第324話 謝れ!
食事の途中だったがわたし達はお店を後にした。だってあれだけの騒ぎを起こしたらさすがにお店には戻りずらいよね。ちなみにわたしが誘惑した男どもは黙ってたら付いてきそうだったので誘惑を解除した。解除の仕方は解除と声に出すだけなので簡単だった。誘惑を解かれた男どもは何事もなかったかのようにお店や街に戻って行った。
問題は女どもだ。わたしが大ピンチに陥っているのに助けもしないでニヤニヤ笑いやがって。わたしは人気の無い裏通りに入ると全員を正座させた。もちろん誘惑は解いていなかった。
「ちょっと!どういうつもりなのよ!特にアメリ!」
「ごめんなさい。」
わたしに名指しされたアメリは頭をこすりつけて謝った。え?これって土下座じゃない?
「ちょっと。アメリ。いや。その声は2号ね。土下座するくらい反省しているなら許してやらなくもないけど。どうして相手の男達をけしかけたのよ?」
「はい。わたしの心の中の悪魔の自分がそうした方が面白いとか言う物ですから。」
「そりゃあ、あんた達は面白いだろうさ。でもこっちは死ぬような思いをしたんだから。わかってんのサオリ?」
サオリにふった。
「ごめんなさい。アメリの命令で逆らえなかったの。」
サオリも土下座して謝った。うーん。これじゃあわたしが偉そうじゃないの。
「ちょっと二人とも顔を上げなさいよ。」
わたしはとりあえず二人に土下座を止めさせた。
「命令という割には嬉しそうだったじゃない。リオにアーリン。」
これはサオリに通訳させてふった。アメリだと正確に伝えてくれるか怪しいからね。
「「ゴメンナサイ。ユルシテ。」」
なんと王国人の二人まで土下座をして謝ったしかもたどたどしい日本語で。
「ちょっとサオリ。止めさせて。お願い。」
わたしはサオリに通訳させて二人に土下座を止めさせた。それにしてもこの二人は土下座もするし結構な日本通じゃない?もしかして言葉も分かっていたのに分かってないふりしてた?
「うーん。わたしも鬼じゃないから許してあげなくもないわよ。ただし誠意を見せてもらわないとね。」
「誠意?」
「そうね。2号。いやアメリ。あんた、さっきわたしを裸にさせようとしたわよね。あんな大勢の前で。あんたが裸になりなさいよ。」
「それで許してくれるの?ならお安い御用で。」
そう言って2号ならぬアメリが服を脱ぎ始めた。あっという間に一糸まとわぬすっぽんぽんになった。
「じゃあその恰好で表通りを走ってきて。」
「だめ!」
サオリとリオがアメリを取り押さえた。
「放せ!」
アメリが暴れるがサオリとリオが放さなかった。
「どうやら誘惑の効果が切れてきたようね。テンプテーション!」
わたしはサオリとリオに誘惑を掛け直した。しかし効いていないみたいだった
「アメリ。もう良いでしょ?ネタをばらしても。」
サオリが変な事を言い出した。
「え?ネタ?ネタってなによ?」
わたしが混乱して問いかけると。
「うーん。もう良いか。結論から言うとどうやらオレ達に誘惑は効かないなんだよ。」
「え?効かない?」
「そ。効かないの。同性だからかレベル差があり過ぎるからか検討してみないと分からないけど効かないんだ。」
「え?でもサオリは真っすぐにアメリを襲いに行ったわ。」
「あー。あれね。元々サオリは機会さえあればオレを襲おうといつも狙っているから、それに乗じたんだろうね。」
「じゃあ、リオとアーリンの二人の王国人は?」
「あーこれは簡単。ホノカの分からない王国語で命じたんだよ。」
「じゃあみんなかかったふりをしてたのね。」
「そう言う事。」
わたしは一気に顔が熱くなるのを感じた。恥ずかしい。いい気になって変な事を言わないで良かった。
「でも恐いお兄さんをけしかけたり、それを助けもしないでニヤニヤ見てるなんて酷すぎるじゃない?」
恥ずかしさをごまかすためにみんなを非難した。
「あー。それに関してはマジで謝るよ。だから誠意を見せるために裸で走ろうとしてたのに。」
「だめよ。そんなことされたらあんただけじゃなくて仲間のわたし達までこの町にいられないじゃないの。だから絶対にだめよ。アメリ。」
サオリが会話に割り込んできた。それにしても素面でもストリーキングしようだなんてこのアメリと言う女はどういう精神構造をしているんだ。
「ちょっとだけ言い訳させてもらえたら言うけど。ホノカの能力はホノカが追いつめられないと発現しないからあのお店の二人を利用させてもらったんだ。」
「どうしてそんな事が分かるの?」
「ああ、オレは鑑定持ちだからね。」
「じゃあみんながわたしを助けもしないでニヤついていたのは?」
「そんなのアメリに命令されたからに決まってるでしょ。わたしが一番大事にしているものは家族よ。仲間よ。」
サオリが答えた。
「サオリ・・・・・」
わたしはなぜか涙が止まらなかった。
「ああ。オレがみんな悪いんだよ。だから裸で走って誠意を見せるよ。」
「それだけはやめて!」
わたしは必死でアメリにタックルした。
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