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第33話 南のダンジョン

 翌朝、早朝、いつものようにリオの部屋でオレ達は朝食をとっていた。早めに食事を食べ終えたオレはお茶を飲みながらみんなに言った。


「お肉狩も飽きたし、そろそろ次のダンジョンに行かない?」


「アメリは飽きたって言うけどさ、東のダンジョンの食肉集めは良いお金になったじゃない。それをやめてまで新しいダンジョンに行く意味はあるの?」


 東のダンジョンはウサギ、イノシシ、ブタ等の魔物が出るダンジョンで、食肉集めのクエストを受けているオレ達は、おかげさまで大金を稼ぐ事ができた。東のダンジョンを専門にしてお金を稼いでいるパーティもたくさんいた。お金をたくさん稼いで自分の商会を作りたいセナは、せっかく儲かる東のダンジョンから移動するのに難色を示した。


「セナは収入が落ちるのを心配してるのよね?」


 オレはセナに聞いた。


「うん。わたしが冒険者をしているのはお金稼ぎのためだからね。安定して大金が入る東のダンジョンはしばらく動きたくないわ。」


 自己主張をあまりしないセナが珍しく意見を言った。


「セナの守銭奴。わたしは新しいダンジョンに行ってみたいわ。」


 リオが言った。


「守銭奴で悪い?リオだってアメリのおかげで良い暮らしができるようになったけど、乞食冒険者だったじゃないの。」


「乞食ってなによ。乞食って。汚くお金を漁るくらいなら、わたしは貧しくても清らかな生活をしたいわ。守銭奴は死ね。」


「なにー。乞食こそ飢え死にしろ。」


 なんか、二人が朝っぱらから口ケンカを始めたんですけど、めんどくせえ奴ら。


「まあまあ。二人ともケンカはやめて。今度行こうとしてるダンジョンは南のダンジョンで、肉は取れないけど宝石が取れるわよ。」


 オレは仲裁をしながら言った。


「「宝石?」」


 リオとセナが同時に声をあげた。


「うん。南のダンジョンの魔物は魔石の他にも宝石を高確率でドロップするって、冒険者ギルドでもらった案内書に書いてあるわよ。」


 オレは二人に案内書を見せた。


「アメリー。なんで先にそれを言わないかな。宝石はお金になるんでしょ?」


 セナが案内書を見ながら聞いてきた。


「もちろん、肉集めより良いお金になるわよ。クエストも宝石集めの依頼を受けてきたわよ。」


 オレが答えると。


「さすがアメリ、抜け目がない。行こう。行こう。南のダンジョンにレッツゴー。」


 セナがオレに飛びついてきた。


「さっきは行かないと言ってたくせに、この守銭奴め。」


 リオが小さくぼそっとつぶやいた。


「清貧でご立派なリオ様は今月のお給料はもちろん要らないよね?」


 パーティ内で会計担当のセナが聞いた。オレ達はダンジョンで稼いだお金がオレ達子供にとって巨額すぎる事から、一度パーティ全体のお金としてストックしてその中から適量を給料として個人に支払っていた。リオの部屋の家賃とみんなの食費は必要経費としてパーティで払っていたので、給料は無くても生活には困らないが、もちろんリオが納得するわけがなかった。


「ちょ、ちょと、何を言ってんのよ。わたしが命がけで稼いだお給料を搾取しようと言うの。賃金未払だとストをするわよ。」


 あわてて、抗議した。


「賃金未払とかストとか、脳筋のくせにどうしてそんな難しい言葉を知ってんのよ。ストされると、アメリが困るから、払ってやってもいいけど、どうしようかな。」


 セナが笑って言った。


「オレ達のパーティはブラック企業だから、賃金未払もあるかもよ(笑)。」


 オレも乗っかって言った。


「もう、アメリまで何言ってんのよ。守銭奴って言ってごめんなさい。だから、給料払ってください。」


 リオがセナに頭を下げた。


「わかればいいのよ。わたしも乞食なんて言ってごめんなさい。」


 セナがリオと握手した。


 そういうわけで、どういうわけや。オレ達は南のダンジョンに向かった。オレの提案で途中、武器屋に寄った。金棒を4本買ってオレのアイテムボックスにしまった。


 南のダンジョンは町の南の外れにあった。ダンジョンの入り口から町の城壁の外の鉱山とつながっているらしかった。鉱山のダンジョンの魔物だから、宝石をドロップするわけか。


