第275話 美少女戦隊VSリリス軍団
「ばーか。バーカ。そのままはいどうぞって帰すと思ったの。甘いわね。くっくっく、くわっはっはー。」
どこからかダンジョンマスターリリスの高笑いが響き渡った。
くそー。この腐れ外道め。もう許さんぞ。ぶっ殺してやんよ。あんな事してこんな事して辱めてやる。
頭に来たオレ達が怒りに燃えていると、
「今の感情は良いね。怒りマックスって所ね。ごちそうさま。おかげでダンジョンのみんなはお腹いっぱいになって元気がでたよ。はっはっはっはっは。」
オレ達を挑発するダンジョンマスターリリスの高笑いが聞こえた。
「こいつ!やっぱりあの時ぶっ殺してやれば良かったんだよ!」
「ああ、オレが甘かったよリオ。いたずらっ子にはきついお灸をすえてやらんとだめみたいだな。望み通りぶっ殺してやろうぜ!」
「そうよ。ぶっ殺しに来なさいよ。首を長くして待ってるわよ。」
どこかでオレ達の声を聞いているのであろう、リリスがオレ達の会話に入って来た。
「どこだ!どこにいやがる!」
激高したクロエが剣を抜いた。
「ここか!」
有ろうことかその剣をオレに向って振り下ろしてきた。
咄嗟の事でさすがのオレも不意を突かれたが、所詮はレベル1の剣技。余裕でかわせた。
かわされても尚も斬りつけようとするクロエはリオに取り押さえられた。
「どうしたの?クロエ。」
「リオ。クロエは操られているみたいよ。面倒だから縛っといて。」
オレはロープをアイテムボックスから取り出すとリオに渡した。このロープはファントムでも縛れるように魔力をたっぷりと込めてあった。
かわいそうだがクロエはここに置いて行くしかないだろう。リオとアーリンはクロエを縛ると道の端に転がした。
「まあクロエは魔物に襲われてもケガもしなけりゃ死にもしないだろうからここに置いていっても大丈夫だろう。それよりクロエを操っている奴を潰さんとな。」
「それでどうやってリリスを探すのよ。アメリ。」
「うーん。オレの鑑定でもファントムとしか出ないから地道に探していくしかないなあ。とりあえずまた一軒一軒お宅訪問して行こうか。リオ。」
「あ、どうやらその必要はないようよ。」
リオが言うようにその必要はないようだった。なぜなら各家から武器を携えたファントムどもがぞろぞろと出てきたからだ。
「もうめんどくさいから総力戦で当たらせてもらうよ。あんたらにおもてなしはもう無しね。全力で排除させてもらうわよ。悪く思わないでね。あ、死んでも大丈夫よ。安心して。そこのクロエみたいに私の手下として使ってあげるわ。あんたらは強いから特別に幹部にしてあげても良いわよ。」
ファントムどもの先頭に出てきたリリスがオレ達を挑発した。相変わらずむかつく奴だけど、これってチャンスじゃない。
「サンダービーム!」
得意げにしゃべっているリリスにオレは魔法を撃った。
「ギャー!」
悲鳴をあげてリリスは絶命した。ボスのリリスは光の球になって消えたが残りのファントムどもは平然としていた。
「ちょっといきなり攻撃ってないんじゃない。かわいそうに影武者1号ちゃんは登場したとたんにやられちゃったじゃないの。まあ良いわ。ちょうどいい開戦の合図になったわ。じゃあ次はこちらが攻めさせてもらうよ。」
どこからか本物のリリスの声が聞こえた。それと同時にファントムどもが道の端に避けた。ファントムどもの後ろからサンドウルフの群れが突進してきた。その数30匹はいるだろうか。もう魔法を唱える余裕はない。これは斬って斬って斬りまくるのみだ。幸いにしてサンドウルフはファントム系の魔物と違って生身の魔物だ。普通に剣の攻撃が通じる。しかもここは地下都市の狭い通路だ。サンドウルフの群れに囲まれる心配もない。前に出たオレとリオは次から次へと襲い掛かるサンドウルフを斬り伏せた。
オレとリオで10匹は斬り伏せた頃にはさすがのサンドウルフ達もビビって攻撃の手を止めた。遠巻きに唸り始めた。
「よし!魔法のチャンス!」
オレが手を振って合図を出すと後衛組のイサキ、アーリン、マームが一斉に呪文を唱え始めた。
「水鉄砲!」
「サンダービーム!」
「ファイアーボール!」
オレとリオが後ろにさがると同時に3人の魔法が発射された。
魔法を撃ち終えた3人は刀と剣を抜いて走り出した。オレとリオは代わって呪文を唱えた。魔法は便利で有効な武器であるが発射まで時間がかかる。その弱点を補うためにオレが考えた作戦である。全員が剣も魔法もエキスパートであるオレ達美少女戦隊ならでの作戦だ。
「な!サンドウルフ部隊があっという間に、さすがやるわね!じゃあこれはどうかしら?」
