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第335話 ホノカピンチ

 



 わたしは2号。わたし、アメリの本来の人格よ。わたし自身は大人しいおしとやかな性格だったんだけど、異世界人の魂と融合してからは男らしいアグレッシブな人格に乗っ取られてしまったの。こういうのを人格障害だの多重人格とか言うらしいけど、わたしにとってはどうでも良い事よ。だって男らしい方の性格のアメリもわたしには違いないんだから、アメリの記憶も2号であるわたしは共有しているもの。まあ、でもわたしがこの体を使うとずいぶん戦闘力が下がるらしいんだよね。リオあたりがよくバカにしてくるけど、失礼な話よね。これがわたしの本来の能力なのよ。もう一人の方のアメリは言わばスーパーアメリなんだからそっちの方が異常なのよ。でもそんな事も言ってられないの。わたしが強くなれば、スーパーアメリも同時に強くなれるから。強さを極めたスーパーアメリの方はこれ以上強くなるのは大変だけど、弱いわたしの方は簡単に強くなれるらしいの。伸びしろがいっぱいあるって事ね。だから最近はスーパーアメリの方が引っ込んでわたしがダンジョンとか来てるんだ。スーパーアメリの方を式神にすれば経験値がダブルで入ってもっと強くなれるんじゃないかって?それはそうなんだけど。式神を出すとそっちの方にごっそりと魔力を持って行かれて本体であるわたしは弱体化するのよ。つまりは弱くなるの。弱くなるのも嫌だし、式神のアメリは疲れ知らずだけど、本体のわたしは倍疲れるの。疲れるのも嫌だから、式神はいざと言う時の切り札に取っておこうと思ってるの。だいたい初心者向けのダンジョンである東のダンジョンで式神のアメリまで出しちゃったらオーバーパワーすぎるでしょ。今でさえ戦闘力オーバーでホノカが自分とチビ太だけで戦うって言いだすくらいなんだもん。


 わたしの事は置いといてホノカの事なんだけど、美少女戦隊の一番新参者で実力も一番ないんだけど、そこはサオリと同じ異世界転移者ね。ポテンシャルが凄いの。アメリでさえ初心者の時に手こずったホーンラビットをチビ太と二人でやると言いだしても無謀とは思えないの。彼女なら何とかするって思えるの。それでわたし達は高みの見物を決めこんでいたんだけど、さすがにホーンラビット4匹は無理だと思って声を掛けたんだ。そしたら大丈夫だって。クロエにごちゃごちゃ言われたからそれに対する意地もあるかと思うけど、勝算なしでは言ってないと思ったから助太刀はしないでおくわ。いざと言う時はわたしが魔法で仕留めるつもりだから大丈夫よ。さあ、お手並み拝見ってところね。


 どうするのかと思っていたらチビ太を下がらしたわ。自ら4匹のホーンラビットの中に斬り込んで行くつもりかしら。ホノカよりもチビ太のほうがまだ戦闘力が上だから、チビ太を先に斬りこませたほうが安全だと思うけど。


 そう考えてるうちになんか無防備に歩き出したけど、これって危ないんじゃないの。わたしはあわてて呪文を唱え始めた。


 案の定4匹のホーンラビットが一斉にホノカに飛びかか・・・・。あれ?飛びかからない。なんか固まってる。


「おりゃー!」


 気合を入れて敵を攻撃したのはホノカ一人だった。一匹目を上から真っ二つにして返す剣で今度は首をはねた。これだけ派手にホノカが暴れまわったのに残りの二匹は動かずにその場で固まっていた。この二匹はチビ太の剣の錆となった。


 どういう事?なんでホーンラビット達は大人しく斬られたの?はっ。そう言う事か。


「どうして?」


 この事はクロエも思ったらしかった。


 わたしがホノカに伝えるとホノカはしてやったりとどや顔で答えた。


「これがわたしの気合剣です。気で相手の動きを止めました。」


「え!なに!すごい!」


 クロエが参ったと言わんばかりに絶賛した。もう少しだけいい気にさせてやりたかったけど、また調子に乗りそうだから真実を突き留めてやるか。


「何言ってんの。スキルを使ったんでしょ。忘れてたけどあんた誘惑のスキル持ってたよね。」


「バレたか。さすがは2号ね。どうやらわたしの誘惑テンプテーションは自分よりレベルの低い相手になら使えるらしいのよ。でもわたしもいろいろと経験しているからレベルアップしていてもしかしてホーンラビットに使えるんじゃないかと思ってたら案の定使えたわ。誘惑テンプテーションを使ってホーンラビットの動きを止めたのよ。」


