第291話 お見合い大作戦
待ち合わせのお店はなかなか小奇麗でしゃれたお店だった。やるじゃないか男性陣。女を落とそうと思ったらおしゃれなお店に連れて行かんとな。がさつな冒険者の選んだお店だからあまり期待してなかったけどここなら合格だ。
お店の事よりも男性陣だ。オレ達が来店した時にはすでに店の前に揃っていた。アーサーとケーシーの連れてきた男の子二人も中々イケメンじゃないか。これは今日は期待が持てそうだぜ。
「ごめんなさい。お待ちになられました?」
まずは遅れてきた謝罪だ。女は男を待たすものだけど、オレは自分たちの非は認めてきっちりと謝罪するぜ。
「おう。俺達も今来たばっかりだよ。」
アーサーが答えたが、いくらたくさん待ってもそう言う風に答えてくれると嬉しいよね。
「それでなんですけど、オレ達の仲間と言うか友達も来たいと言いまして二名ばかり増えたんですけど良いですか?」
「もちろんかまわないよ。ていうか女の子が増えてラッキーだぜ。」
アーサーが鼻の下を伸ばして答えたが、そりゃそうだろうな。今日はただの飲み会じゃないもんな。男としては女の子がいっぱいいた方が選べるもんな。
「おっと、店の前で立ち話もなんだから早く中に入ろうぜ。ちゃんと席は予約してあるぜ。」
アーサーを先頭にオレ達はぞろぞろと店の中に入って行った。
案の定テーブルに着いたら男は男、女は女で固まって座ろうとしていた。ちょっといかんな。今日はただの飲み会じゃないんだ。出会いが目的なんだ。仲良くなることが目的なんだ。彼氏、彼女を作る事が目的なんだ。
「あのうアーサーさん。提案があるんですけど。」
オレは思い切ってアーサーに切り出した。
「何だい。アメリ。」
「はい。オレ達女性陣の方が圧倒的に多いですよね?」
「うん。二人多いな。」
「単純計算でオレ達女性陣は二人あぶれるんですよ。そこでオレ達に主導権をもらえないでしょうか?」
「主導権って?」
「オレ達女に選ばせてくださいって事ですよ。」
「え、選ぶって。今日じゅうに恋人を作るつもりなのかお前たちは。」
「いや。友達からですよ。」
「そ、そうだよな。べ、別に良いぜ。俺達もその方が楽で良いぜ。」
良し。男性陣のボスの了承は得た。次は女性陣の説得だ。
「美少女軍団のみなさん、聞いてください。オレ、アメリから一つ提案があります。今日はみんな彼氏を作るつもりで来ていますよね?」
「当たり前じゃないの。合コンてよく分からないけどそう言う物なんでしょ?それより提案て何よ?」
「あー。リオさん。質問に質問で返さない。他のみなさんもリオさんに同意見で良いですね?良いみたいだから話を進めますね。オレ達は冒険者ですよね。冒険者は魔物をハントする者ですよね。冒険者なら恋人もハントしようじゃないですか。」
「ハントってどういう事よ?」
「ハントと言うのは文字通り狩るって言う事ですよ。リオさん。つまりオレ達女が男を狩るじゃなくて選ぶって事ですよ。」
「選ぶってどうやって選ぶのよ?」
「気にいった男の人の前で花束を渡すのよ。」
そう言ってオレは花束を一束取り出した。
「ここまで言えばサオリさんならわかりますよね?ちょっと二人で実演してみましょうか。」
「合コンがなんかお見合い大作戦みたくなってきたけど面白いから良いわよ。わたしが男役やってあげるから来なさいよ。アメリ。」
オレがテレビで観て知っていたようにやはりサオリも知っていた。
「男の人達!今サオリが男役をやりますからよく見ていてください。女の子はオレのやる事をよく見ていてね。」
そう言ってオレはサオリの前に進み出た。
「サオリさん。第一印象から決めていました。オレと付き合ってください。」
オレは花束をサオリの前に掲げて深々と頭を下げた。
「え?わたし?あ、ありがとうございます。」
戸惑ったようなそぶりを見せながらもサオリは花束を受け取った。
「みなさん。今のがカップル成立の瞬間です。」
カップル成立と聞いて男も女も盛り上がって来た。
「花束を受け取ったら自分も相手を好きだと言うサインで良いんだな。じゃあ断る時は花を受け取らなきゃ良いのか?」
アーサーが盛り上がっている男性陣を代表して聞いてきた。
「それはこれから実演しますから見ていてください。」
そう言ってオレは再びサオリの前に花束を掲げた。
「サオリさん。あなたの笑顔に惚れました。よかったらお付き合いしてください。」
「・・・・・・・・・・・・・」
サオリは無言で戸惑った表情を作っていた。中々の演技だ。
「ごめんなさい。」
ややあってサオリはオレ以上に深々と頭を下げて謝った。
「うそ。そんな。」
オレは演技で泣いて見せると店の外に向かって走り出した。
オレが泣いて走り出したので特に男性陣は混乱した。
「これは俺達の返答次第で女の子達を傷つけてしまうって事じゃないか。」
混乱する男性陣を代表してまたまたアーサーが聞いてきた。
「大丈夫。そんな事で傷つくような軟弱もんじゃないですからオレ達は。」
