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第294話 真アメリ

 



 みんなの笑い声が聞こえる。そうさオレはピエロさ。バカなオレを笑うがいいさ。でもオレだってプライドがあるんだ。本音を言うと笑われたくない。あー。情けない。消えてしまいたい。できるなら消えてしまいたい。もう消えたい。


『そんなに消えたいなら消えなさいよ。』


 え!何?あ、頭が痛い。


 オレは情けない事に男にふられて笑われてショックで倒れてしまった。情けない・・・・・



 *************************************



「アメリ。しっかりして。」


 わたしはサオリの声で目を覚ました。


「サオリ。」


「アメリ。どうしたの?大丈夫?」


「うん。大丈夫よ。ごめんね。心配かけて。」


 わたしは元気よく立ち上がって無事をアピールした。大丈夫も何も清々しい気持ちだわ。やっと出られたのよ。心の牢獄から。そう。わたしは本来のアメリなのよ。トキオの魂と合体する前の本当のアメリの心なのよ。いつもはトキオの魂と合体したハイブリッドアメリがこの体を支配していて、わたしは心の奥底でずっと眠らされていたの。


「みなさんすみません。わたし。恥ずかしさのあまり気絶しちゃいました。えへへ。」


「えへへじゃないわよ。気絶するほどのショックだったんならこのまま休んでなさいよ。」


「いや。もう良いわ、司会をやらせて。」


 サオリの言う通り交代して休んでいるのも良いけど、せっかく世の中に出られたんだもの。もっとエンジョイしないと。司会のやり方はわかるのかって。大丈夫。ハイブリッドアメリとわたし純粋アメリは知識を共用しているのよ。ハイブリッドのできる事はわたしもできるわ。じゃあわたしとハイブリッドの違いは何かって。それはやっぱり性格よ。ガサツな男みたいな性格から純粋な乙女の性格に戻れたのよ。16歳の少女アメリ本来の性格にね。わたしはハイブリッドと違ってノーマルに男が好きだわ。しかも頼れる男がね。だから男の好みも違うわ。レトなんて頼りないのは全然タイプじゃないわ。だからふられても平気よ。でもやっぱりちょっとだけ悔しいけどね。


 そんな事より司会だわ。わたしはハイブリッドと違ってちょっとだけ内気なのよ。だから司会はちょっと苦手だけど。頑張るしかないわ。やると言っちゃったもんね。わたしがハイブリッドのフォローをしてあげないと。わたしの存在意義はハイブリッドのフォローのためにあると思うの。ハイブリッドの代わりに笑われてでもハイブリッドが傷つかないようにしっかりしないといけないと思うの。


「まさかの大どんでん返しでしたね。あまりのショックで気絶しちゃいましたよ。わたしのあまりのあんぽんたんぶりに皆さんも笑っていただけましたね。良かったです。こんなわたしでも皆さんの娯楽の一因となれまして。

 それでカップルになったレトさん、ジュンさん末永くお幸せに。みなさん。拍手。拍手。」


 気を取り直してわたしはMCに復帰した。わたしをふった男と出し抜いた女を祝福するのはちょっと辛かったけど。仕方ないわね。さあ、次に進まないと。


「さあ次に告白するのは誰だ。誰も名乗り出ないならわたしが指名するよ。サオリさん。お願いします。」


「おう!なんかアメリ、感じが変わったわね。そんな事より告白ね。じゃあ行くよ。」


 サオリはやっぱりアーサーの元へ行った。当然アーサーもサオリの差し出した花束を受け取った。カップル成立だ。まあこの二人は鉄板だわな。ちぇっ。面白くない。


 結局イサキとケーシーがカップルになり、カボスはリオとクロエのどっちかを選べなかったらしくごめんなさいをした。


「じゃあ、カップルのみなさんは二人っきりで席に着いてください。カップルでせいぜい盛り上がってくださいな。カボスさん、リオさん、クロエさん、わたしとやけ酒と行こうじゃありませんか。」


「「「「「「「「「「おう!」」」」」」」」」」


 幸せそうなカップルの事は知らないがあぶれ者のわたし達3人はやけ酒のせいもあり盛り上がっていた。


「ねえ、ねえ。カボスさん。リオさんとクロエさんの両美人に告白されたのになぜどっちも選ばなかったの?」


「そうよ。私もそれが聞きたいわ。アメリ、良い質問よ。」


 酔いが回って来た所でわたしは核心に触れる質問をカボスにぶっつけてみた。リオも聞きたいみたいだ。


 カボスはエールを一杯飲み干すと語り始めた。


「リオさんもクロエさんも素敵なんだけど・・・・・・」


「素敵なんだけど?」


 リオが食いついてきた。返答しだいじゃ許さないぞと言う所か。


「実は俺の思い人は他にいたんだ。」


 カボスは思いっきりわたしを見つめながら答えた。


「え?え!わたし?そ、そんな困るわ。」


 突然の告白にわたしは顔を真っ赤にして困惑してしまった。だって女の子なんだもん。


「けっ!そう言う事かい。さすがは我らがリーダーだ。もてる女は違うねー。あっちにふられてもこっちにすぐに告白される。アメリ相手じゃさすがのリオさんもお手上げだわ。それでどうするのよ?もて女さんは。」


 ふられた腹いせもあってかリオが今度はわたしに強く詰め寄って来た。どうしよう。カボスのようなイケメンに告白されてうれしくない女はいないだろう。しかしハイブリッドアメリはレトに告白してしまっている。今更告白されたからと言ってそれを受け入れるのはフェアじゃないわ。でも真アメリのわたしはカボスがタイプなのよ。無下にするのはもったいなさすぎるわ。そうだわ。こう言う時のとっておきの言葉があるわ。


「お友達からならオッケーです。」


「や、やったー!やったぞ!」


 わたしと両想いになったと思ったカボスは大喜びだった。


「ちょっとそこ。何を騒いでいるのよ。」


 あまりのカボスのはしゃぎぶりにサオリが注意してきた。


「けっ!アメリとカボスのカップルが成立したんでカボスが喜んでいるのよ!けっ!けっ!」


 リオが面白くないぞと言った感じで説明してくれた。


「あれ?でもアメリはレトに告白しているわよね。このカップル成立は無効だわ。」


「そう。カボスに逆告白されてこのもて女さんは狙いを変えたのよ。サオリ。」


 やはりサオリはルール違反だと厳しい事を言ってきた。リオはわたしが尻軽女見たいなことを言うし、弁明しなければ。


「あー。だから今わたしの好きな人はレトさんですけどふられてしまったからどうしようもないわけで。それならカップル不成立者同士、カボスさんとお友達になりたいなあと思っただけよ。悪い?」


「そうなの。要するにふられた者同士で傷のなめ合いをしているわけね。じゃあまあ特別に許してやるか。」


 さすがはカップル成立者のサオリさんだ。余裕の上から目線で許してくれた。やった。とにかくわたしにもやっと彼氏らしきものができたわ。ハイブリッドアメリのせいで戦いに明け暮れる日々だったもの。女らしい事が全くできなくてつまらなかったのよ。心の奥底ではね。わたし真アメリが主導権を握ったからには女を取り戻すわ。これからは恋もばんばんするしおしゃれだってするんだから。




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