第261話 水の剣
「おお。お前さん達、まさかもうあの魔物達を退治したのか?」
公民館にいたリーダーの男が驚いて聞いた。
「あったりまえじゃないの。私達を誰だと思っているの。美少女戦隊と言って王国じゃちょっとは名の知れた冒険者よ。あんなスライムなんてちょろいわよ。」
エイミーがいきって答えたが、あんた、ボスには何にもしてないじゃないかと言う突っ込みはやめておくか。
「それで魔物退治の証拠を見せてもらいたいんだが。いや、疑ってるわけじゃないよ。」
「それはこれですか?」
オレはファントムスライムのドロップした鍵を見せた。
「おお、これだ。この鍵だ。あのスライムに飲み込まれて困っていたんだが、溶けずに残っていた。どうやら本当に退治してくれたんだな。」
「だから退治したと言っているでしょ。」
「ごめん。ごめん。まさかこんなかわいいお嬢ちゃん達があの厄介な魔物を退治できると思ってなかったんだよ。」
「人は見かけによらないものよ。あなたも気をつけなさいよ。」
なんかエイミーの奴調子に乗っているな。
「それで報酬なんだが、この鍵で開けるんだよ。」
そう言ってリーダーの男が金庫らしきものの錠を開けた。中から出てきたのは「水の剣」一本であった。
「あ、良さげな剣ですね。」
水の剣をリーダーの男からもらったエイミーはご機嫌であった。
「なに?なに?この剣て凄いの?」
マームもエイミーから渡してもらって興味津々で剣を抜いた。
「うん。『水の剣』という名の剣だよ。効果として水のダメージ小を付加するものだよ。」
「え!それってどういう事?」
「簡単に言うとイサキの水煙斬りが誰でもできるって剣だよ。マーム。」
「え!凄い。」
「うーん。まあ、凄いったら凄いんだけど、一振りするたびに魔力を奪われるから、あっという間に魔力切れになっちゃうよ。だからオレかサオリにしか使いこなせないと思うよ。まあオレはいらんけどね。」
「じゃあ、サオリにプレゼントね。」
「うーん。たぶんサオリもいらないと思うよ。サオリもオレと一緒で刀マニアだからね。刀にしか興味ないよ。」
「じゃあ、またアイテムボックスの肥やし?」
「うん。まあそう言う事かな。」
オレとマームが水の剣を眺めながら話していると、
「あ!消えた!」
エイミーが素っ頓狂な声をあげた。
その声に水の剣から視線を移すと公民館の男達と金庫は跡形も無く消えていた。
「これでイベント終了って事か。」
「イベントって何?アメリ。」
「いや。独り言。気にせんといて。マーム。」
そう言ってオレは男達の座っていた辺りを見つめた。
オレ達が外に出ると公民館の扉は不思議な力で自動的に閉まった。ついでに鍵もかかったみたいでエイミーが開けようとしても開かなかった。
「じゃあ、ちょっと早いけど戻ろうか?」
「「おう!」」
ホームにはリオ達王国の狼チームがもう戻っていた。
「どうだった?」
オレはホームに座っていた3人に尋ねた。
「どうだったも何も、言葉がわからないからまた斬りあいよ。」
リオが答えたが、まさかあの親子も斬ったのか。
「男の子と母親の親子がいたと思うけどそれも斬ったの?」
「まさか。私らは正義の戦士なんだよ。無抵抗の者を斬るわけがないでしょ。」
リオが真っ向から否定してくれて良かった。非道な戦士でなくて。
「サンドパンサーに不意打ちされなかった?」
サンドパンサーは物陰に潜んでいて突然襲って来る厄介な魔物だ。オレ達もちょっとは手こずったので心配して聞いてみた。
「うん。屋根の上に隠れてやがったけど、こっちにはロボがいるからね。私より先に気付いて教えてくれたよ。」
そうかロボがいれば隠れている魔物を見つけてくれるから安心か。
「ロボ。偉いねー。」
そう言ってエイミーはロボを抱きしめていた。
「リオさん。ロボ。どうでした?ケガしなかった?」
エイミーはロボの事ばかり聞いていた。このロボバカマスターが。
そうこうしているうちにサオリ達和の心チームも戻って来た。
「アメリ。倉庫の魔物退治の件はどうだったの?」
「ああ。ばっちりさ。マームとエイミーの活躍のおかげさ。」