「おお!さすがだ!」
「やるー!」
オレの答えに安心して男性陣は盛り上がった。
「意中の男に花束を渡して受け取ってもらったらカップル成立と言うのはわかったけど、好きな男がかぶったらどうするのよ?」
さすがはリオ。鋭いな。こういうのは人気者に集中するんだよね。
「リオさん。鋭いですね。それも今から実演します。サオリさん。リオさんに告白してください。オレが横やり入れますから。」
「お、おう。」
オレから花束を受け取ったサオリはリオの前に歩み寄った。
「おーっと。サオリはリオに行った。そこへアメリから声がかかった。『ちょっと待った!』」
オレは自ら実況も入れて演技した。
「このように自分の好きな人に誰かが先に行ったらちょっと待った!と声をかけて自分も告白に参加します。二人に告白された幸せ者は好きな子の方の花束を受け取ってください。」
「二人とも好みじゃなかったらどうするんだ?」
オレ達美少女戦隊を相手に二人とも好みじゃなかったらどうするっていい度胸じゃないかアーサーの野郎。
「そん時は二人に向ってごめんなさいしてください。」
オレはひきつりながら答えた。
「と言うわけで最後に告白タイムがありますからみなさん心して飲んでください。あ、その前に第一印象で誰に決めたか見るのも面白いですね。幸いテーブルも四つありますから、男性陣は四つのテーブルに別れてください。」
「わかった。」
男性陣4人はそれぞれのテーブルに一人ずつ着いた。
「じゃあ、女性陣はとりあえず気にいった人のテーブルに着いて。あくまで第一印象だからそんなに深く考えなくていいよ。」
「えー!うそ!もう決めるの。恥ずかしい。」
ぶりっ子ぶっているリオだがその表情からやる気満々なのがくみ取れた。
「ちょっと待ってくれ。その前に俺達の自己紹介ぐらいさせてくれよ。」
アーサーの言う事ももっともだ。オレとしたことが若い男達を目の前にして焦り過ぎたか。ちょっと反省。
「す、すみません。オレ達ずっとダンジョンの穴倉暮らしだったもんで皆さんみたいな良い男を見るのは初めてでついがっついちゃいました。反省しております。そう言うわけで一番テーブルのアーサーさんから順番に自己紹介をお願いします。」
「うん。俺がアーサーだ。年は20で冒険者をしている。今日は恋人と言うより一緒に俺と戦ってくれるパートナーを探しに来た。かわいい魔法使いを募集中。よろしくお願いします。」
アーサーが立って自己紹介をした。
「おっと一番テーブルのアーサーさんはかわいい魔法戦士を希望だ。オレ達美少女戦隊にとって望む所だ。みなさん拍手。」
勝手に場を仕切っているオレだが、オレの言葉でみんな拍手喝采だ。
「えー。では二番テーブルのそこのあなた。自己紹介お願いします。」
「俺か俺はケーシー。年は19で相棒のアーサーと一緒に冒険者をしているぜ。俺の希望はかわいくてやさしい女の子だぜ。アーサーと違って普通の子が良いな。よろしくね。」
突然オレに指されてどぎまぎしながらケーシーは自己紹介した。
「おっと二番テーブルのケーシーさんは普通の子を希望だ。ガサツな冒険者の美少女戦隊に普通の子は果たしているのか。みなさん拍手。」
アーサーに劣らずケーシーもイケメンだ。もちろん拍手喝采だ。
「じゃあ、三番テーブルのあなたお願いします。」
オレはどこかで見た記憶がある男を指した。
「はい。私はレトと申しまして冒険者ギルドの職員をしていまして年は19です。私を選んでくれるようなやさしい女の子を希望します。」
「三番テーブルのイケメンはどっかで見た事があると思ったらいつもお世話になっている冒険者ギルドの職員さんじゃないか。これはオレ達美少女戦隊としてもぜひ仲良くなりたいぞ。みんな拍手。」
イケメンのうえに冒険者ギルド職員。もちろん拍手喝采だ。
「それでは最後に四番テーブルのあなた。自己紹介をお願いします。」
「あー。おいらはカボス。年は16でアーサー、ケーシーと一緒に冒険者をしているよ。今日は用事があってダンジョンに行ってなかったんだ。女の子はかっこいい女剣士さんが理想だよ。」
最期の子は見た目が若いと思ったらオレ達と年も変わらないじゃないか。
「最後のイケメン。カボスさんはかっこいい女剣士さんを募集中だ。これはオレ達美少女戦隊の事を言ってるのか。これは期待大だぞ。拍手。」
年も近いイケメン。拍手が一番大きい。こいつが男子一番人気か。
「美少女戦隊のみんな。意中の人は決めたかな?決めたら意中の人のテーブルに行って早速自己紹介してイケメンにアピールだ!」
「「「「「おう!」」」」」
返事は勇ましいが誰も動こうとはしない。しょうがないなあ。ここはオレが口火を切るか。
「じゃあアメリ行きまーす!」
そう言ってオレは男性陣のリーダーであるアーサーのテーブルに向かった。オレが動いたことで他の女性陣も恐る恐る動き出し始めた。
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