第267話 猫探し勝負
私はリオ様。美少女戦隊一の実力者にして美少女よ。美と実力を兼ね備えたいわば戦いの女神様って所ね。え?しょってるって?そ、そうかな?ま、まあ、それくらいの気持ちで頑張ってるって事よ。気持ちで負けてたら永久にアメリやサオリに追いつけないでしょう。この別格の二人に追いつくために頑張ってるんだけど、最近格下だと思っていたアーリンなんかが実力を付けてきているし、それに新たにイサキなんて異国人が新加入してきたの。セナみたいにさぼってたら足元を掬われるわ。そう言うわけで今日も全力投球のリオ様よ。
私とイサキとアーリンの真王国の狼チームは黒猫のミーちゃん探しの依頼を受けて探してたんだ。空から探索していたイサキが私達を呼びに来たわ。手がかりを見つけたって。急いで行ったら、我が心のライバル、アメリのチームがいたわ。彼女らも黒猫のミーちゃんを探しているみたい。せっかくだから勝負を挑んだわ。どちらが先に見つけるかのね。こちらは空から探せるイサキがいるのよ。これはアメリの鼻を明かすチャンスよ。しかも彼女はどこに逃げたかまでご丁寧に教えてくれたわ。
私達は空から陸から徹底的に探したわ。この勝負もらったわ。だってアメリ達は探しもせずにお宅訪問なんか続けてるのよ。こういう物は体を使って汗をかいた人が勝つって決まってるのよ。でも、こういうパターンで何度も煮え湯を飲まされてるわね。あのペテン師アメリに。
「イタヨ!」
私の心配は杞憂に終わったようね。早速イサキが空から見つけてくれたわ。イサキの指示に従って私とアーリンは挟み撃ちにするようにして路地に追い込んで行ってついに捕まえたわ。ミーちゃんを袋に入れると私達は少女の家に向かったわ。途中アメリ達がお家の前のテラスでお茶しているのが見えたわ。余裕こきまくりだけど、そのおかげで勝負に勝てたわ。勝ったら相手を三日間付き人にできるんだったよね。楽しみ。
「こんにちは。」
「あ、もう見つけたんですか?」
イサキがノックしながら声をかけると家の中で待っていた少女が出てきた。もちろんイーラム語だから私とアーリンはイサキに通訳してもらってるんだよ。
「この子で間違いないかい?」
イサキは黒猫を袋から出して見せた。
「よく似てる黒猫だけど違うわ。私のミーちゃんは赤い首輪をしてるの。」
なにー。そう言う大事な事は最初に言わんかい。とりあえず仕切り直しよ。そう思ってたらアメリ達が来たわ。
「アメリ。まさか黒猫を捕まえたの?」
「うん。そうだよ。」
ニコニコ顔のアメリが答えた。
「まさかと思うけどその黒猫は赤い首輪をしてる?」
「うん。よく分かったね。」
してやられた。アメリはこの少女からミーちゃんの特徴を聞き出していたんだ。だったらこの勝負は無効だ。
「アメリ。あんた、ミーちゃんが赤い首輪をしているのをこの少女から聞いてたわね。だったらこの勝負無効よ。私達は聞かされてないもん。」
「あ、オレ達だって聞いてないよ。」
イサキが少女に確かめたが本当みたいだ。
「じゃあ、どうやって捕まえたのよ。あんたらなんて探しもしないでお茶飲んでただけじゃない。説明しなさいよ。」
ちゃんと説明してもらわないと私は納得できないよ。なんせアメリは勝負に勝つためなら卑怯な事でもなんでもするからね。
「しかたないなあ。じゃあ説明するよ。まずどうせ探すなら二手に分かれたほうが良いと考えたんだ。イサキ達は空から探せるから外で探すのはイサキ達に任せようと思ってね。じゃあ、オレ達は情報を集めようと思ったのさ。」
そう言った後、アメリは自分たちの行った作戦を話し始めた。
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「黒猫?ああ、ここらには何匹かいるね。え、ミーちゃん?そう言えば首輪をしたのが一匹いたね。たぶんそれがミーちゃんかな?あとのは野良猫っぽいなあ。」
「首輪をした黒猫なら、あそこの婆さんがよく餌をやっているよ。」
「首輪をした黒猫?ああクロの事ね。わしの所によく餌をねだりにくるんじゃ。そういえばそろそろ来るころかのう。」
オレ達は聞き込みの結果首輪をした黒猫がタリー婆さんの家に餌をねだりに来るのを突き止めた。首輪の黒猫がミーちゃんなら万々歳だ。
「タリーさん。そのクロを捕まえる事はできますか?」
「ああ、餌をねだる時は向こうからすり寄って来るから簡単じゃ。」
「じゃあクロちゃんが来るまでここで待たせてもらって良いですか?」
「ええとも。その代わり異国の珍しい話を聞かせてくだされ。」
タリー婆さんは一人暮らしの優しそうなお婆さんだった。と言ってももちろんファントムだが。外のテラスで待たせてくれるだけでなくお茶まで淹れてくれた。お茶は心配しなくても本物だった。もちろん毒の類は入っていない。オレ達は王国の事を話す代わりにこの遺跡いや都市の事を教えてもらった。この都市はやはり大昔の都市で、暑さを避けるべく地下に発展したもので川の流れが変わって水不足になったのと魔物の侵入によって人が少なくなったと言っていた。もちろん自分は死んでいる事に気付いていなかった。これはオレの考えだが、この遺跡がダンジョン化するときにここの住人は一瞬で命を奪われたんだろう。それこそ自分が死んだのが気づかないほど。
「ミー!」
しばらくすると猫の声がした。
「どうやらクロが来たみたいだね。」
オレはタリー婆さんからもらった餌でクロを呼んだ。クロは餌に釣られてオレの懐に飛び込んできた。オレは難なくクロを捕まえる事ができた。
よし。これでクロがミーちゃんなら任務達成だぜ。オレはタリー婆さんにお礼を言って家を出た。
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「って言うのがオレ達がクロを捕まえた経緯だぜ。」
私はぐうの音も出なかった。アメリの鼻を明かすつもりだったのにアメリの方が一枚も二枚も上手だった。
「あれ!この子ミーちゃんじゃないわ。私のミーちゃんは赤い首輪をいるのよ。この子の首輪は橙色じゃないの。」
「「「「「「「「え!」」」」」」」」」」
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