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第315話 VSワーウルフ

 




 馬2頭で引く馬車はせいぜい50キロも出ないだろう。対してワーウルフは60キロは楽勝だろう。どんなに頑張っても馬車でワーウルフを振り切るのは無理だ。だったら馬車を止めて戦うのが得策かと言うとそうでもない。止まる事はワーウルフの群れに囲まれる事を意味する。ワーウルフは単独ならたいした事は無い雑魚魔物だが群れとなると話は別だ。二、三匹でも一斉に飛びかかられるといくらオレでも無事には済まないだろう。空に飛びあがって上空から攻撃する方法もあるが、今のオレの武空術の腕じゃ素早いワーウルフを追いきれない。それに他人のフレデリックにあまり能力を見せたくないしね。


 そう言うわけでオレは馬車をそのまま走らせてワーウルフに単独攻撃をさせる事にした。だがここで問題が一つ発生した。ワーウルフを迎撃するために屋根の上に登ったんだが、屋根が高すぎて刀も槍も地面まで届かないんだ。オレの作戦としては飛びかかって来る奴を一匹ずつ斬り払ってやるつもりだったんだが。こうなったら魔法だ。魔法でもスピードの遅いファイアーボール系では駄目だ。ウォターボールも遅いな。ストーンバレッジで石をぶつけてやっても良いが、ここはやっぱりサンダービーム一択だろう。オレは呪文を唱えるとワーウルフの来襲に備えた。


 まずは小手調べだ。


「サンダービーム!」


 ちょっと遠いとは思ったが群れのどれかに当たれば良いやと思い、先頭を走るワーウルフに向けて雷を撃った。


 バシッ!


 地面から砂煙が上がった。ちくしょう。はずれだ。揺れる馬車の上から撃つのはいくら魔法と言えど難しかった。しかも今のでこちらに飛び道具がある事を教えてしまった。群れが散開した。かたまっていたら魔法の餌食になる事を本能的に理解しているみたいだった。


 でも群れが散開したのはこちらにとっても好都合だ。一斉に襲われる危険性が減ったからだ。それにいくら散開しても結局足場の良い街道を走らないと馬車には追い付けない。街道を走って馬車に追いついた奴を一匹ずつ仕留めれば良いわけだ。


 案の定バカないや経験の少ないと思える若い奴が単独で追いついてきた。まだだ。馬車自体に攻撃されてもこちらは一向にかまわない。馬車を引く馬と馬車を操るフレデリックに攻撃さえされなかったら良いんだ。ついには馬車の車体部分つまりはオレの真下まで追いついてきた。


「サンダービーム!」


 これだけ引き付けたらいくらなんでも外しようもないぜ。キャンと短く悲鳴をあげてワーウルフが転げた。まずは一匹だ。これで引いてくれら良いんだが。


「ワオー!」



 まずいな。危惧した通りこいつらはリーダーウルフに率いられた統率の取れた群れだった。

 今の鳴き声で指示を出したみたいで今度は二列に隊列を組みやがった。しかも一番最初のオレのサンダービームで射程距離を測ったみたいで魔法の届かない距離でだ。しかし一列になろうが二列になろうが、馬車に追いつくには足場の良い道を走るしかない。隊列の先頭から撃ち殺してやるぜ。


