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第34話 魔よけのネックレス?

 冒険者ギルドを出たオレ達はメアリー師匠の家へと歩いて向かっていた。


「いやー。あのキングロックボールがドロップした宝石が、まさかの金貨10枚もするなんてねえ。」


オレ達パーティの経理担当のセナがニコニコ顔で話しかけてきた。金貨10枚は100万円相当の大金だった。南のダンジョンへの活動拠点移動に最初は難色を示したセナであったが、南のダンジョンの魔物が高価な宝石をドロップするとわかって機嫌が良かった。


「うん。ビックリだね。思わぬ収入で懐が暖かいからさ、日ごろお世話になってるメアリー師匠にプレゼントを買って行かない?どう?みんな。」


経理担当のセナが機嫌のいい時が、大きな買い物のチャンスだと思ってみんなに提案した。


「もちろん。賛成よ。リオは?」


セナはニコニコ顔でリオに聞いてくれた。


「わたしももちろん賛成よ。それで、何を買うの?アメリ。」


「うん。せっかく宝石の出るダンジョンに潜ってるんだから、勉強も兼ねて宝石屋で買わない?」


オレが答えると。


「「宝石屋!」」


二人同時にハモって言った。


「わたし。宝石屋に行った事ないんだ。行きたい。行きたい。」


リオが食いついてきた。


「わたしも大賛成よ。わたしも行きたかったんだー。」


セナも入れ食いであった。全く女の子は宝石に弱いからな。かく言うオレは半分男だからかあんまり興味はないんだけど。


宝石屋は町一番の目抜き通りにある立派な建物の店だった。一歩店に入るとそこはきらめくワンダーワールドだった。カウンターの奥にはマネキンにかけられた大量のネックレスが眩しい光を放っていた。ガラスのないこの世界では指輪などの小物は店員に言って見せてもらうが、ネックレスなどの大物は客の見える所に展示してあったのだった。

リオとセナの二人は店員に指輪を見せてもらっていた。オレとサオリはネックレスを見せてもらって、お互いに首にかけあって、似合うとか似合わないとか言っていた。


 そんな中でオレは、あるネックレスに注目した。店員の話によると、そのチェーンはオリハルコンと言うこの世でもっとも硬くて丈夫な魔法に強い金属でできていて、魔法を受けてもびくともしないと言う事で、冒険者のアクセサリーとして最高と言う事だった。


オレはみんなに、何がメアリー師匠のプレゼントに良いか聞いた。リオとセナは指輪をそれぞれ勧めてきたが、高価すぎるのと自分の欲しい物を言っているだけくさいので却下。オレは魔法に強いと言うネックレスを勧めた。いつもはオレが折れてみんなの意見を通すことが多いが、今日はオレの意見を通した。このネックレスが後でオレの身を守ってくれるのだった。金貨一枚を払って、オレ達は宝石店を出た。


「「「「こんにちは。」」」」


オレ達はメアリー師匠の家を訪れた。


「はーい。あら。いらっしゃーい。」


メアリー師匠が家事の手を止めて出てきてくれた。


「メアリー師匠、遊びに来ました。今日は大丈夫ですか?」


オレがメアリー師匠の都合を聞くと。


「何言ってるの。あなた達が最優先に決まってるでしょ。もう、今か今かと待ってたんだから。」


「オレ達をいたぶるのがそんなに楽しみですか?」


「そうよ。新しい趣味に目覚めたみたい。」


メアリー師匠がケタケタと笑った。


「そんなメアリー師匠に日ごろの恨み、いや、感謝を込めてプレゼントです。」


オレはネックレスの入った箱を渡した。


「え!そんな気を使わなくていいのに。でも、せっかくだからいただくわ。なにかしら、開けても良い?」


「どうぞ。開けてください。」


「うわー!ネックレスね。きれい。ありがとう。みんな。」


「魔法に強いオリハルコンでできたネックレスです。お美しくてお強いメアリー師匠にまさにぴったりのネックレスだと思います。どうぞ、付けてみてください。」


オレは勧めた。


メアリー師匠はさっそく身に着けた。


「どう?似合う?」


美人のメアリー師匠に光物のネックレスはマジに似合っていた。


「似合います。メアリー師匠の美しさをさらにネックレスが引き立てています。」


「キレイデス。」


「お似合いです。」


「わたしの次にそのネックレスがお似合いです。」


オレ達は口々に賞賛した。リオのアホは余計な事を言ったが。


「本当にありがとう。大事にするね。」


メアリー師匠は涙を流して感動していた。


「じゃあ、今日は大切なネックレスが切れたりしたら困るから、審判だけするね。」


メアリー師匠が言ったが、外せば良いだろうとか余計な事は言わなかった。


オレは冒険者アカデミーでやった負け抜け式の組手を提案した。剣の苦手なセナでも不利にならないように素手での対戦である。メアリー師匠は賛成してくれた。それで、一試合目はリオ対セナの対戦であった。


