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第281話 ありがとう。ありがとう。

 




 私は幽霊ファントム。ダンジョンの虜になった悲しい幽霊ファントムだった。あのダンジョンで死んだ者はダンジョンに取り込まれて幽霊ファントムとなり、未来永劫冒険者達を脅し襲い犯し続けるはずだった。いくら幽霊ファントムとは言えお先真っ暗よね。将来を絶望して死にたくなっちゃうよね。もう死んでいるけどさ(笑)。


 そんな私を救ってくれた神のような人いや人達がいたの。そうアメリを始めとする美少女戦隊のみんなよ。アメリの使い魔になる事で幽霊ファントムの私でも実体を取り戻す事ができたの。実体があるって事は生き返ったって事よ。これで私は自由よ無敵だわと思っていたらいろいろと制限があるみたいね。世の中は旨い話ばっかりじゃないって事ね。先輩の使い魔の幽霊マームが教えてくれたわ。まずこの体は本当は生身の体じゃなくて変身した体で能力もLV1まで落ちてしまっている事。主人マスターであるアメリの命令は絶対である事。魔力の関係でアメリと離れているとLVの低い今は体を保てない事。


 幸いにして美少女戦隊には私を魔物と見下して粗末に扱う者は誰もいないわ。一人の人間として平等に接してくれるわ。先輩の幽霊ファントムファントムパイレーツを見慣れているのもあると思うけど。


 でもやっぱり私は魔物なのよ。故郷のイーラムには私の居場所はもうないのよ。死人の私にはね。自分の葬式に自分が出る前代未聞の事を今しているの。最後にみんなに隠れてお別れしようと思って。幸いにしてこの国の女の人はベールで顔を隠す習慣があるから後ろのほうにいれば知り合いにもバレて無いみたいよ。


 砂漠の狼のみんなが取り仕切ってくれているようだけど、ペグーの冒険者も何人か来てくれているみたいね。ありがとう。ありがとう。私なんかのために集まってくれて。私の体は遺跡のダンジョンで荼毘に臥されて骨だけになってペグーに帰って来たみたいね。骨の入った壺を墓の中にアリが入れてくれたわ。


 アリ、号泣しているわ。ありがとう。ありがとう。最後も世話になったよね。本当に良い男。私、密かに好きだったんだよ。でも告白する前に殺されちゃったわ。それだけが心残りね。でもそんなに泣かないで心配しなくても私はここにいるから。


 アーシャ、あんたもそんなに泣かないで。私なんかのために泣く事ないのよ。女だからって舐められないように二人でがんばってきたよね。もう私はあんたを助られないの。ごめんね。ごめんね。あんたもアリの事を好きだったのは知っているよ。アリもたぶん好きだよ。二人でこれから仲良くしてね。


 アッサム、必死で涙をこらえているんだね。男らしいね。でも泣いてもいいんだよ。泣きたかったら泣けばいいんだよ。あんたに告白された事もあったよね。ごめんね。ごめんね。答えてあげられなくて。でもこんなすぐ死んじゃうような女じゃなくてもっと良い女が現れるよ。きっと。


 ハリードも男泣きしてくれているんだ。ありがとう。ありがとう。あんたにはずいぶん助けられたよね。目立たないけどまさに縁の下の力持ちって感じで感謝しているわ。重ねてありがとう。ありがとう。あんたに恩返ししたいいけどそれはもう叶わないみたい。


 ギルド長を始めとするギルド職員さん達、花をありがとう。冒険者のみなさんも花をありがとう。


 墓が閉じられて神父さんがお祈りをささげているわ。天に召されますようにってみんな祈ってくれているけど、残念ながら魂は天に昇る事もなくここにいるのよ。


 神父さんのお祈りが終わると一人また一人と帰って行ったわ。最後まで残ったのは砂漠の狼の四人と私とアメリとサオリだけね。


「サリー?」


 油断したわ。アリは魔物感知能力があるんだったわ。幽霊ファントムである私に気付いたみたいね。


 私はここよ。走り出そうとする私をアメリが止めたわ。そ、そうね。今埋葬されたはずの人間がのこのこ現れるのはおかしいし恐怖だよね。私は必死でその場に踏みとどまったわ。


「え!サリー?サリーは今埋葬したじゃない。何バカな事を言ってるのよ。」


 私達の方を見たアーシャが言った。


「そうだよ。あの格好は王国人の美少女戦隊の人達じゃないか。サリーの葬式に来てくれたんだよ。ありがとうね。」


 アッサムもこちらを向いて言った。アメリに服をもらって着替えていたおかげで正体がばれなかった。良かったのか悪かったのか分からないが。


「そうか。美少女戦隊のみなさんか。お世話になった。」


 まずい。アリとアーシャがこちらにやって来る。


 私は無言でアメリの方を伺った。


「しょうがないね。最後に一言だけお別れの言葉言って良いよ。」


 アメリが小声で言った。それを聞いた私が言う言葉は一つだ。


「さようなら!ありがとう!ありがとう!」


 私は人生の中で一番の大きな声で叫んだ。


「「「「サリー!」」」」


 私に気付いたみんなが走り出した。


「ワープ!」


 サオリの非情な魔法が私を砂漠の狼のみんなから遠ざけた。


「な!消えた!今の消えた3人の中にサリーがいたよね?」


「うん。きっとサリーは遠い所に行っちゃったんだよ。それで最後の挨拶をして行ってくれたんだよ。」


 詰め寄るアーシャにアリは答えていた。


「『ありがとう。ありがとう。』かサリーらしいや。こちらこそありごとうね。うおーん!」


 アッサムが堪え切れずに泣き出した。


 砂漠の狼の4人はサリー達3人の消えた方を見つめていつまでも泣いていた。




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