なんだ扱いされて二号が珍しく怒っていた。
「で、偽の方のアメリはどうしたの?真、ア、メ、リ、さん。」
「うん。王国出てからずっと出っ放しだったもんだから疲れたみたい。今はわたしの心の中でぐっすりと眠ってるわ。これからしばらくはわたしが頑張るからよろしくね。サオリ。」
「そうなんだ。わたしはリオ達武闘派と違ってあんたの方が好きだから大歓迎よ。」
「ありがとう。サオリ。」
そう言うと二号はサオリに抱き付いた。
「あ、ずるい。わたしも二号の方が好きよ。」
そう言ってイサキが二号に抱き付いたが、あんたさっきなんだって残念そうに言ってたくせに。
「それでホノカはどっちが好きよ。」
イサキが余計な事を聞いてきた。
「わ、わたしは。どっちも好きかな。」
一号も二号も記憶を共有しているからどっちが好きだとかうかつな事を言えないよね。
「どっちが好きかって聞いてるんだけど。」
それに対して納得しないイサキは詰めてきた。
「まあまあイサキ。ホノカが困ってるじゃないの。どっちもわたしなんだからわからないよね。でもさ。ホノカが困って泣いてる時にやさしく声を掛けたのはどっちかな?」
そう言えばわたしを気遣って声を掛けてくれるのは二号の方だわ。なんか二人?で役割分担してるみたい。それにしても同じ人間なのに自分で自分をライバル視してるなんて変な人だ。
「二号さんです。」
「じゃあどっちが好き?」
「もう負けたよ。わたしも二号が好きです。」
そう言ってわたしも二号に抱き付いた。
「ちょっとなにみんなでいちゃついてるの?」
今起きたのか、リオが甲板に出てきた。
「わたし二号と一号とどっちが好きかって話よ。みんなはわたしの方が好きって言ってくれたのよ。それでうれしくて抱き合ってたのよ。」
「ふーん。あんた、二号?悪いけど、私は断然一号ね。だって男らしくって頼りがいあるんだもん。ごめんね。」
男らしいって一号も女なんだけど。ていうか本人の前でバッサリと切り捨てたわね。
「そ、そう。」
二号はショックを受けて寂しそうに笑った。
「何落ち込んでるの?一号も二号も同じアメリじゃないの。あんたら普通の人が持ってる性格の多面性を偶々分かりやすくしただけじゃないの。二号には二号の良さがあるわよ。」
そう言ってリオはガハハハッと豪快に笑った。
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