 例によって、一人当たり銀貨一枚の入場料を門番の兵士に払い、ダンジョンの扉を開けてもらい、中に入った。ダンジョンの中は東のダンジョンの地下一階と同じく洞窟だった。洞窟だが光ゴケのようなものが生えていて、うっすらと明るく照明は要らなかった。


 オレは武器屋で仕入れた金棒をアイテムボックスから出すとみんなに配り、みんなの武器と交換した。


「わたしは剣士なんだけど、こんな鉄の棒が剣のかわりになるの?」


 リオが金棒をぶんぶん振り回しながら聞いてきた。


「うん。ここの魔物はね、岩やら鉄やら固いのが多いからリオの自慢のエクスカリパーが刃こぼれしちゃってもったいないでしょ。だから、こいつで攻撃して。」


 オレは金棒を振り下ろしてみせた。


「よし。今日はこいつがわたしの愛刀ね。魔物たちよ。粉々に砕いてやるから。待ってなさい。」


 リオがやる気満々で金棒を振り下ろした。


「脳筋の人はお気楽でいいわね。レベルの高いやつはそんなものが通用しないほど固いんじゃないの?」


 セナが聞いてきた。お気楽なリオと違ってセナはなかなか鋭いな。


「うん。そうだと思う。だから、今日は魔法全開で行きましょう。」


 オレは答えた。


「でも、大丈夫?魔力使いきったら学校の授業に差し支えるんじゃないの?」


 リオが心配して聞いてきた。


「大丈夫。これを買ってきたから。」


 オレはアイテムボックスから魔力回復のポーションの瓶を何本か取り出した。


「あー。そんな高い物を何本も。わたしに相談もしないで。」


 経理担当のセナ(守銭奴)が文句を言ったがかまわずに説明した。


「セナも言ってるけど魔力回復のポーションは高価だからなるべく使わないでおこうと思うの。それでMPに余裕のあるオレとサオリで魔法を使うから、二人は金棒で魔物を削って。」


「まかしといて、わたしが粉々に砕いてあげるから。」


「剣の苦手な私でも大丈夫かな?」


 脳筋のリオは頼もしい事を言うが、魔法職のセナは自信なさげだった。


「ここの魔物は固い分動きが遅いから大丈夫だよ。危ない時はオレが全力でフォローするし。」


 オレはセナを安心させた。オレ達4人の中で一番経験の少ないセナはレベルも低く魔力も攻撃力も低く、はっきり言って足手まといであったので、自然とオレがフォローしていた。


 しばらく、歩くと丸い岩の化け物が二匹現れた。


「アメリ。あれって?」


 リオが尋ねた。


「うん。ロックボールレベル4ね。まだ浅い階層だし、魔法を使うまでもないと思うのよ。だから、みんなでタコ殴りにしよう。セナはオレの横にいてね。いざというときにはオレが守るから。それじゃあ、突撃!」


「「「おう。」」」


 まず、リオとサオリが飛び出してロックボールに一撃をかました。リオもサオリも見事に一発でロックボールを真っ二つに砕いた。


「なんだ、それほど固くないじゃん。楽勝。楽勝。」


 リオが得意げに言った。


「まあ、浅い階層の魔物だしね。でも、油断禁物よ。このまま、リオとサオリで撃破していこう。セナは無理して攻撃に参加しなくても良いわよ。同じパーティなら経験値は等しく分配されて入るみたいだし。」


