第265話 とんだ同行者
「行くよ!」
「「おう!」」
炎の剣を得たリオと水の剣を得たアーリンの二人がいる新王国の狼チームは今日も大張り切りで真っ先に階段を駆け下りて行った。まあ、新しいおもちゃをゲットしたから早く使ってみたいのはわからんでもないけど、魔力切れには注意してね。どっちの剣も一振りごとに魔力を奪っていくからね。この二人が魔力切れを起こしてもイサキがいるから大丈夫か。イサキには最大4人のイサキちゃん軍団があるからね。
「じゃあ、わたし達も行くよ。」
「「おう!」」
サオリ率いる和の心チームは、今日は親子と倉庫のイベントに参加するみたいだ。なぜなら昨日リオが炎の剣をさんざん自慢したのでセナが自分も欲しがったからだ。ちなみにイベントは一日に一回起きるようで、倒されたボスのファントムスライムも次の日には復活しているようだった。
と言うわけで今日も我がティマーチームは最期に出発となった。
「エイミー、マーム、今日もサンダー斬りをできるだけ使って。で、その時にサンダーをできるだけ少しずつ長く撃つようにして。そしたらサンダーソードもすぐにできるようになるから。」
「「おう!」」
オレは二人に攻撃の指導をしながら階段を下りた。オレにはダンジョン攻略の仕事もあるけど、メンバーの実力底上げの大事な仕事もあるからね。
親子の家、公民館、食糧倉庫を素通りして歩くと、リオ達新王国の狼チーム3人がサンドウルフ6匹と戦っていた。
「リオ!大丈夫?」
一応声をかけてみた。
「助太刀無用!」
案の定、余計なお世話はいらぬと突っぱねられた。
「じゃあ、お先に行くね。」
「おう!」
新王国の狼チームを追い越してオレ達が先頭になった。まずはお宅訪問だ。物陰に潜むサンドパンサーに注意しながら一軒一軒戸を開けて中に入って行った。大概は空き家でめぼしい物も無かったが、たまに硬貨や古びた剣などのお宝が見つかった。鑑定持ちのオレにお宝の取りこぼしはないぜ。
そうやって10軒も訪ね歩いた時だった。
「エイミー!止まって!」
次の家の屋根の上に3匹のサンドパンサーが隠れているのを発見したオレは先頭のエイミーを立ち止まらせた。
「あ!サンドウルフ!」
マームの声に振り返るとオレ達の後ろにいつの間にかサンドウルフが3匹いつの間にかつけてきていた。なるほど地上からサンドウルフが追い立てて屋根の上からサンドパンサーが奇襲をかける作戦か。魔物にしては中々頭が良いじゃないか。こちらが先に屋根の上のサンドパンサーに気付いたから良い物の、でなかったらいくらオレ達でもただでは済まなかっただろう。
「屋根の上にサンドパンサーが隠れているから建物に近づかないで!地上のサンドウルフからやっつけるよ!二人ともサンダー斬りの準備をして!」
「「おう!」」
二人に指示するとオレも呪文を唱え始めた。さすがのエイミーとマームもサンドウルフ3匹同時成敗は荷が重いからね。
「サンダー斬り!」
まずはマームがサンドウルフの一匹に斬りつけた。うまい。魔法のタイミングもばっちりだ。サンドウルフごときはマームのサンダー斬りで一発だ。マームも強くなったもんだ。おっと見とれている場合じゃないな。オレも二人の戦いに参戦してサンドウルフをやっつけた。もちろんサンダーソードでさ。
「サンダー斬り!」
最後の一匹はエイミーがやっつけた。これで残りは屋根の上のサンドパンサー
3匹か。
「よし!残りは屋根の上の3匹だけだな!オレが追い落とすから二人はたたき斬ってくれ!」
「「おう!」」
3匹はちょっと離れて隠れているな。じゃあ真ん中の奴にお見舞いするか。
「サンダー!」
真ん中のサンドパンサーにどんぴしゃりで当たった。両端の2匹には当たらなかったみたいだがそれでいい。突然の落雷に度肝を抜かれた2匹はふらふらになって屋根から飛び降りたからだ。もちろんマームとエイミーに簡単に斬り伏せられた。
「相変わらずすげえな!」
後ろから突然声をかけられた。振り向くといつの間にか、「砂漠の狼」のリーダーのアリと、メンバーの一人サリがいた。
「どうしたんですか?」
「ああ。お前さん達に習って俺達も少人数で挑戦する事にしたんだ。」
砂漠の狼の作戦はどうでも良いけど、問題はオレ達の近くに他の冒険者がいる事だ。
オレが訝しそうな顔をしていると、
「ああ。ごめん。ごめん。別につけてきたわけじゃないんだ。偶然ここで出会っただけなんだ。邪魔はしないから俺達二人も一緒に付いて行ってかまわないか?」
「うん。まあ別に良いですよ。ただ、今日はこの二人の強化を重点に置いていますから、オレが戦闘に加わらない事もありますよ。」
オレはマームとエイミーを指さして言った。
「え!ダンジョンの中でも鍛えているのかい?流石は王国のA級冒険者は違うね。俺達にも勉強させてくれ?いやさせてください。」
「ええ。良いですけど。オレは砂漠の狼の皆さんには何も口出ししませんよ。」
「もちろん、俺達が勝手に盗み見して参考にさせてもらうだけで十分だよ。」
「わかりました。まあ、オレ達も秘密にするような事もありませんから聞かれれば答えますよ。」
「わかった。ありがとう。」
オレはマームとエイミーに王国語で砂漠の狼の二人の同行を伝えた。イケメンのアリの同行にマームもエイミーも大喜びである。こいつらは。
「それじゃあ、ここから先は砂漠の狼の皆さんに案内してもらおうかしら。」
「いや、それが。す、すまん。実は俺達もここから先は初めてなんだ。」
「え?」
衝撃の事実だ。砂漠の狼はてっきりこのダンジョンのエキスパートだと思い込んでいた。
「じゃあ、サリさんの魔法の杖は?」
「ああ、一つ手前のホームのショップで買ったんだ。」
なんだってー!ダンジョンで発掘したと言っていたくせに嘘つきめ。まあ、ひょいひょいダンジョンを攻略していくオレ達のほうが異常で、普通はダンジョンなんて中々攻略できるもんじゃないからね。なんせ死んだり大けがしたら終わりなんだもん。慎重の上に慎重を重ねるよね。
「ダンジョンで発掘したんじゃなかったんですね。」
「すまん。なめられたくないからダンジョンのエキスパートを装ってはったりをかましたんだ。」
とんだダンジョンのエキスパートだ事。まあ、魔法の使えるオレ達にはいらない魔道具だから別にほしくないけどね。
「じゃあ、死なないように注意して付いてきてください。オレ達も自分の事で精一杯ですから、あなた方の身を守れないかもしれませんですからね。」
「もちろん自分の身は自分で守るよ。」
とんだ同行者ができたもんだ。まあマームもエイミーもイーラム語が話せないから、オレがしゃべらない限りオレ達パーティの秘密も漏れる事ないから良いか。それにマームもエイミーも喜んでいるしね。
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