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第312話 考えろ

 



 考えろ、考えるんだ私。肉食の魔物は足の速い獲物を狩るときにただ闇雲に追っかけているか?水場が危険なのはなぜか?脳筋、脳筋っていつもバカにされるけど脳筋だって考えてる所を見せないと。


 私は魚突きを中止して、場の様子を観察したわ。私が魚を突いていた所、今サオリ達が突いている所は深くて何もなくて水の流れもゆるくて泳ぐには最適だけど、魚を突く場所としてはどうかしら。私達がたくさんの魚を見つけたって事は魚達も私達を見つけているのよね。それじゃ当然魚達は警戒しているよね。警戒している獲物を獲るのは難しいよね。獲られる方だって必死なんだから。じゃあどうしたら良いか。不意打ちよ。油断している所を不意にぱくっよ。水場の魔物は水の中に隠れて潜んでいるよね。猫型の魔物は木の上に隠れて潜んでいるよね。私はどうしたら良いの?そう。私も隠れて待ち伏せすれば良いのよ。水の中で隠れる所って?もう少し下流に大きな岩がごろごろしているじゃないの。私はそこまで泳ぎ着くとその中で一番大きな岩の上に乗ると寝そべった。


「あれ?リオもアメリみたいにあきらめたの?そんな岩場で寝そべって。わたしなんてもう一匹獲ったよ。」


 目ざといサオリが私を見つけて声をかけてきたけど、もう一匹獲ったんだ。さすがサオリって言う所か。ちょっとだけ焦るけど今は我慢だ。


 しばらくするとサオリ達に追いやられた魚達が大量に岩場にやって来た。焦るなまだ早い。サオリ達に追いやられたばかりで警戒心満々だ。魚達が油断するまで待つんだ。


 さらにしばらくすると警戒心も解けたのか岩の下に隠れていた魚達が顔を出し始めた。もう良い頃合いだろう。私は岩陰からそーっと腕を伸ばすとともにヤスを一匹の魚目掛けて発射した。やった今度は逃げられることなく、見事にヤスの刃は魚を貫いた。刃の先には返しがついているので刺してしまえば簡単には逃げられることはない。私は落ち着いて獲物を手繰り寄せた。まずは1匹だ。腰のベルトに着けていた籠に入れた。


 やった。うれしい。だけど余韻に浸っている暇はない。サオリも既に一匹獲っているのだ。すぐに2匹目を獲らないと。だがやっぱり難しかった。おいそれとは獲れなかった。


「おーい!集合!」


 アメリ(コメリちゃん)の掛け声の前までになんとか3匹獲る事ができた。3匹は少ないけどこの難しさから考えて、もしかしたら私が優勝なんてこともあるんじゃないの。


「じゃあ順番に何匹獲れたか見せてくれ。まずは2号から。」


「難しすぎる。わたしはゼロよ。」


「私もゼロです。」


 やっぱり難しかったのか2号もアーリンもゼロだった。これはサオリの成績次第で期待が持てるぞ。


「次、サオリ。」


「ふっふっふ。わたしを誰だと思ってるの。天下のサオリ様よ。」


「その天下のサオリ様は何匹なんだよ?」


「じゃーん。」


 もったいぶった割には最初に獲った一匹だけだった。


「勝った!私は3匹よ!ボーナスいただきね!」


 勝利を確信した私は嬉々として腰の籠から3匹の魚を取り出した。サオリの得意満面から絶望に変わった顔。気持ちいい。やった。やったわ。


「ねえアメリ、いやコメリちゃんいくらくれるの?」


 もう勝ったも同然だ。コメリちゃんなんて潜りもせずに上流の浅場でただずんでいただけじゃないの。


「いくらが良い?リオ。」


「うーん。そうね。金貨1枚と言いたいところだけど銀貨5枚にまけといてやるよ。」


 金貨一枚にしとけば良かったかな。でも欲張ったらみんなのひんしゅくかうしね。


「銀貨5枚か。まあ妥当だろうな。」


 そう言いながらコメリちゃんは籠から1匹ずつ魚を出し始めた。3匹目を出しても終わらず4匹目まで取り出そうとしていた時に私の勝利の余裕は無くなった。


「ちょっと待って!あり得ない!イカサマよ!そうだ!魔法だわ!魔法を使ったわね!」


 勝ちを確信していたのにひっくり返されて狼狽してしまった。


「ちょっとリオ落ち着いて。わたしがアメリのイカサマを見抜いてあげるから。」


「ちょ!リオとサオリ!イカサマって酷いじゃない!オレは確かに魔法を使わずにこの針金1本で魚を獲ったぜ。」


「そもそもこの針金が怪しいわ。ヤスでなくて針金を使っている所がね。」


 私はアメリの持っていた針金を奪い取った。思ったよりもずっとずっしりと重く針金と言うよりも細い鉄の棒って感じだが別に怪しい所はわからなかった。


「わたしにも見せなさいよ。リオ。」


 私から針金を受け取ったサオリも妖しい所はわからないみたいだった。


「針金と言うには重くて頑丈だけど、別に怪しい所は無いわね。あ、わかった。アイテムボックスから出したわね。手品みたいに。ネタのバレてる手品はわたしには通用しないよ。」


「サオリー。今度は手品かよ。いい加減に言いがかりを止めないと大人しいオレだって怒るよ。」


「アメリ。あんたの日ごろの行いを知っているからこそ言いがかりを止められないんだよ。じゃあわたし達の目の前で獲ってみなさいよ。魔法を使わずに。そうしたら信じてあげるから。」


 サオリの言う通りだ。アメリは勝つためには手段を選ばない男いや女だ。どんなイカサマを使ったか知らないけど、私とサオリの目はごまかせないわ。イカサマを見抜いてボーナスを取り戻さないと。


 私とサオリに詰められてさすがのアメリも顔色が悪いわ。でもインチキ野郎と言えど私達のリーダーなんだもん。そろそろ許してやろうか。


「まあ私はボーナスさえもらえるなら別に怒らないよ。早く自分のイカサマを認めなさいよ。怒らないから。」


「わ、わかった。今から目の前で魚を獲ってやるよ。」


「「え!」」


 てっきりイカサマを認めて謝ると思っていた私とサオリは意外なアメリの返答に驚いた。




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