「まあ、働いてない人にもお給料も等しく分配されるみたいだしね。」


「リオ!」


 オレはリオを睨みつけた。


「アメリ。わたしこそ、給料を返納しようかしら。」


 セナが申し訳なさそうに言った。


「オレ達美少女戦隊には上下関係はないわ。だから、給料もみんな同じよ。でも、失言の多すぎるリオは下げても良いけどね。」


「アメリ。ごめん。許して。」


 リオが半泣きで謝った。


「リオ。謝る相手が違うでしょ。」


 オレはリオに、セナに謝らせた。


「セナ。ごめんなさい。」


 リオはセナに謝った。


「うん。いいのよ。本当の事だから。早く給料泥棒って言われないようになれるように頑張るよ。」


 セナがしょんぼりと答えた。


「セナはレベルが低いからしょうがないよ。心配しなくてもじきにレベルが上がるよ。そしたら、いっぱい働いてもらうから気にしないで。」



 オレはセナにフォローを入れた。


 ロックボールは動きも遅く、防御力も低い事から、セナに経験と自信をつけさせるために、途中からオレはセナに攻撃させた。リオやサオリのように一撃で撃破はできなかったが、攻撃を受ける事もなくロックボールを撃破できるようになった。


「やったよ。アメリ。足手まといのわたしでも倒せたよ。」


 セナは大喜びだった。


 たいしたピンチに陥ることもなくボス部屋に来れた。ボスはキングロックボールLV10でお供にロックボールを二匹連れていた。


「作戦はどうする?」


 リオが聞いてきた。


「そうね。左右のロックボールはリオとセナでやっつけて。オレは真ん中のボスをやっつけるから。」


 オレは答えた。


「わたしはどうしたらいい?」


 セナが聞いてきた。


「セナはオレの後ろでフォローね。」


 セナはうなずいた。


「よし。行くぞ!」


「「「おう!」」」


 オレ達はボスに向って走り出した。




 三人同時に金棒での攻撃を繰り出した。しかし、誰も一撃で撃破することができなかった。それどころか動きの遅かったはずのロックボール達が凄いスピードで襲ってきた。動きの遅いロックボールも転がれば早く攻撃できるというわけだった。右に避けようとしたオレは左に避けようとしたリオとぶつかってしまった。それで体の小さいオレはしりもちをついてしまった。やばい、と思ったとき。


「ファイアーボール。そして、突きー!」


 セナの見事なファイアー突きがボスのキングロックボールにカウンターで決まった。キングロックボールは一撃で消し飛んだ。左右のロックボールもリオとサオリが止めを刺した。


「アメリ。大丈夫?」


 リオがオレを起こしてくれた。


「まあ、大丈夫だけど。リオはボーナス査定減点1ね。オレが左にいるんだから右に避けないと。かわりにセナはボーナス査定プラス10ポイントよ。よくやったわ。」


「えー。そんなー。ところでボーナスって何?」


 リオがうなだれて聞いてきた。


「ボーナスって言うのは働きに応じてもらえる一時金の事よ。給料の三か月分を考えているんだけど。」


 オレが答えると。


「三か月分ももらえるの?アメリも助けれたし、今日は良いことづくめだわ。」


 セナがニコニコして言った。


「三か月じゃないよ。セナはプラス査定だからもっとよ。マイナス査定のリオは減額だけど。」


 オレが言うと。


「そんなー。わたし、こんなに頑張ってるのに。」


 リオが涙目で訴えた。


「うそ。うそ。冗談よ。でも、ボーナスは冗談でなくて本気で考えてるよ。どう?経理担当のセナさん。」


 オレはセナに聞いた。


「もちろん、大賛成よ。」


 セナはますます上機嫌だった。リオもちゃんともらえると聞いて機嫌を直した。乞食と守銭奴はお金で操ればいい事を、オレは学んだ。


 砕け散っていたキングロックボール達が光の粒子になって消えると後には大きな魔石とキラキラ輝く石があらわれた。オレが拾うとリオとセナのみならず、サオリまで寄ってきた。


「きれーい。」「高そう。」「欲しい。」


 それぞれがうっとりして感想を言った。どうして女ってこうも光物に弱いのかね。


 オレ達はサオリのワープで冒険者ギルドに行って、急いで宝石を鑑定してもらった。









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 読んでくださってありがとうございます。よろしかったら、ポイントを下さい。神様。

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