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第330話 釣りバトル決着

 



「もう私の勝ちは決まったようなもんだけど、もう一匹釣ってダメ押ししてやるわ。」


「なんの。今度はこっちが釣る番よ。」


 釣りって魚が釣れないと基本何もする事がないから暇なんだよね。暇に飽かしてリオったらわたしをどんどん挑発してくるわね。リオって最初大人しいのかと思ってたらまったく逆の性格なんだよね。今は大人しそうにしているアーリンだってそんな事はなさそうだし。だいたいあのアメリだってわたしには大人しそうに見えたんだもの。最初は。王国人は顔で判断したら駄目なのよ。と言うか、わたしの判断が間違ってるみたい。わたしに大人しそうに見える王国人って逆に活発な性格みたい。じゃあどんな人が大人しいかと言うと、大人しい人って見た事ないから分からないわ(笑)。もしかして、魔物や盗賊が当たり前のように闊歩しているこの世界じゃ誰もが大人しくしてはいられないのかもしれないわ。


 今度はこっちが釣る番だと答えたけど、いくら異世界でもあんな大きな魚が簡単にポンポンと釣れるはずもない。リオの釣った魚を最後にわたしもリオもアタリすら来なかった。このままじゃ負けて借金がさらにかさんでしまうと内心焦っていたら、やっぱりわたしって持ってるのよね。終了間際にガツンと大きなアタリが来たわ。


「アメリ!リオ!来たわよ!」


 二人にそう宣言するとわたしは大きく合わせた。針ががっちりとかかったみたい。竿が大きくひん曲がった。大きなルアーに食いつくのは当たり前だけど大きな魚だ。さっき釣れた魚とはけた違いの引きがわたしの竿を襲った。


「んぎー!で、デカいよ。アメリ!」


「そうみたいね。ホノカ、慎重に。」


 海に引きずりこまれそうになる引きに必死に耐えながらわたしが言うと、アメリも竿の様子なんかから大物と判断したみたいだった。


「アメリ!3時間経ったんだけど?」


 サオリが時計を見ながら言った。


「野暮はなしだぜ。ホノカが釣り上げるまで時間延長に決まってるだろ。」


「ま、まあ仕方ないわね。くそ。」


 サオリの時間切れの主張は即刻アメリに否定された。サオリの言いたい事もわかるけど、わたしが釣ったのは時間内だったから当然有効よね。


「んぎー!ア、アメリ!」


 この強烈な引きは常人で非力なわたしには耐えられそうにもなかった。だって女の子だもん。


「よし!オレが後ろから竿を持つからホノカはリールを巻いて!」


「おう!」


 流石はA級冒険者である。わたし一人なら海に引きずり込まれても仕方ないような強烈な魚の引きをアメリは難なく耐えて見せた。


「じゃあ竿をしゃくるぞ!」


 その上に魚を寄せてまでくれた。アメリが竿をしゃくってはわたしがその分の糸を巻いた。しかしリールから出て行く分もあり中々魚は寄ってくれなかった。


「アメリ。リオみたいに魔法で魚を痺れさせないの?」


 わたしが焦れて聞くと、


「たしかに魔法を糸に流せば簡単だけど、そんな事をしたらホノカも感電しちゃうだろ。」


「だったらわたしが手を放すけど。」


「そうしたらホノカじゃなくてオレが釣り上げた事になっちゃうじゃないか。ホノカは手を離したらだめだよ。オレはあくまでお手伝いなんだ。ホノカが釣り上げないと意味ないだろ。」


「うん。そうだね。頑張るしかないか。」


 わたしはあらためて竿を持つ手に力を入れたけど、たしかにアメリの言う通りだよね。なんでもアメリに頼ってたらダメだよね。わたしが釣った魚なんだもん、わたしが最後まで竿を持ってないと。 


 七転び八起きじゃないけれど、糸が7メートル出たら8メートル巻くと言った感じで、何分ファイトしたか分からないけど、ついにその魚は海面に姿を現した。でかい。目測だけど、さっきわたしとリオがそれぞれ釣り上げた魚の倍近くはあった。


「よっしゃー!ホノカ!よくやった!これでオレ達の勝利だぜ!」


 勝利を確信したアメリが叫んだけど、まだ最後の獲りこみが残ってるわ。


「ア、アメリ!まだ釣り上げてないよ!」


「任せなさい!ここからはオレの仕事だぜ!ん!やばい!魔物だ!」


 え!魔物って、海にもいるの?わたしには何も見えないんだけど。


「どこに魔物がいるのよ?」


 それはA級冒険者のサオリも一緒だったみたいでアメリに聞いた。


「水中にマッドシャーク!く、来る!」


 とんでもない事にわたしの釣った魚のさらに倍はあろうかと言う大きな魚の魔物がわたしの魚に食いついた。


「バチーン!」


 魔物が釣れる事まで想定してない糸は簡単に切られて、わたしとアメリはしりもちをついてしまった。


「サンダー!」


 サオリがあわてて魔法を撃ったが一足遅く、わたしの魚を飲み込んだ魔物はそのまま海の底へと消えて行った。


 みんなしばらくあっけにとられて海面を見つめていた。


「あ、アメリ、魔物はまだいるの?」


 いち早く我に返ったサオリがアメリに聞いたけど、そうだよね。呆けてる場合じゃないよね。魔物の襲来に備えなきゃ。


「大丈夫。海の底に消えて行ったよ。もう安全。」


 海を見つめながらアメリが言ったけど、アメリは魔物を探知する能力を持ってるみたいだった。


「ところで勝負の結果だけど。どうなるの?」


 リオが申し訳なさそうに聞いてきた。


「リオの勝ちだよ。悔しいけど。」


「え!だってわたしの魚は明らかにリオの釣った魚の倍はあったじゃない!」


 アメリがリオの勝ちだとか血迷った事を言うのでわたしは猛抗議をした。


「昔から言うじゃない釣り逃がした魚は大きいって。残念だけど甲板の上に上げないと釣った事にはならんよ。」


「え!でも魔物が食いついたんだから仕方ないじゃないの。」


「うん。運が悪かったよね。運も実力の内だよ。」


「そ、そんな。わたしって強運の持ち主じゃなかったの。」


「ごちゃごちゃ言ってないでさっさと負けを認めなさいよ。」


 わたしがあきらめきれずにいたらリオが降伏を迫って来た。うーん。悔しいけど負けを認めるしかないか。


「はい。わたしの負けです。」


 わたしはリオに頭を下げた。


「よし!勝者リオ!おめでとう!ホノカの分はオレが立て替えるからみんなで分けてくれ!」


「「「やったー!」」」


 気のせいか賭けに負けたはずのアメリはなぜかうれしそうだった。それよりもわたしまた借金が増えたわ。まあでもプラスからマイナスに転じたらショックだけど、元々マイナスだからね。どうって事ないわ。いくらでも借金してやるわ。でも体で払わせるとかアメリが言ってたけど、強制労働とかさせないでしょうね。地下のタコ部屋とかに売られるのは無しよ。異世界でも自己破産とかあるのかしら。



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