そう言ってオレはアイテムボックスから水の剣を取り出してサオリに渡した。
「これが報酬ね。なんかこの剣から魔力を感じるんだけど。」
「さすがサオリ。良くわかったな。これは水の剣と言って水のダメージ小を攻撃に付加する魔剣なんだよ。欲しい?」
「水属性の魔物を攻撃したらどうなるの?」
「当然回復させる事になるだろうね。」
「じゃあ、いらないわ。水属性ならイサキと相性が良いんじゃないの?イサキどう?」
「え!私?」
サオリから水の剣を受け取ったイサキはさやから抜いて振っていた。
「なんかこの剣気持ち悪いわ。よく分からないけど。」
「ああ。一振りごとに魔力を吸い取られるからね。」
「それじゃあ呪いの剣じゃないの。私は刀があるから遠慮しとくわ。」
そう言ってイサキはオレに水の剣を返した。魔力を吸い取られると聞いて誰も欲しがらないと思ったら、
「私にください。」
アーリンが手を上げた。アーリンなら魔力量も問題ないか。よし!アーリンにプレゼントだ。
「魔女には魔剣がお似合いだ。ほら、受け取って。」
オレはアーリンの剣と水の剣を交換した。
「誰が魔女ですか。この剣に魔法を流したらどうなるんですか?」
あ、それは気づかなかった。もしかして面白い事になるかも。
「わからないわ。アーリン実験してみて。」
「わかりました。じゃあ、みんなの得意なサンダーソード!」
アーリンの剣が発光したがいつものサンダーソードとは違う。より青白さが増している。
「こ、これは。アーリン。振ってみて。」
アーリンが剣を振り下ろすと剣がより青白く発光した。
「なにこれ?か、かっこいい。」
「かっこいいだけじゃないよ。リオ。威力も増しているよ。凄い。じゃあ、アーリン。ファイアーソードをやってみて。」
「これはもう私のための魔剣ですね。ファイアーソードもきっと凄い事になりますよ。ファイアーソード!」
アーリンの掛け声もむなしく剣は一瞬燃えただけであった。
「どうしたアーリン。燃えてないよ。私が代わりにやろうか?」
「いや。リオがやってもダメだろう。思った通り水と相性の良い魔法は相乗効果が出るけど、悪いと効果を打ち消し合うみたいね。じゃあ、次はウォターソードをやってみて。」
「それ私も試したかったです。ウォーターソード!」
アーリンの持つ水の剣が水を滴らせた。
「アーリン、振ってみて。」
「は、はい。」
アーリンが振ると水の剣は物凄い勢いで水を前方に飛ばした。
「わ、私の水煙斬りよりはるかに凄いじゃないの。」
イサキが目を丸くしていた。
「これ気に入りました。大事に使わせてもらいます。」
アーリンは嬉しそうに剣を鞘に納めた。
「うん。良いけど、魔力量には注意してよ。一振りごとにウォーターソードを撃ってるようなもんだからね。」
「ええ。それくらいは気をつけますよ。水雷斬りと真水煙斬りを撃つためならね。」
新しい必殺技を覚えてアーリンはご機嫌だった。ていうかもう名前つけたんだ。
「どう?凄いでしょ?うらやましい?」
アーリンは早速仲の良いエイミーに自慢していた。
「ふん。なによ。そんなちんけな技。アメリさんのサンダーソード改の方がよっぽど凄いわよ。」
「「「「「サンダーソード改!」」」」」
オレとエイミーとマームと王国語の分からないイサキ以外の全員がハモッた。
「ば、バカ。エイミー。」
オレはあわててエイミーをたしなめたが、もう遅かった。
「アメリ。なんかまた必殺技を開発したみたいね。」(サオリ)
「もちろん。みんなに披露するよね?」(リオ)
「私とアメリの仲で隠し事は無いよね。」(セナ)
「さすがは我がマスター。」(エイハブ)
「私の二つの新必殺技より凄いと言う必殺技を見せてもらおうじゃないですか。」(アーリン)
そんなわけで急遽、サンダーソード改のお披露目をすることになってしまった。これは魔法の効きにくいリオや手強いサオリ用の隠し技として取っておきたかったのにエイミーのアホめ。
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