 わたしはあわててホノカとチビ太を鑑定したら二人ともいつの間にかレベル2からレベル5にレベルアップしていた。レベル3のホーンラビットを誘惑テンプテーションするのは簡単になったと言う事か。


「でも言葉の通じない魔物に誘惑テンプテーションは効くの?」


「あ、それなら大丈夫よ。魔物にこっちを見させればいいの。わたしの目を見させることができたら一発よ。」


 なにそれ凄すぎるじゃないの。忘れがちだけどホノカもサオリと同じくチート野郎だったわ。


「じゃあ誘惑テンプテーションを使えば魔物どうしで戦わせる事もできるんじゃないの?」


「うん。できると思うけど、そうしたらわたしとチビ太の能力が上がらないじゃない。だから今は動きを止めるだけにしているのよ。自分よりレベルの低い敵といつも戦えるわけじゃないからね。剣の腕も磨いとかないといけないと思ってさ。」


 なんか心配してて損した。こいつホノカは立派なチート野郎なんだわ。ホーンラビットごときは何匹いても敵じゃないって事ね。


「もう勝手にさせたら?」


 わたしが王国語でクロエに伝えたらクロエもあきれていた。


「それでホーンラビットは召喚獣にしないの?」


「うーん。うさぎさんはかわいいけどね。ちょっとわたしの趣味じゃないんだ。」


「あんたの趣味って何よ?」


「わたしの相棒としたいのはパワーがあってなおかつ剣を使える魔物ね。」


「それってオークやオーガじゃないの。」


「オークは豚男でオーガは大鬼ね。そんなのもやっぱりいるんだ。良し決まり二人目の召喚獣はオークかオーガで決定よ。」


「でもそうしたら小さいテントほどの大きさしかない召喚獣の待機場からあふれちゃうんじゃないの?」


「そうか。じゃあしばらくはチビ太だけでいいや。」


 *


 誘惑テンプテーションの使えるホノカとチビ太のコンビはこの階層では万が一の事が起こらない限りは安全だと判断したわたしはしばらく二人と別行動する事にした。だって魔法の腕を磨きたいわたしとクロエとジュンははっきり言ってホノカとチビ太が邪魔だからね。二人がいないと同士討ちを恐れずに遠慮せずに魔法を放てるからね。


 クロエとジュンの魔力もそろそろ切れる頃なのでホノカを呼び出したの。この世界でも携帯電話とまで行かないでも近くなら会話ができる魔道具があるのよ。通話可能距離はダンジョン内に限られているから携帯電話と言うよりは親子電話みたいなもんかしら。その便利な魔道具でさっきから呼び出してるけど、ホノカが出ないのよね。考えられる事は魔道具を無視しているか、魔道具を壊したか、魔道具の魔伝波が届かない所にいるかなんだよね。無視や壊したりはしないと思うから魔道具に出られない状況か、魔伝波の届かない所にいるって事だよね。いずれにしてもホノカのピンチじゃないの。誘惑テンプテーションのチート能力持ちだから強いかと思って油断してしまったけど、ホノカってたったレベル5の超初心者だと言う事を失念してたわ。これは完全にわたしの判断ミスね。もし死なせでもしたらどうしよう。償っても償いきれないわ。わたしの中のもう一人のアメリには申し訳ないけれど、その時はわたしの命をホノカの死の代償としてささげるわ。


『早まるな!バカ2号!』


 頭の中で突然大声が響き渡った。


『まだ死んだと決まったわけじゃないだろ。』


『あ、1号。』


『1号じゃねえよ。まずは手分けして探そう。オレを出してくれ。』


『わかった。』


 わたしはアイテムボックスから式紙を出すと念を込めた。


 式紙はあっという間にわたしと寸分変わらぬ姿になった。


「よし!二手に別れて探すぞ!オレとクロエ、2号とジュンで別れよう。オレと2号なら魔道具なしでも会話ができるから、クロエとジュンが魔道具を持ってくれ。外に出られたら魔伝波も届かなくなるけど、勝手に外には出ないだろう。中を探すぞ!」


 1号がサクサクとみんなを仕切って行った。悔しいけどこういう時の1号は頼りになって頼もしい。


 ホーンラビットが行く手を遮るために中々進まなかったが全部の場所を見て回り終えた。しかしホノカは発見できなかった。


『まさか。』


 1号が独り言を念話で言ったが、この階層でも魔伝波の届かない所が一か所だけあった。これだけ探してもいないと言う事はそこにいるに違いなかった。




 *************************




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