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第297話 アメリちゃん危機一髪

 



 わたしはアメリ。みんなが2号2号て呼ぶけど、わたしが本体だからね。お忘れなく。


 イサキったら、式神のイサキちゃん2号ちゃんに危険な事をやらせて自分はいつも高みの見物を決めこんでいるくせに、一人で大丈夫とか偉そうな事を言うからカチンと来て言ってやったわ。自分自身でやれって。言いたいこと言ってわたしはすっきりしたけど、言われたイサキは顔を真っ赤にして怒っていたわ。今にも斬りかかって来る勢いでね。ハイブリッドアメリならイサキごときは簡単に撃退するかもしれないけど、今のわたしじゃちょっと分が悪いわね。アーリンが助け舟出してくれて良かったわ。自分自身でやれってのはわたしだけじゃなくてみんな思ってたみたいで、みんなから言われたもんだからイサキ本体が自ら危険を顧みずに特攻するみたいね。あれ?怒って真っ赤だったイサキの顔が青ざめてるわ。もしかしてイサキも怖いんじゃないの。いつも偉そうにしているイサキだって魔物が怖いのよ。臆病者はわたしだけじゃなかったって事よ。少し安心したわ。そうよね。みんな怖いけど、勇気をふりしぼって頑張ってるんだよね。そう考えたらわたしも少し落ち着いてきたわ。頑張らなくっちゃ。


「じゃあ打合せ通り空から奇襲と行くか。準備は良い?アメリ。」


「うん。いつでもオッケーよ。イサキ。」


 わたしとイサキはオークの集落の上空に来ていた。もちろん空を飛んでだ。日中だとそれに気づくするどいオークもいるかもしれないが、今は月も出ていない闇夜だ。誰も気づきはしないだろう。


「イサキ。しばらくそこで待機していて。」


「おう。」


 一定の場所に空中で留まっているのは本当はすごく難しい。なぜなら地球には重力があるからだ。だまっていたら地面に向って落下するのを一定の高度に保たなければならない。地味だがイサキならではの凄技だった。


 イサキの事よりもわたしの事だ。わたしはイサキにつかまりながらアイテムボックスから必要な物を出してはイサキに渡した。わたしも空を飛ぶ事ぐらいはできるが、何か難しい事をしながら空を飛ぶなんて芸当はまだ無理だった。ハイブリッドアメリならお茶の子さいさいかもしれないがわたしは体を使う技が少々苦手だからね。


「なにこれくっさい。大丈夫なのこれ?」


 イサキに渡したのは巨大なじょうろだった。それも揮発性の油をたっぷりと入れた。


「大丈夫だけどこぼさないでよ。この油をかぶったら自分自身が丸焼けになっちゃうよ。」


「わ、わかった。気をつける。」


「じゃあ二手に別れて屋根に油を撒いて回るよ。」


 自分でもじょうろを持つとわたしはイサキと別れて飛んだ。オークの住処は木を組み合わせて作った簡単な物だ。晴れの日が続いていたので木の葉を敷いた屋根は乾燥していて油をよく吸収した。油を撒く音に気付いたオークがいたとしても雨が降ったぐらいにしか思わないだろう。油の雨を撒いたわたしとイサキはみんなが待機している所に舞い降りた。


「みんな。準備は上々よ。たっぷりと油を撒いてやったわ。私と2号で家に火を着けて回るからみんなは出口から出てくるオークを斬ってね。」


「「「おう!」」」


 イサキの指示でアーリン、クロエ、ジュンの3人は音もたてずに走ってオークの住処の出入り口へと向かった。オークの住処は山の窪地を利用した自然の要塞で窪地の中に簡単な家が何軒か建っていた。その狭い出入り口は一匹のオークが見張りをしていた。もちろん空を飛べるわたしとイサキにとってそんな物ないに等しいけど。


「イサキ。わたし達も行こうか。」


「おう!」


 意を決したわたしとイサキは闇夜に飛び出した。オークの集落の中から攻めて回るわたしとイサキが一番危険な役だ。ハッキリ言って。何があるか判らないオークの住処に二人で降りて火を着けて回るわけだから。尻に火が着いたオーク達が出入り口に向かわないでわたしとイサキに向って来るかもしれないし。何度も言うけど肉体派のハイブリッドアメリと違って頭脳派のわたし真アメリは刀での戦闘が苦手なのだ。


「呪文はもう唱えたね?イサキ。」


「おう。」


 住処の一番奥に降り立ったわたしとイサキは闇に紛れてオークの住居に魔法ファイアーで火を着けようとしていた。今まさに魔法ファイアーを撃とうとしたときだった。


「危ない!ぎゃっ!」


 わたしをかばってイサキが弓矢で撃たれてしまった。たかだかオークごときと思って油断していたのかもしれない。いや、油断はなかったはずだ。緊張のあまり敵を探索し忘れたわたしのミスだ。わたしのミスで大事な仲間を傷つけてしまった。しかし後悔している暇は無い。今は戦闘中だ。


「ファイアー!」


 住居に撃つはずだった魔法ファイアーを矢が飛んで来た方向に撃った。もちろん当たりはしなかった。しかしそれでいい。これは倒すために撃ったわけではない。辺りの暗闇を明るく照らすために撃ったのだ。


 しまった。見張り役のオークは一匹だけじゃなかったのだ。奥の高台にも一匹潜んでいたのだった。


 当然のごとく見張り役のオークは大騒ぎした。おかげで火だるまにするはずのオーク達が無傷でぞろぞろと住居から出てきた。


 最悪だ。唯一の頼りのイサキは足元にうずくまっているし、わたし一人で多くのオークを相手にしないといけない。ハイブリッドアメリならこれぐらいの数のオークは楽勝かもしれないけどわたしには無理だ。


 逃げ出したい。だが負傷したイサキを置き去りにして逃げるわけにはいかない。どうしたら良いんだ。


 恐怖のあまり迫りくるオークの群れの前でわたしは固まってしまった。これは詰んだな。わたしは死を覚悟した。短い期間だったけど美少女戦隊のみんなありがとう。楽しかったわ。




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