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第270話 サリー2

 



「じゃあ、今からサリーさんに会いに行きますか?」


「サリーに会いに行くのは良いけど、俺達を襲った黒い魔物は大丈夫なのか?」


 オレはリオ、アーリン、マームに声をかけて徴収すると、アリを呼び出したが、アリの言う通りだ。まずは黒い魔物の情報を収集せんといかんな。


「その黒い魔物ってどんな奴なんですか?」


「一瞬で襲われたからよく見てないけど、全身真っ黒でサンドパンサーみたいな感じだったな。」


「要するに黒いサンドパンサーって事ですか?」


「まあそんな感じだけどサンドパンサーとは比較にならないほど大きかったな。あ、そうそう首のあたりに赤い物が、首輪みたいだったな。」


「赤い首輪ですか。」


 なんか嫌な予感がするな。とりあえず獣系の魔物って事でいいか。そしてここの住人ファントム達が恐れている事から間違いなくファントムだろうな。獣系のファントムか、めっちゃ素早いんだろうな。


「イサキ。イサキちゃん2号の準備をして。アーリン。みんなに補助魔法をかけて。」


「おう!」


「わかりました!」


 これで戦闘の準備は完了だ。これでオレ達の即死はないだろう。


「じゃあ、今度こそ行きますか。」


「「「「おう!」」」」


 例によってオレが斥候になって階段を下りた。オレは安全を確かめるとみんなを呼んだ。


 サリーはすぐに見つかった。通路で一人ただずんでいた。周りには魔物の気配はなかった。


「サリー!」


 アリが呼び掛けた。


「あ、アリ!それに美少女戦隊のみんな!待ってたのよ!私ひとりじゃあの魔物はやっつけれないわ!」


 サリーはこれから未来永劫敵わない敵の黒い魔物と戦い続けるんだろうな。戦うたびに死に、そして蘇り、また死ぬ。サリーの運命を思うと泣けてきた。


「サリー!お前はアメリ達の仲間になれ!仲間になるしかないんだ!」


「え!急に何言ってんの!アリ!嫌よ!私は砂漠の狼よ!みんなを裏切れないわ!」


 アリも単刀直入すぎ、説明もなしで言ったら普通こうなるよね。


「サリーさん・・・・」


「ちょっと待って!アメリ!私が説得するわ!」


 説明しようとしたオレの言葉をマームが遮った。


「ま、魔物!魔物がいるわ!」


 マームはいつの間にか変身をといて本来の姿ファントムに戻っていた。


「失礼しちゃうわね!人を魔物扱いして!サリー!あなたの姿もみんなからはこう見えるのよ!」


「え!」


「現実を直視しなさい!自分の手をよく見てみなさい!」


「あ!透けてる!わ、私、魔物になっちゃったの!」


「そうよ!あなたは未来永劫ここ(ダンジョン)から出られないのよ!」


「そんな!」


 サリーは頭をかかえてうずくまった。説得するはずが絶望させてどうするんだ。マームさんよ。


「でも安心して魔物のあたし達でも自由に行動する方法があるの。」


「それは何?」


「簡単な事よ。アメリの仲魔になりなさい。」


「そんな簡単な事で。でもどうして?」


 仕方がないな。ここからはオレが説明するか。


「サリー、まあ聞いて。人は普通死ぬと、その魂は天界に召されるの。でも極たまに魂が地上に縛り付けられる事もあるの。サリー、あなたやマームのようにね。地上に未練があった時ね。まあ、あなたの場合は未練と言うよりダンジョンに縛り付けられているみたいね。

 その魂が実体を持った形が幽霊ファントムなのよ。実体を持ったおかげでしゃべる事も剣を持つ事すらできるわ。それに死んでも、幽霊に死ぬはおかしいかもしれないけど、翌日には復活できるわ。ある意味不老不死でうらやましい事なんだけど。でもたった一つ不都合があるの。死んだ場所に縛り付けられるって事ね。マームの場合は海で、あなたはこのダンジョンにね。あなたもここのダンジョンの住人達を見たでしょ。彼らは自分が死んだ事も気づかずに何百年も同じことを繰り返しているの。あなたもこれから毎晩、黒い魔物に挑み、そして殺されるでしょうね。何百年も。何千年も。もちろんこのマームも何百年も海の上に漂ってたのよ。」


「そんなの、嫌に決まっているじゃないの。アメリ。あなたなら何とかできるんでしょ。お願いします。」


 そう言ってサリーは深々と頭を下げた。


「その何とかだけど、オレと従魔契約を結ぶ事なんだ。」


「従魔契約ってアメリ、あんたティーマーなの?」


「うん。そうみたいなんだけど。ティーマーを知っているのなら話は早いな。サリー、あなたはサリーを捨てて生まれ変わって欲しいな。」


「私が私を捨てるって?」


「そう。オレと従魔契約を結んだ瞬間からあなたはサリーでなくなるの。サリーでない以上は砂漠の狼とも関係ないわ。」


「い、良いわ。砂漠の狼のサリーは遺跡のダンジョンで死んだのよ。さあ、アメリ。私を生まれ変わらせて。」


「本当に良いんだね。どうなっても知らないよ。」


「早く私の気が変わらない内にお願い。いやお願いします。」


「そうね。じゃあ、あなたの名前はたった今からクロエよ。クロエ。返事をして。」


「は、はい。」


 サリー改めクロエは返事をした。


「はい。これで従魔契約は完了よ。」


「え!え?何も変わってないじゃない。もっとこう光ったりはしないの?」


「そんなもんだよ。従魔契約なんて。まあ、オレの方はごっそり魔力をクロエに奪われて死にそうなんだけどね。」


「え!大丈夫なの?それよりも人間に戻ってないじゃん。人間に戻れるんじゃないの?」


「あー。人間に化ける方法はそこのマームに聞いてよ。」


「ちょっとアメリ。化けるって何よ。本来の姿はこっちなんだから。」


 そう言ってマームは人間の姿に戻った。


「クロエ。こっちにおいで。」


 マームがクロエにいろいろとアドバイスしてくれたおかげで、クロエも見事人間に化ける事ができた。


「やった。これで私も人間に戻れたわ。」


 クロエは喜び勇んで階段を登ろうとしたが、なぜか不思議な力が働きそれを拒んだ。


「どうした?サリーじゃなくてクロエ。」


 急に立ち止まったクロエに後ろのアリが声をかけた。


「登れないの。これ以上進めないの。アメリ。前と一緒じゃないの。どうして?人間になれたんじゃないの?」




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