第311話 5人揃って
こうやって寝ては起きておしゃべりしてを繰り返していたんだけど、さすがに長時間狭い馬車の中にいるのは苦痛になってきたわ。お尻は痛くなってくるし手足もなんか痛いわ。もう限界よとか思っていたんだ。これは私だけじゃなくてみんなそうみたいだった。だってみんな顔をしかめて黙りこくっていたもん。
「そろそろ次の村に着くよ。やっと馬車から出られるよ。」
突然2号がこう言った時はお前は預言者かと思ったんだけど、よく考えたら外にいるコメリちゃんが中の2号に伝えたんだよね。テレパシーとか言うんだそうだ。口でしゃべらなくても意思を伝えあう事ができるそうな。そんな事よりこれでこの窮屈地獄から解放されると思ったらうれしくて思わず声をあげちゃった。
村の食堂はあまり期待してなかったんだけど、良い意味で期待外れで美味しかったわ。お腹いっぱい食べちゃった。これだけ食べたら後はお昼寝なんだけどいつもは。だけど馬車の中でいっぱい寝てたから眠くないわ。腹ごなしに散歩に出かけようとみんなを誘ったわ。村の側にはきれいな川が流れてたわ。きれいな川をみたらやっぱり泳ぎたくなるよね。そこでコメリちゃんが水着を出してくれたんだけど、水着って相変わらず大胆な服だわ。ぴちぴちで体の線が丸わかりじゃないの。こんなの着て王都の町を歩いたら絶対に捕まるよ。これでもアメリとサオリの元いた世界では控えめで大人しいデザインなんだそうだ。アメリが私達に着せようとしたもう一つの水着なんてまるで下着だったもん。ブラとパンティだけで外にいたら頭のおかしい人と思われるよね。さすがにこれは着れないわ。でもこのおそろいの水着を5人揃って着るとなんか気分が上がるわ。美少女戦隊の勝負服にしたいくらい。5人揃って○○レンジャーってアメリがいつも言っているけど、○○レンジャーは知らないけどなんか強くてかっこいい人達みたい。そしてこの水着の色にも意味があるんだって、私の着ている赤は一番カッコよくて強い人の色なんだって。アメリ、よくわかってるじゃないの。ちなみに黒は敵の色だとか。アメリって敵なの(笑)。
泳いでいたら川の中はお魚がいっぱい泳いでいるじゃないの。こういうの見たら獲りたくなるよねとか思ってたらコメリちゃんがヤスなる物を用意してくれたわ。棒の先に刃が付いていてゴムの力でその棒を発射できるのね。なるほどこれなら泳いでいる魚も簡単に突けるわと思っていたら、アメリ(コメリちゃん)ったらまた勝負とか言い出したわ。さすがは勝負狂だわ。なんでも勝負して優劣を決めないと気が済まないみたいね。こまった性格だわ。適当に付き合っておこうか。あ、賞金が出るのね。なら別よ。私も燃えるわ。
「じゃあこれから10分で魚をどれだけ多く獲るか勝負な。ただし魔法は禁止ね。1位の人には臨時ボーナスを出そう。だからみんな頑張って。それから・・・・」
「オッケー!」
先手必勝よ。なんかアメリ(コメリちゃん)が説明してたけどいつも彼女は話が長いのよね。悪いとは思ったんだけど途中で水に飛び込ませてもらったわ。魚のいる所に後から行っても魚が逃げていなくなっちゃうからね。私の後からサオリ達もあわてて飛び込んできたけど遅いわね。まずは一匹目は私がいただくわ。私は目の前を泳いでいた魚達の中で一番大きい奴に狙いを絞った。しかしヤスの射程距離まで近づこうとするとすっと逃げられてしまった。バタバタと泳いで近づいたから警戒されたのか。今度は別の魚になるべく動かないで静かに接近した。でもまた近づく前に逃げられた。ここで私はようやく理解した。ヤスで魚を突くのはとんでもなく難しい事を。水面に上がって息を整えながらしばらくサオリ達の様子を観察したけど、やっぱり誰も獲れそうにもなかった。アメリ(コメリちゃん)に至ってはもうあきらめたのか水にも潜らずに浅瀬でぼーっとつっ立っていた。
考えろ、考えるんだ私。肉食の魔物は足の速い獲物を狩るときにただ闇雲に追っかけているか?水場が危険なのはなぜか?脳筋、脳筋っていつもバカにされるけど脳筋だって考えてる所を見せないと。
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