第258話 オアシス堪能
オレ達はショッピングセンターのダンジョンからサオリのワープでオアシスに来た。
「なにこれ?なにここ?めっちゃきれいじゃないの。」
案の定、セナは大興奮だった。
「ここがオアシスって言って、たぶんダンジョンから湧き出た水が・・・・」
オレの説明も聞かずにセナとエイミーの王国組は不用意に泉に飛び込んだ。ちなみにエイミーの従魔のロボは水が苦手なので泉には近づいていなかった。
これまた案の定、水の中に潜んでいたダンジョンアリゲーターが2匹、大口を開けて襲って来た。
「「ギャー!」」
いくら鍛えに鍛えたA級冒険者と言っても不意を突かれればただの女の子である。ただ逃げ惑うのみであった。いや。さすがはA級冒険者か。ダンジョンアリゲーターの噛みつき攻撃を華麗にかわしていた。
「た、助けて!」
しかし水の中ではさすがのセナとエイミーも分が悪い。ついに助けを求めてきた。
「オッケー!セナ!サンダー!」
泉の外で笑って待ち構えていたリオがサンダーを撃った。
ダンジョンアリゲーターが二匹と王国人冒険者が二人、あとは無数の魚達が水面に浮かび上がった。
「ちょっと!酷いわ!」
さすがはA級冒険者のセナだ。リオのあの凄い魔法の直撃を受けても気絶しなかった。それどころか魔法を撃ったリオに文句を言っていた。エイミーのほうは気絶していたが。
「何言ってんの。助けてと言ったから助けただけでしょ。」
リオが笑いながら言った。これはリオの言い分の方が筋が通っている。リオに言っても無駄だと悟ったセナはオレの所にやってきた。
「アメリ。なんで魔物が出ると言ってくれないのよ。」
え。今度はオレに文句かよ。
「魔物が出るから注意しろと言う前に飛び込んだのはそっちじゃないか。話は最期まで聞けよ。」
もちろんオレの言い分だって筋が通っているよね。
「もう。みんなで嵌めたわね。」
セナは地団駄を踏んで悔しがった。そのくやしがる姿にリオを始めとするイーラム組は吹き出してしまった。これで王国組とイーラム組のわだかまりが少しは消えたかな。
「セナさんとリオさんのおかげでこれで安全だ。みんな、獲物の回収を手伝ってくれ。」
「「「「「「「おう!」」」」」」」
泉一面に浮かんだ魚と魔物の回収にオレ達は取りかかった。魔物はお金になるし、魚は
食べたら美味しい。楽しく至福の作業であった。
「よし!みんな、これで安全だから泳いでいいぞ!」
「「「「「「「おう!」」」」」」」
オレ達はつかの間の余暇を楽しんだ。そのままでも飲めるくらいきれいだし、ちょっと冷たいが水温も良い塩梅だ。最高のプールであった。
泳いだら後は飯である。オレはいつもの魔導コンロでなく、U字型の大きなコンロを二つに炭と金網をアイテムボックスから取り出した。そう。バーベキューをやるつもりだ。
「リオとイサキにアーリン、悪いけどまた果物を採ってきてくれない。」
「おう!わかった。まかせとき。」
そう言ってリオはイサキとアーリンを連れてオアシスの果物の生る木まで行った。
「私達は何したら良いの?」
セナが聞いてきた。
「うん。王国組のみんなは今日はお客さんだから、休んでたら良いよ。」
「わ、わかった。」
ちょっと納得いかないような表情でセナが引き下がったが、今日の料理は簡単だからお手伝いはいらないんだ。
まずは炭火起こしだ。炭と言うのは中々火が着かないものだが、オレには魔法がある。簡単に火が着いた。炭に火が着いて火力が安定したら、コンロに網を渡していよいよ調理開始だ。肉や野菜のカットとか食材の下ごしらえは既にしてある。網にのせてどんどん焼くだけだ。
オレは焼くのに時間がかかる魚から網に並べた。こっちの網は魚介専用にするか。
「アメリ。いっぱい採れたよ。」
「お、ありがとう。」
果物採集に出かけていたリオ達も帰って来た。
「みんな!今日の昼飯はバーベキューだぜ。肉も魚も野菜も下ごしらえ済みだから、自分で好きな物取ってどんどん焼いて食ってくれ。」
そう言ってオレは食材がてんこ盛りに乗った大皿をいくつもテーブルの上に並べた。
「やったー。私、バーベキュー大好き。」
そう言ってセナが大皿から肉を何枚も取って網に並べた。セナもお箸の使い方がうまくなったもんだ。
