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第30話 一限目

 翌日、ダンジョンでの狩を終えた後に、オレ達四人はサオリのワープで冒険者アカデミーに来た。正確には最奥のボス部屋のボスであるオークロードを倒した後に地上に歩いて戻らずに、いきなり冒険者アカデミーのそばの空き地にワープで移動したのであった。


「いやー。あいかわらず、便利だね。サオリの能力は。」


 歩きながら、リオがサオリに話しかけてきた。オレはサオリに通訳してやった。


「アリガト。」


 サオリは自分で答えた。


「今日、倒したオークやオークロードは冒険者ギルドに出さなくても大丈夫なの?」


「うん。オレのアイテムボックスの中では時間が止まっているから、いつ取り出しても新鮮なままだよ。」


 オレはリオに答えてやった。最近、面倒くさいので一人称もオレにすることにした。


「本当にチートね。あんたたち二人は。」


「なによ。また、勇者様―ってからかうの?」


「いや。あんたたち二人のおかげで、底辺冒険者だったわたしでも夢が見れるなーと思ってさ。」


「リオの夢って何よ?」


「わたしの夢は王国一のA級冒険者パーティの美少女担当よ。」


「そこは剣士か戦士って答える所じゃないの?相変わらず、しょってるわね。」


「剣も魔法もあんたたち二人にはかなわないから、まあわたしの担当は美って事よ。

 お願いしますよ。勇者さま。」


「はいはい。攻撃担当はオレたちにまかせてね。

 ところで、セナはなんか夢があるの?」


 オレは黙って聞いていたセナにふった。


「わたしの夢はお金を稼いで、そのお金で商売を始めて王国一の商人になることよ。

 アメリたちの夢は何?」


「ふーん。セナの両親は商人だったもんねえ。セナも商人になりたいんだ。セナならしっかりしてるから、王国一の商人になれるよ。

 それで、サオリの夢はね、リオと同じく王国一の冒険者ね。

 わたしの夢はセナと同じくお金を稼いで、そのお金で贅沢暮らしをすることね。

 と言うのは冗談で本当はリオと同じく王国一の冒険者パーティを作って、それを鍛えに鍛えてA級どころかその上のS級にして、スカイドラゴンを征伐することね。」


 オレがそう答えると。


「スカイドラゴン⁉」


 リオがビックリして言った。


「スカイドラゴンって何?」


 セナが聞いた。


「スカイドラゴンって、その強さはカタストロフィクラスでもし遭遇するようなことがあったら、全力で逃げろ、もしかしたら助かるかもしれないっていう伝説の魔物よ。つい最近、この近くにも現れたって冒険者ギルドで聞いたわ。親子三人が襲われて、奇跡的に女の子一人だけ助かったって。

 え?え?アメリ、あんた?」


「そうよ。その時の生き残りの美少女がオレ様よ。」


「アメリー。あんたも苦労してるのね。」


 リオが涙声で言った。


「同情は要らないわよ。今の両親は良くしてくれるし、サオリやセナだって似たような境遇だし。とにかく、オレとサオリに負けないくらいあんたたち二人にもにも強くなってもらうわよ。」


 しめっぽくなりそうな雰囲気を吹き飛ばすようにオレは大きな声で言った。


「おう、まかしとけって言いたいところだけど、普通の人のわたしたちで大丈夫かな?」


 セナが不安げに聞いてきた。


「大丈夫。大丈夫。オレとサオリにはパーティメンバーのレベルを引き上げやすくする能力もあるわ。セナ。あんたはたった一か月で魔法を習得できたのよ。普通は何年も修行しなければならないのよ。自信をもって。」


「そうよ。わたしとセナは勇者様に選ばれたメンバーだから自信を持っていいわよ。わたしたちも凄いのよ。」


 リオも元気づけてきた。


「あー。リオは顔だけで選んだんだけどね(笑)。」


「えー。ショック。わたし自信無くした。帰る。」


「うそ。うそ。冗談。リオの凄さにはオレもサオリもビックリしてるんだよ。魔法もセナより先に覚えたし、ホーンラビットだって最初の日からやつけてたしね。」


 リオの実力はほんとうに計算外だった、ただの剣士見習のはずが短期間で魔法まで覚えてしまっていっきに魔法剣士にレベルアップしていた。リオの異常な上達ぶりを見てオレは神の加護のおかげであると気づいたのだった。オレとサオリには仲間をレベルアップしやすく力があると。


 オレ達が夢を語りながら歩いていると、やがて冒険者アカデミーの校門に到着した。


 教室に入るとオレたちはあいている席に座った。


 オレたちを見かけるとイザベル達4人がこちらに向かってきた。身構えていると。


「おはようございます。昨日はすみませんでした。」


 イザベルが代表して謝罪した。


「おはよう。これに懲りたら謙虚に生きる事ね。次は手加減しないわよ。」


 リオが偉そうに答えた。リオはイザベルたちを子分にしたいみたいだが、イザベルたちにとって、年下に偉そうにされるのは気分のいいものじゃないだろう。それがいつか確執を生んで、オレ達は足元を掬われるかもしれない。オレは別に子分が欲しいわけじゃないし、できればみんなと仲良くやっていきたい。


