第319話 異世界転移者集結
私はアーリン。美少女戦隊一の魔法の使い手にして一番のおしとやか美少女よ。
男女の気まぐれで始まった旅だけど、魔物の大群に襲われたりして初っ端から波乱万丈だったわ。そしてついには盗賊軍団の襲撃場面にまで遭遇してしまったわ。盗賊軍団と言っても私達の実力からしたら屁でもなかったわ。一昨日きやがれって所ね。あらやだ。私ったら下品な言い方だったわ。ごめんなさい。とにかく楽勝で取り押さえたの。でも問題は襲っていた盗賊軍団じゃなくて襲われていたキャラバンの方だったの。キャラバンの運んでいた物がね。なんと奴隷を運んでいたのよ。奴隷を売買して商いを行っている商人の存在は私だって知っているけど、奴隷制度そのものには私は反対だな。人が人を家畜のように扱うなんてありえない。それなのに私達のリーダーの男女ったら、あろうことか盗賊退治の報酬に奴隷をもらおうとしていたのよ。奴隷を使うようになったら美少女戦隊もお終いね。そうなったら私は美少女戦隊を抜けるわ。そう考えているのは黒髪も脳筋も同じだったみたいで男女を止めようとした。
でも男女は聞く耳を持っていなかったわ。強引に商談を進めたの。
しかしその奴隷の顔を見たら男女が奴隷にこだわったわけが分かったわ。なんと黒髪と同じ顔だったのよ。いや正確には同じ系統の顔だったのよ。黒髪と同じ平たい顔だったの。
手のひらを反すようだけど、さすがは男女ね。馬車の中身が奴隷だと見抜き、しかもその中に黒髪の同胞がいる事まで見破っていたのよ。黒髪と言えば異世界転移者よね。奴隷もやっぱり異世界転移者だったみたい。これでこのパーティ(美少女戦隊)は男女、黒髪、骨男、奴隷の4人も異世界転移者をそろえた事になるわ。いくらなんでも多すぎない。私が思うに異世界転移者は異世界転移者を呼ぶみたいね。それとも神の思し召しなのかしら。いずれにせよ。我が美少女戦隊の戦力アップは間違いないわ。だって異世界転移者は必ずと行って良いほど特別なスキルを持っているからね。男女のアイテムボックスとか黒髪のワープとかね。あ、骨は死者が蘇った魔物だからそう言うのは持ってないみたいだけど。
奴隷が参入したおかげで定員オーバーになる所だったけど、男女の機転で切り抜けたわ。まあ、おかげで男女が引っ込んで2号一人になっちゃったんだけどね。奴隷が男女のふりをして馬車に入ったから代わりに私が馬車の外の助手席に座る事になったんだ。
私も馬車の中で奴隷の話を聞きたかったけど仕方ないよね。黒髪や2号の方が私よりずっと奴隷とお話したいはずだもんね。
それでしばらくは御者のおっさんに盗賊討伐の事の顛末を話していたんだけど、さすがにそれだけじゃいつか話題も尽きるよね。もちろん御者も気を使っていろいろと話しかけてくれたけど、おっさんと少女じゃ共通の話題ってあまりないからいつか沈黙してしまったわ。沈黙すると退屈なんだよね。私の任務としては本当はずっと外を見張っていないといけないんだけど、私には男女みたいな特別な能力(鑑定)もないし、脳筋みたいな武芸の達人でもないから、その辺は適当でも許されているんだよね。一生懸命に見張ってたたら退屈になるはずないけどね。適当にやってもいいから退屈なの。退屈だと眠っちゃうよね。眠ったらいけないと思うと余計に眠くなるんだもの。それに馬車の振動って眠気を誘うのよ。いつしかうとうとと夢の世界に巻き込まれてしまったわ。
がくんと前に放り出されるような衝撃で私は目を覚まされたわ。どうやらレンドルが急ブレーキを掛けたみたいだったわ。
「どうしたんですか?」
「道が木でふさがれています!」
御者の言うように道が斬り倒された木でふさがっていた。馬車はすんでのところで衝突を回避できたが、これって敵が馬車を襲ういつものパターンよね。
「敵襲!」
私が叫ぶよりも早く馬車の中から脳筋達が飛び出してきたわ。
「みんな気をつけて!ゴブリンよ!」
2号が素早く索敵してみんなに注意を促した。
ゴブリン自体は雑魚敵だけど、この敵は馬車を止める頭がある。おそらくは群れをまとめるリーダーがいるのだろう。そうなると厄介だ。いくら私らでもバラバラに戦ったら無事では済まないだろう。
「来るよ!」
2号に言われるまでもない。どこに隠れていたのか、数え切れないほどの大群のゴブリン達が四方八方から襲って来た。
