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第305話 vsイサキちゃん2号決着

 




「始め!」


「突きー!」


 サオリの試合開始と同時にイサキちゃん2号は突いてきた。しかし単純な突きは防御に徹していればオレでもかわせる。ここは竹刀の間合いの長さを生かす攻撃をすべきだったろう。突きは威力がある反面、かわされると隙ができる。オレはすかさず距離を詰めた。イサキちゃん2号は竹刀でオレを突き離そうとしたが、竹刀の長さが邪魔してうまく振れなかった。逆に無手のオレは自由に手を使えた。オレはイサキちゃん2号の左手を掴むとそのまま飛びついて足ではさんだ。いきなり左手に飛びつかれたイサキちゃん2号は体勢を崩して倒れた。後はつかんだ左手を伸ばして飛びつき腕ひしぎ十字固めの完成だ。


「どうだ?まいったするか?」


「・・・・・・・・」


 イサキちゃん2号は無言で耐えていた。


「イサキー!降参させろよ!このままじゃ左手使い物にならなくなるぞ!」


 イサキちゃん2号に言ってもらちが開かないと判断したオレはセコンドのイサキに降参を勧めた。


「ふん!折りたきゃ折ればいいだろう。」


 イサキも物騒な事を言うもんだ。オレ達式神でも痛い物は痛いんだ。


「サオリー!これ一本じゃね?」


「だめだめ。まいったしていないじゃない。」


 審判のサオリに助けを求めたが駄目だった。


「しかたないな。まいったしないなら折るぞ。良いのか?」


「・・・・・・・・・」


 相変わらずイサキちゃん2号は無言で耐えていた。しかたない。オレはイサキちゃん2号の左手を掴む両手の力を強めようとした。


「ふん。左手一本ぐらいくれてやらあ。」


 そう言ってイサキちゃん2号は無理やり体を反転しようとした。ビキィと鈍い嫌な音がした。腕は折れなかったが筋は何本か切れたようだった。ビックリしたオレは掴んだ手を放してしまった。


 イサキちゃん2号は右手で竹刀を拾うと素早く立ちあがった。あっけに取られて寝そべったままのオレに右手一本で打ってきやがった。


 腹と顔に良いのをもらった。このままじゃタコ殴りにされて終わる。そう思ったオレはまた地面の砂を掴んでイサキちゃん2号の顔にぶっつけた。


「ふん。また卑怯な目つぶしかい?私がイサキと視界を共用しているのを・・・・」


「忘れちゃいないよ。だからまた組み付かせてもらうよ。」


 そう言ってオレはイサキちゃん2号の右手を捕った。視界を切り替えるのにコンマ何秒かかかるんだろう。その隙に捕らせてもらったって事さ。そしてまた足を絡めさせてもらった。また飛びつき腕ひしぎ十字固めの完成だ。


「勝負有!」


 サオリがすぐに試合を止めた。良い判断だ。イサキちゃん2号は絶対に降参しないし、またむやみにケガさせるところだった。


「まだまいったしてない!」


 イサキちゃん2号が審判のサオリに喰ってかかった。


「もう良いんだよ。2号。よくやった。」


 イサキがサオリに絡むイサキちゃん2号を引き離した。


「くそー!」


 イサキちゃん2号はイサキの胸で悔し泣きをしていた。


「イサキ。早くイサキちゃん2号の治療を。」


 そんな事よりも治療だ。早く治療してあげないと。オレはイサキを急かした。


「ああ。式神には治療ができないんだよ。」


 イサキがなんか絶望的な事を言った。


「え!じゃあ2号ちゃんはずっと苦しむのか?」


 これはイサキちゃん2号だけでなくてオレ自身の問題でもあるのでぜひとも答えを知りたい。


「安心してください。こうすれば大丈夫。ファイアー!」


 なんとイサキは味方のイサキちゃん2号を燃やしてしまった。


「ぎゃー!あち、熱い!うぎゃー!」


 紙なのでよく燃えるイサキちゃん2号は断末魔をあげてあっという間に燃え尽きてしまった。


 かわりにイサキが懐から取り出した式紙であっという間に復活した。


「イサキちゃん2号!大丈夫なの?」


「ああ。おかげさまで平気よ。」


 オレの質問にイサキちゃん2号は痛めたはずの左手をあげて答えた。どんなにケガをしても無傷でリセットできるんだ。今更ながらこれはチートだ。ケガも死ぬのも怖くないってチート過ぎるじゃないか。


 何はともあれ、賭け試合はオレの勝だ。


「コメリちゃん。あんたの取り分よ。」


 サオリがみんなから巻き上げた銀貨をオレに渡してくれた。式神のオレにとって金は特にいるものではない。まあもらってうれしくない事はないけど。こういう時はあれだ。ぱーっと使うに限る。


「よし!今日はオレのおごりだ。この金でみんな。パーッと飲んできてくれ。」


 そう言ってオレはサオリからもらった金をリオに全部渡した。


「え!良いの?さすがは私らのボスだ。太っ腹。」


「ゴチになります。」


 リオもアーリンも大喜びだけど、もともとはあんたらの金だからね。


「よし!みんな!今日の晩飯は王都の町に繰り出すよ。一時間後にリビングに集合よ。みんなおしゃれしてきて。」


「「「「「「「「おう!」」」」」」」」


 宴会部長のリオの仕切りに誰も異を唱えるわけなくみんな嬉々として自分の部屋へと戻って行った。


「ほら。コメリちゃんもおしゃれしてきて。」


 いつまでも部屋に戻ろうとしないオレにサオリが優しく声をかけてくれた。


「あ、オレは良いんだよ。留守番しとくよ。」


「え?あんたのお金を使うのにあんた行かないの?」


「うん。オレの本体の2号が魔法の使い過ぎで死んでるからね。式神のオレは一人で出かけられないよ。」


「あ、そうか。そうだったよね。そりゃ残念だ。じゃあお土産になにかうまい物を買って来るよ。」


 先程の、オレが本体の2号から離れられないって言った事情を思い出したみたいでサオリは納得してくれた。サオリがなにかうまい物を買ってきたら本体の2号に食わせてやるか。式神のオレは食わなくても腹へらないし。


 さてこれから暇なオレはみんなのために家を掃除してお風呂でも沸かして待ってようか。




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