第279話 決着
「「ぎゃー!」」
マームとアーリンの断末魔の悲鳴を聞いたリリス軍団はしばらく沈黙した後に大いに盛り上がった。
「「「「「やった!」」」」」
「やったー!ざまあみろ!」
「お前らなんか敵じゃないぜ!」
「えい!えい!おー!」
勝どきを上げている奴までいた。
そんな中でもリリスは警戒を解いてはいなかった。さすがは一軍の将いやダンジョンマスターであった。
「みんな!盛り上がるのはアメリ達の死体を確認してからよ!」
「あっしが確認してきますぜ。」
そう言って切り込み隊長らしき幽霊が恐る恐る落とし穴を覗きに行った。
落とし穴の底には哀れ串刺しとなった少女たちが転がっていた。
「全員串刺しになっていますね!おそらく死んでいるんじゃないでしょうか。」
斬りこみ隊長の報告を聞いた残りの幽霊どもは歓声をあげながら落とし穴へと殺到した。みんな自分の目で勝利の証を確認したかったのである。ただでさえ狭い通路なのに我先に見ようと殺到したから押し合いへし合いの団子状態となってしまった。
「超サンダー!」
死体のはずの一人の少女が突然呪文を唱えた。
さっきまでアーリンが撃っていたサンダーとはけた違いの大きさと威力の雷が一か所に集中していたリリス軍団を襲った。さすがの半不死身の幽霊達でもこれだけの威力の魔法が直撃すれば生きてはいない。いやこの世に姿をとどめてはいられない。ほとんどが一瞬で蒸発してしまった。残ったのは総大将のリリスをはじめとする幹部のファントムロード達10人ほどのみであった。残ったとは言え全身がマヒして立っているのがやっとと言う所だった。
超サンダーの炸裂に続いて死んでいたはずの5人の少女たちが穴から飛び出した。
「「サンダー斬り!」」
残った幹部達も抵抗すらできずに斬り伏せられ次々と昇天していった。最後にリリス一人が残ったが強いから残ったと言うよりもあえて斬らずに残されたと言う形だった。
「じゃあ死ね!」
「待て!待て!待て!」
イサキがリリスを斬ろうとしたのをアメリが止めた。
「なんで?どうして止めるの?」
「クロエの呪縛を解いてもらってからでも遅くないよ。イサキ。」
「あ。そういえばそうだ。」
イサキは刀を収めた。
「リオ。手伝って。」
そう言ってアメリはアイテムボックスから取り出したロープでリリスを縛った。このロープにはアメリの魔力が込めてあり幽霊のリリスであっても逃げ出す事はできなかった。
「アーリン。マーム。クロエを連れてきて。」
「はい。」
「おう。」
アーリンとマームの二人は縛られて転がされていたクロエのロープをほどいた。さすがにクロエはもう攻撃してはこなかった。どうやらもう操られてはいないみたいだった。
アーリンとマームがクロエを連れてくると、
「さあ、クロエの呪縛を解いてもらおうか。」
アメリがリリスを追い込み始めた。
「そんなの私を殺さない限り無理よ。」
「水煙剣!」
あっという間にイサキがリリスの首をはねた。リリスも青白い光の粒子となって昇天した。
「あ、バカ。イサキ。リリスには色々と聞きたいことがあったのに。」
アメリがイサキの先走りをいさめたが後の祭りであった。こうしてリリス軍団対美少女戦隊の戦いは美少女戦隊の大勝利で幕を下ろした。
ちなみにクロエはこんどこそはダンジョンから出られて大喜びであった。
*
「ふーん。そんな事があったんだ。わたし達を差し置いてずいぶんと楽しんだみたいね。」
アメリ達6人を迎えに来たサオリはアメリの話を聞いて言った。
「じゃあ地下都市のダンジョンはもう使い物にならないの?」
「たぶん大丈夫だと思うよ。ダンジョンコアは潰してないからね。」
アメリの言葉通り子猫のミーちゃん探しの依頼を出した家には翌日ダンジョンマスターのリリスが白々しくもいた。
「あ、リリス!この野郎!」
「よしな!クロエ!」
アメリの一喝でクロエは剣を収めた。
「リリスさん。オレ達はもうこのダンジョンには手を出さないよ。その代わりにそれに見合った物をもらいたいんだけど。」
「わかってるよ。ほらお宝を集めたから持って行きな。」
そう言ってリリスは黄金や宝石の詰まった宝箱をいくつも差し出した。
「まあクロエに対する迷惑料としてありがたくいただくよ。」
宝箱はぎっしりと詰まっていて重いがアイテムボックス持ちのアメリには関係ない。次々とアイテムボックスに収納した。
「じゃあ帰ってクロエの歓迎会だ!」
「「やった!」」
イサキとサオリがハイタッチをして喜んだ。
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