「レンドルさんとホノカは馬車の中に避難して!みんなは呪文を唱えながら馬車を守って!」
「「「「おう!」」」」
2号の指示で私達は馬車を取り囲むように陣形を作った。思えばあの頼りなかった2号もごく短期間でずいぶんたくましくなったもんだ。さすがは私のリスペクトする男女の片割れだわ。
「ファイアー!」
そんなに固まっていたら魔法の餌食よ。固まっているゴブリンの群れ目掛けて私は魔法を撃った。
魔法の直撃を受けたゴブリンが5、6匹倒れたが、当たらなかったゴブリンが怯まずにどんどん向って来た。
これは裕著に魔法だけを唱えている暇はないわね。私は呪文を唱えつつも剣を抜いた。本当なら剣を抜いた勢いで群れの中に斬りこみたいんだけど、馬車を守らないといけないからこの場は動けなかった。
向って来るゴブリンを斬り伏せ、取り囲むゴブリンは魔法で蹴散らしを続けていたらゴブリンの攻撃が止んできた。さすがのゴブリンどもも敵わないと思ってくれたんだろう。良かった。いくら弱いゴブリンでも際限なく襲ってきたら敵わないもんね。
「チャンスよ!頭を潰すよ!アーリン!付いてきて!」
そう言って2号が空に飛びあがった。
「はい!」
言われて私も空に飛びあがった。空から見たらとんでもない数のゴブリンどもが馬車を取り囲んでいた。
「あの大きいのが敵の大将のゴブリンジェネラルよ!」
2号の指さす先にはなるほど一際大きいゴブリンがいた。
「あいつ目掛けて魔法を撃って、取り巻きを蹴散らして!」
「わかりました!サンダー!」
私は2号に答えると同時にあらかじめ呪文を唱えていた魔法を撃った。呪文を唱える時間が多くとれたから、脳筋の魔法とまでも行かないでも特別に威力のあるサンダーを撃てた。取り巻きは瞬殺できたが、さすがはゴブリンジェネラルだ。私の渾身の魔法を受けても立っていた。
「そして上段斬り!」
すかさず2号が上空から落ちる勢いのままに刀を振り下ろした。見事にゴブリンジェネラルは真っ二つになった。
頭(指揮者)を失った軍隊は烏合の集に成り下がる。逃げ惑うゴブリン達を私と2号は斬りまくった。
「もう良いだろう!アーリン!」
2号の声で我に戻った私が見渡すとゴブリンの大群は水が引くように逃げて行く所だった。
「追わなくて良いんですか?」
「まあ、良いんじゃないの。これ以上は無駄な殺生だよ。わたしは向って来る敵は倒すけど、追っかけてまで倒したくないな。」
倒したゴブリンジェネラルをアイテムボックスに回収しながら2号は答えた。まあたしかにゴブリンじゃお金にもならないしね。無駄な殺生はやめておきますか。
「おーい!みんな!けがはないね?」
馬車の側で休んでいた脳筋と黒髪に2号は声を掛けた。
「うん。私もサオリも馬車もみんな無事だよ。それよりも2号も腕を上げたじゃないの。」
珍しく脳筋が2号を褒めた。
「わたしだってね。いつまでもお荷物じゃないのよ。わたしだって頑張っているんだから。」
「じゃあ、もう1号はいらないね。」
「だから1号はわたしだって(笑)。」
2号と脳筋が談笑していると、戦闘が終わった事を察知した奴隷と御者が馬車から出てきた。
「もう大丈夫だよ。敵の親玉のゴブリンジェネラルをやっつけたからね。」
2号が二人に声を掛けた。もちろん奴隷には異世界語(日本語)で、である。
「今のスタンビードじゃないの。それをこんなにあっさりと鎮めるなんて。あんた達どんだけ強いの?」
奴隷は大興奮であった。
「まあ、弱いゴブリンなら何匹来ようが大丈夫よ。誰よりも美しく誰よりも強い。それがわたし達美少女戦隊の目指すところだから。」
2号がどや顔で答えた。
「じゃあ、わたしもそんなに強くなれるかな?」
「なれるよ。ていうかわたしが強くしてあげるから。まかせて。」
「あらー。アメリが眠っていると2号さんもずいぶん強気ね。」
脳筋がチャチを入れた。
「え!どういう意味?」
奴隷が聞いた。
「この偉そうな2号さんも、ずいぶんヘタレだったのよ。ちょっと前までは。それがここまで強くなれたんだからホノカちゃんもすぐに強くなれるよ。」
でも2号の場合は男女の別人格だから本来強いはずだからね。あんまり参考にならないと思うけど、ここは黙っておこう。
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