「ワオーン!」


 今度の鳴き声で二列の隊列が同時にスピードを上げた。


「サンダービーム!」


 左から来る隊列の先頭をオレは撃ち殺した。しかしまずい。右の隊列に魔法を撃つ余裕がない。呪文が間に合わない。どうしようと思っていたら、


「サンダービーム!」


 馬車の中から突然魔法が撃たれた。


「2号!」


「誰が2号よ!人が気持ちよく寝てたら面白そうな事してるじゃないの!わたしも混ぜなさいよ!」


 どうやらオレの戦闘中の興奮が寝ている2号を刺激して起こしてしまったようだったが、これはありがたい。


「左側から来る奴はオレがやるから、右側から来る奴を頼む!」


「アメリ、あんた何ひとりで戦ってるのよ!私達も参戦するからね!」


「左側もわたしが受け持つからアメリは上から遠くを攻撃して!」


「リオ!サオリ!」


 リオとサオリが馬車の窓から顔を出して言った。



「あ!私もいますからね!」


「アーリン!」


 2号が窓を開けて魔法を撃てばそりゃみんな目を覚ますよね。これで美少女戦隊全員覚醒だ。


 こうなるとワーウルフごときは何匹いようと、どんな隊列で攻撃して来ようとオレ達の敵じゃないね。遠くにいる奴はオレが一匹ずつ削っていったし、オレの魔法を逃れて馬車に近づこうものならそれこそ魔法の一斉射撃を受けた。


「ワオーン!」


 たぶん逃げろとでも言ったんだろう生き残ったワーウルフどもは這う這うの体で逃げて行った。


「もう大丈夫ですよ!スピード緩めて!」


 屋根を伝って運転席に戻ったオレはフレデリックに声をかけた。


「おう!」


 戦闘で興奮していたフレデリックは馬車のスピードを徐々に緩めた。



 *



「いやあお前さん達は魔法使いだったんだな。俺はそのなりからてっきり剣士かと思っていたよ。」


 オレ達は道に馬車を止めて馬を休めながら、自分達も外に出て休んでいた。


「いや。剣士ですよ。」


 オレが答えると、


「うそをつけ。サンダービームって言うんだろ。雷の魔法を使ってたじゃないか。」


「はい。魔法も使える剣士です。全員。」


「え!剣士なのに魔法も使えるの?」


「はい。どちらかと言うと剣の方が得意ですね。」


「ええ!」


 フレデリックはびっくりしていたが無理はない。この世界でも魔法使いは貴重な存在であり、魔法使いはわざわざ剣の腕を磨いたりしない。しなくても十分に強いからだ。オレ達みたいな魔法剣士は非常に稀なんである。


「そしたら5人全員が魔法も使える剣士なのか?」


「はい。なんども言いますけどそうです。」


「そりゃ強いわけだわ。剣士が5人と魔法使いが5人いるようなもんじゃないか。」


「剣が得意な人間と魔法が得意な人間がそれぞれいますから実際はそんな単純な計算できませんけど。」


「いやあ凄いよ。10匹以上のワーウルフの群れに出くわしたら普通は全滅を覚悟しないといけないのに無傷であっという間に追い払ったもんな。それどころかコメリさんなんか一人で追い払おうとしたもんな。」


「え?一人で追い払おうとしたんですか?」


 フレデリックめ。褒めてくれるのは良いけど一言多いんだよ。おかげでサオリがくいついたじゃねえか。


「ちょっとコメリちゃん、いやアメリ。一人でってどういう事よ。詳しく話してもらおうじゃないの。」


「いや。みんなが気持ち良さそうに寝てたから。」


「寝てても普通は起こすよね。非常事態なんだから。」


「いや。あのワーウルフごときはオレ一人で十分かなと。」


「ふーん。でも2号が魔法を撃たなかったら危なかったんじゃないの?少なくとも馬かフレデリックさんのどちらかが襲われていたんじゃないの?」


 まずい。2号が攻撃した時からもうサオリ達は起きてたんだ。


「いや。あのそれは。」


「はい。自分の力を過信してわたし達に報告しなかったのは大チョンボね。これは減給物のミスだけど、わたし達を起こさないように気遣ったやさしさに免じて特別に勘弁してあげる。」


「サオリ。」


「コメリちゃん。まだ話は終わってないよ。勘弁してあげる代わりに不当な作戦でせしめたさっきのボーナスは取り消しよ。」


「サオリー!」


 不当な作戦て、サオリは納得してたんじゃなかったのかよ。オレに負けたのを根に持っていやがったな。




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