「アメリ。なんか忘れてるんじゃない?」
「エールかい?サオリ。もちろん忘れてないぜ。」
そう言ってオレはキンキンに冷えたエールとコップをみんなに渡した。
外で食う飯は最高だ。特にここみたいな景色の良い所でみんなでワイワイやりながら食うと同じものを食っても格段に美味い。美味い物を食って、適度な運動をすることが強くなる秘訣だぜ。これでまた今日もオレ達は強くなれたかな。
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今朝は2番目のホームにサオリのワープで来ていた。結界でも張ってあるのか魔物はホームまでは上がってこないようだった。そのため、ホームには冒険者達のテントがいくつも張ってあった。オレ達もサオリがいなかったら、ここでテントを張って苦労していたであろう。まったくサオリさまさまだ。
「じゃあ、エイミーのリクエストで今日は、オレはエイミーとマームの面倒を見るから、後のチーム分けは適当にやってくれ。」
「えー!なにその投げやりの仕切り。ボスならちゃんとしなさいよ。」
またサオリに叱られてしまった。
「もう。めんどくさいな。じゃあサオリとリオをチームリーダーに指名するから、リーダーは自分の好きな人でも選んでよ。」
「好きな人って。最後まで選ばれなかったらみじめじゃないですか。」
アーリンが手を上げて聞いてきた。そんな事を心配しているのか、でも残るのはアーリンじゃないだろう。
「大丈夫だよ。アーリン。最後に残るのは船長だからw」
「あ!また酷い事を言った。船長、泣いてるじゃないの。」
またまたサオリに叱られた。それにしてもエイハブも意外と繊細だな。本当にめんどくさい奴らだ。
「そんな事を言うのならサオリ。あんた船長を指名しなさいよ。」
「わかったわ。船長、よろしく。」
「サオリさん。」
二人は手を取り合ってた。二人の絆が強まって良かったじゃないか。
「じゃあ、次はリオ。」
「うん。セナで良いか。」
リオはセナを指名した。
「セナで良いかじゃないでしょ。もう。リオ、よろしくね。」
セナはリオの上から目線が気に食わなかったみたいだが、選ばれてほっとしていた。
「次はわたしね。うーん。迷ったけどイサキにするわ。イサキ、よろしく。」
「ありがとう。サオリ。」
イサキも選ばれないかもしれないとドキドキしていたみたいだ。サオリに選ばれて大喜びだった。
「やっぱり。私が味噌っかすじゃないの。」
最後に残ったアーリンはふてくされていた。
「まあまあ。残り物には福があると言うよ。アーリン。頑張ってw」
「ええ。どうせ私は残り物ですよ。」
もうめんどくさい奴だな。アーリンはちょっと神経質すぎるな。アホのリオを少しは見習えよw。
結局、チーム分けはオレ、エイミー、マームの新ティマーチーム、サオリ、エイハブ、イサキの和の心チーム、リオ、セナ、アーリンの王国の狼チームに決まった。ちなみにチーム名は各リーダーが勝手に名のってる物でオレが付けたわけじゃないよ。
*
「じゃあ、エイミー。ちょっとサンダーソードを見せてよ。」
オレはエイミーの実力を図るためにサンダーソードをやらせようとした。
「え!できません。」
そこからかよ。マームとエイハブの魔法ダメダメコンビでも一瞬のサンダーソードならできるのに。エイミーが一番弱いのは分かっていたけど。これは荒療治しかないな。ロボと言う強力な武器を持ったがためにエイミーは自分を強くすると言う事がおろそかになっているんだな。
「ロボってエイミー以外の人の言う事も聞くんだろ。今日はロボをリオチームに入れて。」
「えー!」
「えー!じゃないよ。エイミー。今日はというか、これからしばらくは一人で頑張って。」
「わ、わかりました。」
仲良しのロボを取られて落ち込むエイミーと対照的に、大好きなロボを突然与えられたリオはニッコニコであった。
「よし!行くよ!ロボ!」
「ワン!」
リオとロボは真っ先に階段を下りて行った。その後をあわてて追いかけるセナとアーリン。張り切るのはわかるけど、初めてのダンジョンなんだからもうちょっと慎重に行ったほうが。
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