リリスの声がどこからか聞こえてきた。それと同時に新たなサンドウルフの群れが出てきた。何匹来ようとやってやるだけだぜ。イサキ、アーリン、マームの3人が刀と剣で斬り伏せた。後衛に回っていたオレとリオは呪文を唱えた。そろそろ超サンダーでもぶっ放して壊滅させてやろうかと思っていると、
「アメリ後ろ!」
リオの声に振り返るとサンドパンサーが何匹かいた。おそらくは身軽なサンドパンサー達は屋根を伝ってオレ達の後ろに回ったのだろう。挟み撃ちかやるな。前の敵ばかりに気を取られていたら不意打ちを喰って全滅だったぜ。だが索敵能力に優れたオレとリオには通じないぜ。
「リオ前は3人に任せてオレ達は後ろだ!」
「おう!」
超サンダーの呪文唱えている暇はないか、ならこれだ。
「サンダー!」「サンダー!」
リオも同じことを考えていたようでサンダーがかぶってしまったが、これはサンダーの重ねがけになったから結果良しであった。直撃を受けた3匹を即死させたが残りの5匹は死んでいなかった。だがオレとリオの魔法が至近距離で連続炸裂したのだ。死なないまでも体がしびれてスタン状態になっていた。チャンスだ。
オレとリオは刀と剣を振りかざして走り寄ると楽々と生き残ったサンドパンサー達を斬り伏せた。
「よし!そのまま前に戻って攻撃だ!」
「おう!」
後方のサンドパンサーを壊滅させるとオレとリオは前線に復帰した。イサキ、アーリン、マームの3人は次々と襲い掛かるサンドウルフに善戦していたが、先程と違い徐々に押されていた。
先程の群れと違って今度の群れは攻撃が統率されている。これは群れを率いるリーダーがいるな。鑑定するまでもなかった。一際大きなウルフが後方に控えていた。あのビッグウルフが群れを統率しているに違いない。
「リオ!奥の大きい奴!」
「了解!」
オレの指示でリオは呪文を唱え始めた。呪文を唱えたリオを援護すべくリオの前に出た。これでイサキ達3人が斬り漏らしたサンドウルフにリオが襲われることも無くなった。リオさんよ。呪文に集中してくれ。そして撃つんだ。あの魔法を。
「イサキ!アーリン!マーム!さがって!リオが魔法を撃つよ!」
オレは最前列の3人に声をかけた。
「え!ちょ、ちょっと!」(アーリン)
「さがれって!無茶言うな!」(イサキ)
「無理!無理!」(マーム)
戦闘中の3人に急にさがれって言っても無理か。
「じゃあ10秒後に超サンダーが発射されるよ!」
「「「なにー!」」」
リオの必殺技超サンダーはインパクト抜群である。3人はあの威力と味方がいても撃つ容赦なさを思い出したのであろう。徐々に後ろにさがって来た。よし!チャンスだ。
「今よ!リオ撃って!」
「おう!超サンダー!」
超サンダーがビッグウルフを中心として落雷した。爆心地のビッグウルフを始め数匹のサンドウルフが一瞬で消滅した。相変わらずのえぐい威力だ。直撃を免れたサンドウルフ達も電撃と衝撃にやられボロボロだ。オレ達にも少なからず衝撃は伝わっているが何度も何度も喰らっているから耐性ができている。
「チャンス!サンドウルフどもは痺れてるぞ!」
「「「「おう!」」」」
痺れて動きの止まったサンドウルフなんてただのでくの坊だ。オレ達は易々とサンドウルフの群れを壊滅させた。
「おい!リリス!聞いてるか?今の魔法はリオだけじゃなくてオレもアーリンも撃てるんだぜ!次はお前らの本体に撃つぞ!斬っても死なないお前らファントムだって喰らったら死ぬぞ!どうだ!降参すれば痛い目に合わないぞ!そのファントム達だってほとんど戦闘員じゃないんだろう?かわいい部下達にも痛い目に合わせたくないだろ?」
「降参?ふん!冗談じゃないわ!こっちにはまだとっておきの作戦があるのよ!総員退却!」
リリスのとっておきの作戦?でファントムの集団は逃げ始めた。
「アメリ!逃げ始めたよ!」
先頭のイサキに言われるまでもなくファントム軍団は逃げている。降伏しない以上は追撃するしかないだろう。
「よし!みんな!追うよ!相手はファントムだからサンダーソードの準備をして!」
「「「「おう!」」」
イサキを先頭にしてファントム軍団を追撃開始した。もちろんいつでもサンダーソードを出せるように呪文を唱えながらである。
「あ!みんな!止まって!」
異変を素早く感じ取ったオレの声もむなしく突然地面が抜けた。咄嗟の事でオレとリオは大穴の縁にしがみつけたが前の3人は穴に落ちてしまった。
「おっと残念ね。今のでも落ちないなんてなんてしぶといの。じゃあこれでどうかしら?ファイアーボール!」
突然空いた大穴の縁にぶら下がるオレとリオに向って火の玉が襲って来た。
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