第289話 新パーティ(ダンジョン限定)
「イサキもクロエももう魔力尽きてきただろう?刀と剣を解禁して良いよ。」
イサキとクロエと別れる前にイーラム語でのアドバイスは忘れないぜ。オレは有能な指導者だからね。
「やったー。やっと私の相棒の出番がきたぜ。」
慣れない戦い方からストレスが溜まっていたのだろう。イサキは刀をぶんぶん振り回して喜んでいた。
「はあー。剣も疲れるんだよねー。」
一方でクロエの方は魔力枯渇の影響で大分鬱っぽくなっていた。魔力が尽きてくると精神的にも参って来るからね。
まあ人の事はどうだっていい。オレだってダンジョンの中に入ってから何もしていないから暴れたくてうずうずしていたんだ。セオリー通りならオレが魔法使い役に回るところだけどオレも剣攻撃に参加するぜ。
「そしたら今日はこのままボス部屋まで行こうか。」
「はい。良いですよ。」
帰ろうと思ってたけどもう少し彼らに付き合ってみるか。オレはアーサーに了解の返事をした。
アーサー、オレ、ジュンの順番でダンジョンを歩くことになった。イサキ達のチームとはここでお別れだ。
「アーサーさん。止まってください。ホーンラビットが二匹います。」
「え!どこだ?俺には何も見えないぜ。」
オレの警告にアーサーは足を止めた。
「ほら前方の木の陰に身を潜めています。」
「あの木か。わかった。」
アーサーは剣を抜きながら走り出した。
まずはアーサーのお手並み拝見といくか。オレとジュンは後ろで待機だ。
「でやー!」
大声を上げて近づくアーサーに二匹のホーンラビットはたまらず飛び出した。なるほど大声でホーンラビットを威嚇して不意打ちを防いだのか、やるじゃないか。
一匹目を軽く斬り払った。なかなかやるじゃないか。だが敵は二匹いるんだぜ。二匹目は案の定斬り漏らした。
「アメリ!行ったぞ!魔法!」
「おう!」
アーサーがアドバイスしてくれたけどここは魔法を撃つまでもないだろう。オレは向って来るホーンラビットに対してすれ違いざまに刀を抜いた。いわゆる居合抜きだが神速の抜刀だ。常人の目には何も映らないだろう。
「何だ?今のは。魔法か?ホーンラビットがいきなり真っ二つに。」
案の定アーサーは何が起こったのかわからなかったみたいだな。わからなかったけど中々の剣技からしてC級の上位と言う所か。
「え!ただの居合抜きですよ。」
そう言ってオレは今度はゆっくりと刀を抜いて見せた。
「目にも留まらない居合抜きってわけか。アメリ。お前みたいな凄腕がなんでこんな所にいるんだ。」
「何でって。そりゃ冒険者の端くれですからね。」
「いや。俺の言いたいのはここみたいな初心者向けのダンジョンにお前さんの実力じゃ合わないって事を言いたいんだ。」
「あーそう言う事ですか。それはこいつらの訓練のためですよ。こいつらは本当に初心者冒険者ですからね。」
そう言ってオレはジュンの方を差した。
「と言う事はお前さんはこの子達の師匠って事かい?」
「師匠じゃないですよ。ただの友達ですよ。友達同士で腕を磨き合ってるんですよ。」
「そうか。弱い女の子達かと思っていたらとんでもない化け物がいやがった。」
「化け物って何ですか。こんなかわいい少女をつかまえて。怒りますよ。」
「悪い。悪い。はっ。そう言えば女だけの凄腕のパーティ。聞いた事がある。たしか美人戦隊。」
「いえ。美少女戦隊です。」
「そう。それだ。それだ。お前さん達は美少女戦隊なのか?」
「そうです。私達が天に代わって悪を討つ正義の味方美少女戦隊です。」
「あっという間にA級まで昇りつめてあっという間にいなくなった幻のパーティ美少女戦隊。生きていたのか。」
「酷いな。勝手に殺さないでくださいよ。全員元気に生きてますよ。」
「ごめん。ごめん。凄腕の冒険者でも全滅ってのはよくある話だから見なくなるとそう思っちゃうんだよ。」
そう言う話はオレ達も聞いた事がある。冒険者ギルドで一二を争うようなパーティが現れなくなったと思ったらダンジョンで全滅していたとか。それくらい冒険者とは過酷で危険な職業なのだ。
「それでオレ達が美少女戦隊とわかった所でどうしますか?オレ達との同行を止めますか?」
「とんでもない。俺はあんたらのファンなんだぜ。噂話だけであこがれてたんだぜ。それが今本人達が目の前にいるんだぜ。絶対に付いていくに決まってるじゃないか。」
「そ、そうですか。」
実力を隠す必要がなくなったオレ達はあっと言う間にボス部屋を攻略してダンジョンの入り口まで戻って来た。
「今日は幻の美少女戦隊とご同行できて俺達も得る物が多くあったぜ。このまま別れるのも名残惜しいな。そうだ冒険者ギルドに行った後に飲みに行かないか?」
「良いですよ。でも2対4じゃ数が合いませんね。誰か知り合いを二人呼んでこれますか?独身の若い男限定で。」
「ああ、じゃあ知り合いの若い奴二人を呼んでこようか。」
「その人達は良い男ですか?」
「もちろん良い男だよ。俺ほどじゃないけどね。」
「決まりですね。4対4で合コンしましょう。」
「合コン?合コンって何だ?」
「合コンと言うのはですね。男と女がプライドを賭けた戦いですよ。勝者は恋人を得て敗者は何も得られない。厳しい戦いですよ。」
オレは合コンについて持てる知識をフル動員して説明した。
「合コン。良いよね。」
アーサーは鼻の下を伸ばしてにやついていた。大方もう恋人ができたとでも思っているんだろう。甘い。甘いぞ。合コンはオレ達女に主導権があるんだぞ。恋人になって欲しかったらそれなりにオレ達にアピールしてもらわんとな。ぐふふふ。
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