「こちらこそ、先輩方に対して生意気な態度をとってすみませんでした。よかったら、わたしたちと友達になっていただけませんか?」


 オレはふんぞり返るリオを制して、イザベルの前に出て、手を差し伸べて聞いた。


「え!い、良いわよ。」


 イザベルはオレの手を握って答えた。


「イザベルさん。ローレスさん。ニコラさん。マイクさん。あらためて言いますけど、わたしはアメリと申します。よろしくお願いします。」


 オレは一人一人に頭を下げて挨拶した。オレに釣られて全員が挨拶をしあった。オレのおかげか全員が打ち解けたようで、ニコラとマイクの男組二人はリオに一生懸命に話しかけていた。オ、オレはべつに男になんか興味が無いから、悔しいとかうらやましいとか、ないったらないんだから。イザベルお姉さんとローレスお姉さんと仲良しになれたから良いんだから。あと、やっぱり外人さんは珍しくて、サオリは質問攻めにあってちやほやされていた。ふん。うらやましくないわい。


 今日の授業はシンディ先生の魔法講座だった。シンディ先生は攻撃系の黒魔法が得意だが回復系の白魔法もそれなりにできると言う事だった。オレ達は二つの班に分けられた。オレやリオの魔法剣士の班とサオリやセナの魔導士の班であった。ちなみにニコラとマイクの男二人は魔法剣士班で、イザベルとローレスの女二人は魔導士班であった。オレはクラス的には魔法剣士であるが、サオリの通訳のために魔導士班のほうに入れてもらった。魔法剣士の魔法はメアリー師匠に教えてもらえると言う事もあったし。


 授業のやり方はシンディ先生が見本を見せて学生がそれを真似て呪文を唱えると言う物だった。オレ達4人の魔法はいわゆる魔法剣士の魔法で攻撃のために単発で飛ばすものしかできず、ファイアーやサンダーなどの範囲魔法が苦手というか習ってなかった。


 オレは呪文を王国語と日本語でメモした。日本語でメモしたのはサオリのためである。チート野郎のサオリは一発で魔法をマスターできたが、詠唱省略の魔法は軽いと言う思わぬ弱点があったから、呪文を覚える必要があったからである。一番初歩のファイアーからであったが、オレはシンディ先生のみならず、イザベルとローレスの二人に頭を下げて呪文をゆっくりと唱えてもらって完璧に記録した。おかげでオレもサオリもファイアーとサンダーを一日でマスターした。魔法のコツは、古代王国語で、空気中に漂う精霊に、魔法を具体的にイメージして、正しく命令をすることだと気づいているオレにとって、正しい呪文さえ唱えれれば、魔法の習得はさして難しい事ではないが、普通は何か月も何年もかかるもので、ほんの小一時間で二つの魔法をマスターしたオレとサオリは天才だとみんなに言われてしまった。目立ちたくないのに、ちょっとやり過ぎてしまったか。明日からは少しは加減をしないと。


 ファイアーは敵全体を燃やす火の魔法であった。敵全体を燃やせるのは良い事だが、範囲が広がればその分威力は弱くなるし、詠唱に時間もかかると言う弱点もあった。スピードが命の魔法剣士のメアリー師匠が使わないわけである。イザベルとローレスはその上位魔法のファイラを練習していた。他の人たちも初歩の範囲魔法は取得しているみたいだった。つまり、セナだけができなかった。紙と鉛筆が貴重品のこの世界でメモを取っているのはオレだけだった。つまりオレだけが家に帰ってからも復習できると言う事だ。オレは帰ってから、魔法のコツを教え、メモを見せて、セナにも一日でファイアーとサンダーをマスターさせると決めた。


 授業が終わって教室に戻ると、リオ達魔法剣士組が一足先に戻っていた。


「いやー。リオさんのファイアー突きは凄いっすねえ。」


「ファイアーボールと突きが同時に出せるなんて、しかも無詠唱だし。」


 リオはニコラとマイクに褒められて有頂天だった。リオがもててるのが女ボスのイザベルも気に食わないらしく。


「あら、アメリとサオリなんか今日一日で魔法を二つもマスターしたのよ。そっちの方が凄くねえ?」


 変な対抗心でオレとサオリを出してきた。


「えっ。うそー。オレなんてファイアーボールをマスターするのに三年半かかったのに。しかも、いまだに、リオみたいに剣先から飛ばせんのに。お前ら、何者?」


「そうだ。何者だ。」


 ニコラとマイクがビックリして問い詰めてきた。


「この二人はなんと、ゆ・・・、もごっ。」


 オレはリオの口をあわててふさいだ。


「いや。ただのまぐれですよ。前にちょっと練習してたからですよ。たまたまですよ。」


 オレは弁明しながら、リオをにらみつけた。リオは舌を出した。


「え?ゆ、なに?有名人?」


 イザベルが聞いてきた。



「そ、そうなんですよ。わたしたちの冒険者ギルドではちょっとした有名人なんですよね。天才少女として。」


 リオが苦しい弁明をした。


「え!冒険者ギルド?あんたたちはもうプロなの?」


 イザベルが聞いてきた。冒険者であることも隠しておきたかったのに、とんだ藪蛇だ。リオのバカ野郎。あとでお仕置きだ。


「ええ。駆け出しの低ランク冒険者ですけどね。」


 オレは再びリオをにらみつけて答えた。


「道理で瞬殺されたわけだ。プロはやっぱり、すげー。」


「プロは基本ができてるからね。魔法だって一日でマスターできるわけだわ。」


 オレとサオリのチート能力はプロはすげーの一言で片付いた。まあ、ごまかせたからいいか。


 オレ達はサオリのワープで帰宅に着くと、セナとリオに今日習ったファイアーとサンダーを教えた。特にリオには厳しく指導してやった。おかげで、セナどころかリオまで一日で二つの魔法をマスターしてしまった。


 もしかして、リオもチート野郎?




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