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第346話 巨大魚の解体ショー

 



「なにー!さっき有効だと言ったじゃないか!」


「そうよ。わたしの釣ったこの魚が負けるはずないじゃないの。」


 一号アメリといつの間にか復活したイサキはサオリの判定に納得せず猛抗議をした。


「イサキの釣った魚はどう見ても200k以上あるぜ。これに勝つってリオ達は何匹釣ったんだよ?」


「だからリオが2匹にホノカが1匹ね。3匹あわせても10K行かないかな。」


「じゃあオレ達の圧勝じゃないか!」


「重さならね。でもアメリ、あんた釣った数で勝負しようと言ったじゃないの。」


「え?そうだっけ?」


「そうよ。」


 どうやら1アメリは思い出したらしく頭を抱えた。


「すまん。イサキ。確かに釣った数で勝負しようと言ったわ。まさかこんな手こずる大物が釣れると思ってなかったから。」


「良いよ。良いよ。全然良いよ。私は負けたとは思ってないから。私の釣ったこの魚の前では私達の勝負なんて小さいもんだよ。」


 どうやら初めての釣りで超大物を釣ったイサキの方は興奮していてわたし達の釣り勝負の勝ち負けなんかどうでも良いみたいだった。


「それでさ。私の釣ったこの大物だけど、どうしようか?」


 看板に横たわる超大物を指さしてイサキがどや顔で言った。


「そんなもん。オレのアイテムボックスに・・・・・」


 今まで釣りに夢中になっていて周りが見えていなかった一号アメリも自分達が大勢のギャラリーに囲まれている事にようやく気付いたみたいだった。


「うーん。さすがにこれだけの人数の前でオレの能力を見せるのはまずいか。そうだ。良い事を思いついたぞ。イサキ、ジパンの人って刺身食べるのか?」


「うん。私達ジパン人は魚が大好きな民族で刺身でも焼き魚でもなんでも食うよ。」


「じゃあ決まった。この魚は船のみんなに振舞おう。イサキ。船員さんに話してテーブルと皿をたくさん用意してもらってくれ。後、みんなに振舞うから船室に残っている人達全員呼んでくるようにお願いして。あ、醤油ってあるんだっけ?」


「ああ、刺身につけるやつね。もちろん船にもあると思うよ。よし!今、ここにいるみんなに伝えるわ。」


 イサキがジパン語で伝えると船員はテーブルと皿を用意しに、船の客は仲間を呼びにぞろぞろと船室に戻って行った。


 しばらくしていくつもの皿とテーブルを抱えた船員達と釣りたての魚をごちそうになれると聞いた客達が集まって来た。


 船員の一人がイサキに何やら言っていた。


「アメリ。魚を捌く包丁はあるけどこんな大きな魚を捌ける包丁はないと言ってるけど。」


「ああ。大丈夫。」


 イサキが船員の言葉を伝えると、人が少なくなった隙にいつの間にか取り出したのか刀のように長い包丁を握って一号アメリが答えた。


「よし!このごっついテーブルなら大丈夫だろう。みんな手伝ってくれ。テーブルの上に魚を乗せるぞ。」


 一号アメリの号令でわたし達5人はイサキの釣った魚を持ち上げようとしたが少々厳しかった。さっきは引き釣りあげたからなんとか看板の上に上げれたみたいだった。見かねた船客や船員が手を貸してくれたので何とかテーブルの上に乗せれた。


「よし!イサキ、ジパン語に通訳して言ってくれ!これからこの魚の解体ショーを始めるとな!」


「わかった!アメリの言葉はジパン語に直してみんなに伝えるよ!」


 そう言ってイサキはほとんどの乗組員であるジパン人に向けてジパン語で一号アメリの演説を伝え始めた。イサキの通訳を聞いたジパン人達はわっと歓声をあげた。わたしも巨大魚の解体ショーは楽しみだ。


「イサキ!オレの通訳兼助手をしてくれ!」


「おう!」


 イサキがアメリの横に立つとイサキの周りにいたジパン人達も魚を乗せたテーブルを囲むように集まってきた。


「レディース&ジェントルメーン!ただ今からこちらにいますジパンの英雄イサキが釣り上げたこの巨大魚をイサキとイサキの助手のわたしで解体します!」


 そう言って一号アメリと助手兼通訳のイサキが深々と頭を下げた。イサキはジパンで有名人だったみたいで取り囲んだジパン人達は拍手と声援をイサキに送った。ジパン語の分からないわたしでもイサキ、イサキと聞き取れるのでイサキに対する声援だと推測できた。


