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第284話 食い物の恨み

 



「この野郎!私のサンドイッチ!」


 盗られたのはイサキのサンドイッチだったみたいだ。食い物の恨みは恐ろしいんだぜとばかりにイサキがいきり立って空に飛び立った。


「あっ!イサキ!」


 オレがあわてて声をかけようとしたがもう遅い。あっという間に上空の二匹の魔物の元へと飛んで行ってしまった。


「イサキさんもしょうがないですね。でも助けに行かなくて良いんですか?アメリさん。」


「ああ、大丈夫だろう。エイミー。鑑定した所、ブラックイーグルLV5が二羽だからイサキの敵ではないだろう。それにろくに飛べもしないオレ達が行った所で足手纏いになるだけだぜ。」


「まあそりゃそうですよね。」


「そう言う事。オレ達は飯でも食いながら高見の見物と行こうぜ。」


 突然始まった空中ショーにオレ達は見入った。真剣に戦っているイサキには悪いが大空を駆け巡る空中戦は見ていても面白かった。


 まさか自分らのテリトリー(上空)に来られる者などいないと油断していたブラックイーグルは簡単に背後を許してしまった。


「ファイアーボール!」


 上手い。空中戦の戦いのセオリーは敵の背後から攻撃する事だ。見事にブラックイーグルに着弾した。


 突然の火の玉の弾丸を背中に受けたブラックイーグルは燃えながらふらふらと失速して落ちてきた。地上に落ちてくればオレ達のテリトリーだ。


「そしてカスミ斬り!」


 待ってましたとばかりにエイミーが駆け寄り、かっこいい必殺技でとどめを刺したが、普通に斬っても一緒だっただろう。この中二病患者め。


 仲間がやられた事で戦意を無くした残り一羽のブラックイーグルは突然方向転換して逃げ出した。


「逃がすかよ!」


 イサキも方向転換して追おうとした。


「イサキ!深追いするな!サンドイッチはまだいっぱいあるから!」


 オレが地上から命令したが、アドレナリン充満して興奮しているイサキははるか下界からのぬるい命令など当然聞く耳は持っていなかった。


 イサキとブラックイーグルは深い谷を越えて向こうの山にまで行ってしまった。


「あー。もうしょうがないなあ。イサキは。」


「本当にそうですよね。もうイサキさんの分まで食べちゃいましょうよ。」


「うん。アイテムボックスにまだまだたくさんあるから、全部食べても良いよ。エイミー。」


 エイミーは体の割には大食いだった。そしてクロエも初めてのサンドイッチがお気に召したのかいっぱい食べていた。



 *



「イサキさん。戻って来ませんね。」


 サンドイッチをたらふく平らげ、まったりとジュースを飲みながらエイミーが言った。


「うん。ちょっと遅いね。」


 クロエの言う通り、イサキがブラックイーグルと戦闘していたにしても遅い。


「もう。しかたないなあ。みんなで迎えに行くか。」


「ええ。そうですね。腹ごなしに空を飛ぶのも良いかも。」


 オレ達は谷を越えてイサキの向かった方へと飛んだ。飛んだと言っても失速して落ちない程度のスピードしか出せないが。イサキみたいに大空を自由自在に駆け巡るにはまだまだ技術不足だった。


「この山でしたよね?」


「うん。この山だったよ。あ!」


「どうしたんですか?アメリさん。」


 オレがすっとんきょうな声を出したのでエイミーが心配して聞いてきた。


 オレ達がこの山の上空に来た途端に不思議な力で結界が張られたのをオレは鑑定で察知していたのだ。


「しまった。どうやら閉じ込められたみたいだな。オレ達は。」


「え!閉じ込められたって何もないじゃないですか。青空しか見えないですよ。」


「見えない結界を張られたみたいだよ。」


 そう言ってオレは上に向って、アイテムボックスから取り出した石を投げた。石がなにもないはずの空中で砕け散った。


「え!まさか。」


 そう言ってエイミーがゆっくりと上昇した。


「あ。ここに見えない壁がずっとある。」


 見えない結界をエイミーがペタペタと触った。


「無駄だと思うけど、魔法を撃ってみるか。ファイアーボール!」


 オレが上に向って撃った魔法ファイアーボールも見えない壁に当たって砕け散った。


「サンダービーム!」


 エイミーの魔法サンダービームもむなしく跳ね返された。


「私の剣も跳ね返されたわ!どうしたら良いの!助けて!アメリ!」


 クロエがパニック状態になりかかっていた。


「落ち着け!クロエ!パニックになるなっていつも言ってるだろう!」


「は、はい!すみません!」


 オレの一喝でクロエも少しは落ち着いたみたいだったが、これはオレ自身にも向って言った言葉だ。


「とりあえず山の麓に降りてみようか。イサキのバカがいる所に。」


「「おう!」」


 イサキが山の麓で呑気に手を振っているのをオレは見つけていたのだった。




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