第268話 昼間っからお酒?
「あれ!この子ミーちゃんじゃないわ。私のミーちゃんは赤い首輪をいるのよ。この子の首輪は橙色じゃないの。」
「「「「「「「「え!」」」」」」」」」」
衝撃の発言だった。橙色?そう言えば正確には赤色とは言えないかも。でも普通はこれも赤色だよね?
「赤って。血のような真っ赤て事なの?」
「は、はい。血のような真っ赤です。」
オレが問いつめると少女は申し訳なさそうに答えた。
オレは少女とのやりとりを王国人のリオ達にも説明してやった。
「アメリ。なんか勝負する気が失せたよね。」
「そうだね。リオ。勝負は取りやめにしてゆっくりとやろうか。」
勝負のやる気の失せたオレ達はがっくりとして少女の家を出た。黒猫探索を止めたリオ達もお宅訪問に切り替えたみたいだった。それでオレ達は二手に分かれてお宅訪問をすることになった。
「黒猫よりも黒い魔物をなんとかしてくれよ。」
少女の家を出てから聞き込みを続けていたが気になる情報が出てきた。
「黒い魔物って?」
オレはその家の住人の男に聞いた。
「ああ、最近夜になると黒い豹のような魔物が出るんで危なくて外出もできないんだよ。」
「黒豹ってサンドパンサーじゃないんですか?」
「もっと大きくてもっと狂暴なんだよ。大体サンドパンサーは黒くないしよ。」
夜外出できないってお前らは家から出られるのかよ。魔物が跳梁跋扈するダンジョンで魔物が魔物を怖がるなんて変な話だけど、この人達は自分は人間だと思ってるから仕方ないか。
「残念ながらオレ達は夜は仕事してないんですよ。」
「そうか。そりゃ残念だ。」
オレ達はその男の依頼を断って家を出た。さすがに深夜の残業はする気がしないからね。オレ達美少女戦隊は半日しか働かない超ホワイト企業だからね。
その後もめぼしい情報も得られずにイサキ達と合流した。イサキ達も黒い魔物が夜に出ることぐらいしか情報を得らえなかったみたいだった。
「イサキ。なんか良い話はあった?」
「うーん。黒い魔物が出るからそれを退治して欲しいって話ばっかりだったわ。」
「そうか。オレ達も似たようなもんだわ。」
これは黒い魔物を何とかせんといかんと言う事か。ちぇっ。しかたないなぁ。
「みんな。聞いてくれ。どうやら黒い魔物と言うのを退治しないと前に進まないみたいだわ。しかもこいつは夜にしか出ないらしい。それで申し訳ないけど今晩もここに来ようと思うんだけど、一緒に来てくれる人いる?」
オレはリオ、アーリン、イサキの3人に聞いた。
「一緒に来てくれる人いるって、来るに決まってるでしょ。」(リオ)
「私も来ます。」(アーリン)
「おもしろそうね。もちろん来るわよ。」(イサキ)
心配しなくても戦闘狂のこいつらは深夜の残業なんていとまなかった。
「よし!今夜に備えてもう帰るぞ。」
「「「おう!」」」
「ちょ、ちょっと待ってください。私とマームはどうしたら良いんですか?」
帰ろうとしたオレにエイミーが聞いてきた。そっかこいつらがいたよな。
「うん。エイミー達も今日はもうあがって良いよ。」
「それで私達は今夜どうしたら良いんですか?」
「うーん。なんか嫌な予感がするんだよね。それに夜まで働かせるのは申し訳ないからサオリ達と宿に帰って良いよ。」
「つまりはもう休みって事ですか?」
「そう。」
「やったー。」
エイミーとマームは手を取り合って喜んでいたが、少しは残念がれよ。進んで残業する気合を見せてもらいたいもんだとブラック企業の経営者みたいな事を考えていると、
「俺達はどうしたらいいんだい?」
砂漠の狼のリーダーのアリが問うてきた。
「まあ好きにしたらいいんじゃないですか。」
