第26話 サオリの弱点
翌日、オレ達四人は揃ってメアリー師匠の家に来た。
今日は玄関からの訪問であった。
「こんにちは。」
「いらっしゃーい。あら、今日も新しい友達が増えたのね。」
奥から出てきたメアリー師匠がセナの姿を見て言った。
「はい。師匠やっと、四人揃いました。」
オレが答えると。
「良かったね。これで、勇者パーティも安泰だ。」
メアリ師匠は祝福してくれた。そして、セナの方に顔をむけると。
「わたしはメアリーと言いまして、ただのおばさんなんだけど。わけあってアメリたちと剣や魔法の真似事をして遊んでます。そこのかわいい子ちゃんはなんておっしゃるの?」
「はじめまして。わたしはセナと言いまして、昨日からアメリの仲間にしてもらいました。アメリの師匠であるメアリーさんにわたしも鍛えてもらおうと思い来ました。」
セナが緊張して答えた。
「あら、そんなに緊張しなくていいのよ。わたしは見た通りのただのおばさんなんだから、気軽に遊びにおいでよ。」
その遊びがオレ達には地獄なんだけどね。
「セナちゃんだけ防具を付けてないみたいだけど、今日は遊んでいかないの?」
セナの格好を見てメアリー師匠が聞いてきた。
「そのことなんですけど、セナには魔法、特に回復魔法を担当してもらおうと思いまして、それで防具と武器をどうしようかと思いまして。」
オレが答えると。
「魔法使いと言っても魔物と対峙するわけだし、アメリたちとおんなじ装備でいいんじゃない。あと、魔法と言ってもわたしの魔法は魔剣士の魔法だからね。魔導士や僧侶の魔法は教えれないわよ。サオリもそうだけど、魔法は一度、専門の人に習ったほうがいいんじゃないの。そうだ、学校に入っちゃえば?」
「学校ですか?」
「そうよ。冒険者の訓練校がこの町にもあるの。そこなら、魔法を専門に教えてくれる教師もいると思うわ。あと、アメリとリオもそこで剣の技術を鍛えなおしてもらったらいいと思うよ。」
「えっ。でも、わたしたちと違って、一人暮らしのリオはお金を稼がないと生活できなくて、学校に行く余裕がないんですけど。」
「大丈夫。大丈夫。学校は夕方からだから、今まで通り、ダンジョンに潜れるし、わたしと遊ぶこともできるよ。」
どうやら、日本で言うところの職業訓練校であり、夜間学校みたいであった。仕事をしながら冒険者としてのスキルを学べる所として、王都が設立したものであった。
「まあ、冒険者は普通、リオみたいに食いつめものが多いから、学校なんて堅苦しい所には行かないけど、魔法を学ぼうとするものは必ず行ってるわね。」
メアリー師匠が言うと。
「食いつめもので悪うござんしたね。わたしみたいな貧乏人には学校何て夢でしたよ。」
リオがむっとして答えた。
「ごめん。ごめん。気を悪くしないでね。王都が補助金出してるから、授業料はただのはずよ。」
「え!ただなんですか。アメリ。学校に行こうよ。」
ただという言葉にリオが食いついてきた。さすが貧乏人。
「わたしもサオリも前世では学校に通ってました。学校にもう一度通えるなんて感動です。」
オレも学校には賛成である。
「セナはどう?」
セナに聞いた。
「わたしは、旅の商人の娘だから学校何て考えた事もなかったわ。お金持ちやお貴族様の子弟が通う学校に行けるなんて。うっうっ。」
泣き出してしまった。
最後にサオリに日本語で聞いた。
「わたしには学校何ていらないわ。どんな魔法も即座にコピーしてみせるから。」
以外にも学生生活を今までずっと送ってきたサオリが反対した。
オレがメアリー師匠に伝えると、しばらく考え込んでいたが。
「わかった。これは言わないでおこうかとも思ってたんだけど。
アメリ。サオリに伝えて。
わたしたちを魔法を使っても大丈夫な場所に連れて行ってくれと。」
サオリのワープで町はずれの人気のない広場にオレ達五人は来た。
「いい。あっちにある木にファイアーボールを順番に撃ってみて。まず、サオリから。」
オレはメアリー師匠の指示をサオリに伝えた。
「ファイアーボール。」
サオリは怪訝な顔でファイアーボールを撃った。もちろん、無詠唱で。
火の玉が一本の木に当たってはじけ飛んだ。
「アメリ。あなたは呪文をゆっくりはっきりと丁寧に唱えてから撃って。」
「ファイアーボール!」
メアリー師匠の指示通りオレは丁寧に呪文を唱えた渾身のファイアーボールを撃った。
同じように火の玉が木に当たったが、はじけ飛んだのは木の方だった。
「「「なにー!」」」
オレとメアリー師匠以外の全員がビックリして声をあげた。
「アメリ。あなたもうすうす気づいてたんでしょ。サオリの魔法が軽いことに。魔法って威力があればあるほど長い時間の呪文を唱える時間が必要になるわ。無詠唱はたしかに凄いけど、これから高威力の魔法を唱えていくには無詠唱では肝心の威力を出せないって事よ。サオリに言ってあげて。」
オレはメアリー師匠の言葉を日本語に訳してサオリに伝えた。
「え!私の魔法が軽い!え!え?」
サオリはショックのあまり、うずくまってしまった。
「アメリ。何してるの。すかさずフォローよ。呪文を覚えたら、あなたみたいな天才はすぐに王国一の魔法使いになれるって。そのためには、学校で良い師匠の下で学ばないとだめよって伝えなさい。」
オレはメアリー師匠の言葉をうずくまってるサオリに伝えた。
「そ、そうだよね。わたしみたいな天才がこのまま終わるはずないもん。アメリ。学校に行こう。わたしは王国一の魔法使いになる。」
こうして、オレ達は学校に行くことになった。
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