第301話 アメリ復活
「な、なんて事するの!」
「そうよ!私のアメリにこんな事をして許されると思っているの!」
クロエとジュンは今にも斬りつけんばかりの勢いでわたしに迫って来た。
「ジュン。私のアメリって、わたしもアメリなんだけど。従魔の二人にはちょっと刺激が強すぎたみたいね。」
目の前でマスターが殺されたら平常心でいられない二人の気持ちは良く分る。これはコメリちゃんを復活させないと二人は納得しないだろう。下手をすれば斬られちゃうわね。
「もうしょうがないわね。魔力をごっそり奪われるからダンジョン出るまでは本当はやりたくなかったんだけど。二人のために特別にコメリちゃんを復活させてあげる。その代わりわたしの魔力は尽きるからわたしはもう魔法撃てないよ。」
そう言ってわたしはアイテムボックスから取り出した式紙に念を込めた。式紙がどんどん人の形になって行った。
「うーん。おはよう。」
とぼけた事を言ってコメリちゃんは手足を伸ばした。
「アメリー。良かった。」
クロエったら感極まってコメリちゃんに抱き付いた。
「・・・・・・・・。」
ジュンったら大人しいと思ったら無言で泣いていた。
「おいおい。よせよ。クロエ。お前だって何度でも復活できるだろ。あれ!ジュン泣いてるの?」
「泣いてなんかいないよ!アメリのバカ!」
ジュンたら一人走り出したけど、ここはダンジョンの中だからね。あまり遠くにいかないで。
「おいおい。単独行動すると危ないぞ。」
ほら、コメリちゃんに叱られた。
「で、どうだった?コメリちゃん。死んだ感想は?」
わたしが聞くと。
「ああ、いつ死んでも死ぬのは嫌なもんだぜ。よくお花畑が見えるとか三途の川を渡るとか言うけど、何にもないな。突然意識のスイッチが切れただけだったぜ。アメリと言う生き物いや、式神だからロボットか。ロボットのスイッチが切れただけだったぜ。パチンとな。
お前にもこの貴重な経験をさせてやれないのが残念だぜ。」
「わたしはコメリちゃんみたいに復活できないから遠慮しとくよ。ていうかあんた。わたしを攻撃するって事は自分を攻撃する事だから。」
「それが悔しいぜ。この恨みを晴らせないのが。」
わたしとコメリちゃんがにらみ合っていると、
「自分自身とケンカできるなんて凄いね。」
クロエがあきれていた。
「復活できると言っても2号がオレを生み出すのは一日に2回が限度みたいだし、やっぱり死なないようにしないといけないな。」
「うん。なんか凄いチート技かと思ってたけど、思ったほど使えないよね。1号一人のほうがわたしとコメリちゃん合わせたよりも戦闘力あるしね。」
「そうだな。イサキのように技の精度を上げたらまた話は変わってくると思うけど。」
「え?今度は自分自身で会議?これって独り言?」
「うるさいな。クロエ。そうさ。オレ達は、いやオレは変態だよ。笑ってくれよ。」
またまたクロエがおおげさにあきれてるもんだからわたしもコメリちゃんもちょっとむかついた。
「たしかにわたし達は変態かもしれないけど、変態幽霊のあんたに笑われる筋合いはないわよ。」
「なんだって!あんた。腕も悪いけど性格も悪いわね。とてもあのアメリと同一人物とは思えないわ。」
「なんだと!お前なんかとの契約をこちらはいつでも解約しても良いんだぜ。」
「おいおい。仲間割れはよせよ。大体従魔契約をしているのはオレだから2号には解約できないぜ。」
「え!自分で火を着けて今度は自分で火を消そうとしてる。これがほんとのマッチポンプだね。」
今まで黙っていたジュンにまであきれられてしまった。
*
コメリちゃんの仲裁でなんとかクロエと仲直りしてわたし達は帰路に着くことにした。わたしのMPが尽きた事とクロエとジュンの魔法の訓練のためにわたしとコメリちゃんが前衛に着く事になった。
「おっと!通路の向こうにオークが4匹いるわ。クロエ、ジュン魔法の準備!後ろからじゃんじゃん撃って!コメリちゃんはわたしに付いてきて。」
「「「おう!」」」
わたしは3人に指示すると突入に備えて刀を抜いた。
「ファイアー!」
ジュンの魔法が開戦の狼煙となった。あぶりだされた4匹のオークが飛び出してきた。
わたしは一匹目のオークを蹴り飛ばした。自慢じゃないけどわたしは技はないけど力はあるからね。倒れたオークにすかさずコメリちゃんがとどめをさした。ナイスよ。それでこそわたしの式神と言えるわ。わたしもコメリちゃんも半人前だけど二人力を合わせれば立派な戦力になれるわ。
「ファイアーボール!」
クロエの魔法が見事にオークに炸裂したわ。チャンスよ。わたしは魔法で大ダメージを負ったオークにとどめの一撃を加えた。
これであと2匹よ。楽勝かと思っていたら、なんと2匹が同時にわたしに向って来たわ。これはちょっとやばいわね。わたしは一匹が限度よ。
「クロエ!ジュン!魔法を撃って!」
「ファイアーボール!」
どっちの魔法か分からないけど見事に炸裂したわ。わたしがとどめをさそうとしたらもう一匹がわたしにこん棒で殴りかかって来た。
「危ない!」
「ファイアーボール!」
コメリちゃんがオークからわたしをかばおうと前に飛び出た所で魔法が飛んで来たわ。
「うわ!」
オークに炸裂するはずの魔法はコメリちゃんに当たってしまったわ。大変。コメリちゃんは紙だから火に弱いのよ。
「あつ!ぎゃー!」
水魔法を唱える暇もなかったわ。あっと言う間にコメリちゃんは燃え尽きてしまった。
「1号!」
大丈夫だと分かっているはずなのに大声で叫んでしまったわ。
「1号の仇!」
ブチ切れたわたしはオークを2匹まとめて一刀両断にしてやったわ。どうやらわたしはブチ切れるといつも以上の実力を発揮するタイプみたいね。
「ごめんなさい!」
戦闘の後、ジュンが土下座をして謝ってたわ。どうやら魔法を撃ちこんだのはジュンみたいね。
「ジュン。頭を上げて。そんなに謝らなくてもいいよ。どうせコメリちゃんはすぐに復活するし。」
「え!でも2号はもう魔力がないんじゃ?」
「あ!そうだった。」
ちょっとまずいんじゃない。まだこの辺はオークがうようよいるよ。ここでコメリちゃんがいなくなったのはヤバイわね。わたしとクロエ、ジュンのポンコツ3人でオークの階層は無理だわ。どうしましょう。ジュンは泣いているけど泣きたいのはわたしの方だわ。
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