冷たい言い方かもしれないけど、この人たちは勝手に付いてきただけであるからオレ達がフォローする筋合いはないだろう。探索を続けてもいいし、オレ達にならって引き上げても良い。別に彼らの自由だ。結局彼らは探索を続行することにした。
オレ達は予定よりも早く地下ダンジョンの階段を上ると、テントを張って野営の準備をした。と言っても実際はオレがアイテムボックスから組み立て済みのテントを2張り取り出しただけであるけど。ここは駅のホームで屋根があるからテントはいらないかもしれないけど、人の目を遮るって言う意味ではテントはいるだろう。なんせオレ達は花も恥じらう乙女だからね。着替えとかいろいろあるからね。
「ねえ、アメリ。まだ昼前だけどこれからどうするの?」
「そうだね。リオ。うまい物食って酒でも飲んでたらあっという間に夜になるんじゃないの。」
そう言ってオレはリオの前に魔道コンロを並べた。
「やったー!また料理を作ってくれるんだね。」
「料理って言ってもまたバーベキューをするから焼くのはリオ達自身だよ。」
「バーベキューだね。私大好き。喜んで手伝うよ。」
「じゃあ、リオは肉とか野菜を切って。あ、アーリン達はテーブルとか食器の準備をして。」
そう言いながらオレはアイテムボックスからバーベキューにいる物をどんどん取り出した。
バーベキューも何度かやっているのでリオ達の手際も慣れた物だ。あっという間にテーブルと椅子が並べられ、皿とエールの瓶とコップも並べられた。オレはと言うとリオの切った肉や魚や野菜に秘伝のソースをかけて下ごしらえをするだけだ。
肉や魚や野菜はマームが手際よく網の上に並べていった。
「みんな。今日もご苦労さん。じゃあ、乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
オレ達はエールの入ったコップをぶっつけ合って乾杯をした。キンキンに冷えたエールがうまかった。コップのエールを一気に飲み干すと次は酒の肴だ。食べ盛りの6人だから当然よく食う。薄く切った肉が焼けるか焼けないかのうちに争奪戦が始まるが、心配しなくても肉も魚も野菜も死ぬほどある。
お腹いっぱいになって良い感じで酔いも回って来た頃にサオリ達が帰って来た。
「アメリ達、旨そうな物食ってるじゃないの。」
「お、サオリ達か。お前さんらも食ってくれよ。どんどん焼くからね。」
「どんどん焼くからねじゃないわよ。昼間からお酒飲んでどうしたのよ。」
「ああ、お酒ね。今晩に備えてもうオレ達はお休みモードに入ったんだよ。」
オレは地下ダンジョンでの経緯をサオリ達に話した。
「ふーん。それで真昼間からお酒飲んでるんだ。じゃあ、今晩はここに泊まっていくのね。」
「そうそう。もうテントも張ったしね。それより魔剣は手に入ったの?」
「それが聞いてよ。手に入ったのは魔剣じゃなくて水の杖一本よ。」
オレとサオリの会話にセナが不機嫌そうに割り込んできた。
「え!水の杖?」
「そう水の杖。呪文を唱えなくても水が出せるのよ。」
「良かったじゃない。ここ砂漠じゃ、重宝するよ。」
「良くないわよ。私は魔法剣士よ。それに水魔法だってこんなものに頼らなくても撃てるから。」
そう言って水の杖をセナはオレに渡してきたが、セナって賢者じゃなかったっけ。賢者なら杖は必要な武器だと思うけど本人がいらないって言うんだから預かっておくか。オレは水の杖をアイテムボックスにしまった。
「じゃあ、わたし達は帰るけどアメリ達はもう一仕事頑張ってね。」
そう言ってサオリ達はワープでペグーの宿屋へと帰って行った。
オレ達の方はと言うとバーベキューセットを片付けるとテントでお昼寝だ。ゆっくり休んで夜は元気いっぱいで暴れるぜ。
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