「では、まずは頭を落とします!」


 一号アメリの声と通訳のイサキの声を聞いたジパン人達からまた歓声があがった。


「イサキ!」


 こんな大きな頭をどうやって切るのかと思っていたら一号アメリはまたもやみんなの隙をついていつの間にか取り出していたとんでもないごっつい刀をイサキに手渡しした。一号アメリはマジシャンとしての才能もあるに違いない。人の目を盗んでアイテムボックスから物を取り出すのが抜群にうまい。もっとも最初から一号アメリから目を離さないでいたら、何もない所から出すんだからもっとビックリするんだけど。


「これで頭を切れと言う事ね。」


「そう言う事。頑張れ。ジパンの英雄。」


「じゃあ、頭を落とします!」


 ジパン語でそう言ってイサキは大刀を鞘から抜いた。イサキが大刀を抜いた所でまた歓声があがった。それもそのはずで、その大刀はオーガでも簡単に真っ二つにできるであろう太くて長い刀だった。そんな立派な刀をジパンの英雄であるイサキが抜いたんだ。興奮しないジパン人はいないだろう。


「イサキ!ちょっと待って!」


 そう言って一号アメリは巨大魚を一人で引きずった。一人で引きずるなんて相変わらずこの人は怪力だ。なるほどテーブルまで間違って斬ってしまわないようにテーブルから頭をはみ出させたのね。


「よし!準備万端!いつでもどうぞ!」


 そう言って一号アメリは魚の頭をポンと叩いた。


「よっしゃー!」


 気合いを入れながらイサキは大刀を振りかぶった。


「おりゃー!」


 気合いと共にイサキは大刀を振り下ろした。


 ズドンと言う音と共に巨大魚の頭は見事に斬り落とされた。


 イサキの素晴らしいパフォーマンスに船上の観客達は拍手喝采だった。


 イサキは一礼すると一号アメリとバトンタッチした。一号アメリの持つ包丁もイサキの大刀に負けず劣らずのごっつい包丁だった。一号アメリにもイサキに負けず劣らずの拍手が送られた。派手なパフォーマンスを見せたイサキに対して一号アメリの方は黙々と作業を進めて行った。それに対して観客はかたずを飲んで見守っていた。しかし腹を大きく切り裂くときには歓声があがった。さらには腹から大きく包丁を差し込んで骨と身を切り分けて行った。三枚におろすと言うよりは解体だった。身の部分をイサキと二人で他のテーブルの上に乗せると今度はいくつものブロックに切り分けて行った。その中から一号アメリは一つのブロックを取り上げた。他の赤身に対してこの色、これはわたしでも分かった。トロに違いなかった。そのトロを寿司屋のカウンターに入ってるような柵の形にまで小さく切った。後は普通サイズの柳葉包丁に持ち替えて薄く小さく凄いスピードで切り分けて行った。しかもその大きさも形もきれいにそろっていた。日本人のわたしが見ても見事な包丁さばきであった。大皿にあっという間に刺身が大量に盛られた。すかさずイサキが魔法で氷を出して大皿に入れて行った。


「よし!これだけあればみんなに行きわたるだろう。イサキ、皿に醤油をどんどん入れて行って、後わさびも。」


「はい。」


 言われたイサキは大皿の周りに並べられたいくつもの皿に醤油とわさびを入れて行った。


「よし!ひとまず刺身は完成だ!イサキ!ジパン語で刺身ができたから皆さんで食べてくださいって言って!早い者勝ちだって!」


「おう!」


 イサキがジパン語で伝えると一際大きな歓声があがって観客の皆さんは大皿を乗せたテーブルに殺到した。観客の皆さんはテーブルの上に置かれた箸を取るとその箸で器用に刺身をつまんで極上のトロの刺身に舌鼓を打った。この人達はわたし(日本人)に近い文化を持った人達だと再認識した。大皿に山盛りに盛られた刺身だったが、これだけの人数だ。あっという間に品切れになった。品切れになると一号アメリは再び見事な包丁さばきで刺身を切り分けて行った。いつの間にか船員が酒を用意していてそれがみんなに振舞われた。最高の肴に最高の酒、おまけに郷土の英雄イサキを始めとする美少女の集団、この宴が盛り上がらないわけがなかった。イサキと一号アメリのおかげでわたし達美少女戦隊はジパン人の乗組員達に快く受け入れられたみたいだった。本来異邦人のわたし達であれば、この船の中では絶対に冷遇されると思うけど、逆に気持ちいいくらいに優遇された。食事も入浴もわたし達が一番だし、船室でも一番居心地の良いスペースをもらえた。さすがは一号アメリである。転んでもただでは起きない。勝負に負けてもこうして船のみんなの親睦を勝ち取った。

 ちなみに釣り勝負に勝ったわたしは借金を少しだけ返せた。借金完済まで道のりは長いけど頑張らなくっちゃ。




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