リオとセナは空手や柔道の試合のように審判のメアリー師匠を間に挟んで向き合った。


「それでは、始め!」


審判のメアリー師匠の掛け声と同時に。


「「ファイアーボール!」」


二人の同時に撃ったファイアーボールがぶつかってはじけ飛んだ。


「「そして、突きー!」」


二人同時に突き(パンチ)を繰り出したが、リーチの差でリオの突きだけが当たった。カウンターで渾身の突きを受けたセナは吹っ飛んだ。メアリー師匠がセナにヒールをかけて介抱した。勝ち残ったリオに対するのはサオリであった。


「サオリー。ファイアーボールはウィンドでそらせば良いよー!」


オレがリオにわからないように日本語でアドバイスを送ると。


「わたしはわたしのやり方で勝って見せるから、黙って見てなさいよ!」


オレに対抗心を燃やしているサオリはオレのやり方以外で勝つと宣言した。


「それでは、始め!」


メアリー師匠の開始の合図とともに。


「ファイアーボール!」 「サンダービーム!」


二人同時に魔法を撃ちあったが、サオリのサンダービームはリオのファイアーボールを突き抜けてリオに当たった。速過ぎて見えなかったがリオが倒れたからそう思った。倒れているのはサオリも同じであったから、相打ちかと思ったら、サオリが立ち上がった。どうやら、サオリは開始と同時にサンダービームを撃ちながら伏せてリオのファイアーボールを避けたみたいだった。


リオもメアリー師匠のヒールで目を覚ました。勝ち残ったサオリと次に対戦するのはオレだった。


「どう?今の見た?わたしのファイアー突き破り。まあ、他人が見てる前ではアメリがやったようにウィンドを使うけどね。いずれにせよ、アメリの必殺技はもう通用しないけどね。」


サオリが勝ち誇って言った。


「悔しいー!じゃあ、オレがサンダービームを破ってあげるわ。サンダービームを撃ってきなさいよ。」


オレはサオリを挑発した。


「わかったわよ。わたしの次の攻撃はサンダービームと告知するわ。破れるもんなら、破ってみなさいよ!」


サオリがオレの挑発にのってきた。


オレと対峙するとサオリは手をピストルの様にして構えていた。


「それでは・・・」


オレはメアリー師匠の方にじりじりと近寄った。。


「・・・始め!」


そして、オレは最後に低く飛んだ。


「ふん。無駄。無駄。サンダービーム。」


サオリのサンダービームが炸裂した。オレの他になんとメアリー師匠が倒れていた。ビックリしてサオリが駆けつけてきた。


「ファイアーボール!」


オレは起き上がると、温存していた魔法のファイアーボールをサオリに撃った。


「そして、突きー!」


ファイアー突きがカウンターで決まりサオリもあえなくノックアウトされた。


さすがはメアリー師匠、気絶することなく自力で起き上がってきた。そして自分にヒールをかけると、


「サオリのバカ。わたしにサンダービームを撃ちやがって。」


と言いながらサオリにもヒールをかけて目を覚まさした。


「わたしは、アメリを狙って撃ちました。あの距離なら絶対に外しません。アメリ訳して!」


起きるなりサオリがあたふたして必死に師匠に謝っていた。あまりにサオリがかわいそうなので、オレは助け船を出すことにした。


「メアリー師匠。サオリのサンダービームは確かにオレに向かって撃たれましたよ。」


「そしたらなぜ、わたしに当たるんだい?」


「それはメアリー師匠のネックレスのせいですよ。」


「「「ネックレス!!」」」


王国語のわからないサオリ以外の全員が声をあげた。


「ネックレスがどうして?」


リオも聞いてきた。


「なあに簡単な理屈ですよ。サンダー(雷)は金属と高い物に落ちると言うのはオレとサオリのいた世界では常識でした。オレがメアリー師匠に向って低く飛んだのでサンダー(雷)は手前の金属を着けてつっ立っているメアリー師匠の方に進路を変えて落ちたってわけですよ。魔法に強い金属でも、金属は金属ですからね。」


オレが得意になって答えると。


「アメリ。あんた。サオリのサンダービーム対策に、わたしにこのネックレスを仕込んだわね?」


「いや。そんな、めっそうもない。そのネックレスがメアリー師匠に似合うと思ったからですよ。」


オレが必死に弁明すると。


「だから、わたし達が指輪にしようと言ったのに、アメリが強引にネックレスにしたんだー。」


リオがまた余計な事を言った。


「アメリ。あんた・・・。サンダービーム!そして突きー!」


メアリー師匠の渾身のサンダー突きを受けて、オレは吹っ飛んで気絶してしまった。


オレは罰として、また日本の料理を作らせられることになった。




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