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第255話 セナの言い分

 



 私はセナよ。美少女戦隊の古参組で魔法のスペシャリストの賢者様なのよ。でも本来賢者様なのに、師匠メアリーが魔法剣士なものだから剣や格闘技ばかり鍛えられていつの間にか魔法剣士になってしまったわ。ま、まあ良いわ。魔法も剣もできる魔法剣士が最強に違いないからね。


 私はリオとの戦いに敗れてイーラム遠征組から外されたの、王国居残り組ってわけね。居残り組にされたからって手を抜いたらだめだよね。私は居残り組を任されたから頑張ってみんなとダンジョンにも行ったわ。でもダメなの。やる気が出ないの。私はアメリがいないとダメなのよ。私はアメリに褒められるから、アメリに認めてもらいたいから頑張って来たのよね。


 元々旅の商人の子だった私は戦闘に向いていないのよ。戦闘民族の脳筋のリオとは違うわ。じゃあ、なんで冒険者をしているかって。それはアメリとサオリに恩義があるからよ。あ、リオにもね。魔物ゴブリンに襲われて両親を殺されて、私も殺されるか犯されるかどっちかだった時に助けてもらったのよ。命の恩人のためなら何でもするって事よ。


 恩人のなかでも私はリーダーのアメリに特に惹かれたわ。だって男前なんだもん。容姿(見た目)じゃないよ。ハートだよ。それに考えが大人なんだもん。あとでサオリに聞いたけど、アメリって異世界の男の人と合体しているんだって魂が。なにそれ。面白すぎるじゃないの。見かけはとびっきりの美少女だけど、中身は男なんだって、半分は。道理で男前で大人なわけだわ。


 中身が半分でも男なら惚れても良いよね。え?ダメ?やっぱりダメだよね。私もそっちの性癖はないし。だから姉として慕う事にしたんだ。アメリも私と同じく魔物に両親を殺された親無し子だから、血の繋がらない姉妹にしてもらったんだ。お姉ちゃんのために苦手の戦闘も頑張って来たのに、お姉ちゃんたら私じゃなくて脳筋のリオの方をイーラムに連れて行ったのよ。やる気が出ないのも無理からぬ話でしょ。ま、まあ選抜試合で負けた私が悪いのよね。わかっちゃいるけど。そんな簡単には割り切れないのよ。


 やる気が出ないのは私だけじゃないわ。居残り組全員よ。元々冒険者だったエイミーは冒険者が天職だからそれほどでもないけど。酷いのはエイハブとマームよ。二人はアメリの使い魔でもあるからマスターのアメリがいないとやる気なんか出るわけないわね。鬼の居ぬ間に洗濯じゃないけど、アメリがいない事を良い事にイチャイチャしてるわ。


 そんなわけで、私達はだらだらとダンジョンに潜っていたんだけど、ついにはダンジョン行をさぼってしまったわ。しかも拍子悪い事にさぼった次の日にアメリ達がキンリーに帰って来たわ。物音で帰って来たのは分かったけど、ここは寝たふりしかないわ。


 狸寝入りしていたらエイミーが起こしに来たわ。


「ねえ。アメリ達怒ってる?」


「ええ。ぷんぷんです。」


 やっぱり怒ってるか。リオに罵倒されるのは平気だけど、アメリとサオリに残念な顔をされるのはつらいわ。みんなに合わせる顔が無いわ。食堂に行きたくねえ。


 でも行かないわけにはいかないわね。それで意を決して食堂のドアを開けたの。


「みんな。おはよう。」


「おはようじゃないわよ!セナ!」


 わ、リオ。やっぱり怒ってる。


「リオ!頭ごなしに怒らないで、まずはセナの話を聞こう。セナ。どうしたの?」


 さすがはアメリね。私の言い分を聞いてくれるのね。


「あ、ダンジョンの事ね。なんかアメリがいないとやる気が出ないの。私らってもう遊んで暮らせるほどお金も持ってるじゃない。今更命を張ってダンジョンに潜るのもねえ。」


 あ、私ったら何言ってるんだろう。こんなこと言ったらみんなの怒りに火を注ぐじゃないの。


「じゃあ、冒険者なんてやめちまえよ!」


 案の定リオが罵声を浴びせてきたわ。私はしゅんとしてしまった。


「リオ!脳筋はちょっと黙ってて!」


「なによ。サオリまで。」


「わたしにも経験があるわ。アメリから離れると途端に戦闘意欲が無くなるのよ。こいつには人をやる気にさせる何かがあるのよ。カリスマ性なのか女神様の加護なのか分からないけど。」


 サオリもそうなんだ。アメリから離れると途端に戦闘意欲なくなるよね。それだけアメリが魅力的って事だよ。


「え?そうなの?オレってそんなに魅力的なの?」


 アメリは照れて思わず頭を掻いた。


「魅力的と言うより人を狂わすオーラを発しているのよ。」


「なんだよ。それじゃあ魔王といっしょじゃないか。」


「うん。人を襲わない魔王ね。アメリは。」


「えー。勇者じゃなかったのかよ。」


 え。そうなの。私がアメリに惹かれるのもそう言う事なの。でも私がアメリを慕う気持ちは本物よ。決してアメリに惑わされてるわけじゃないわよ。


「それで魔王様。セナの処分はどうされますか?」


「リオまで何言ってんだよ。もう。セナの処分はオレ達とイーラムに来て、ダンジョンで死ぬほど働く事ね。」


「え!私もイーラムに行けるの?やったー!」


「ちょっとアメリ。セナは逆に喜んでるじゃないの。」


 当たり前じゃないの。リオ。キンリーに残された私の気持ちはイーラム組のあんたにはわからないでしょうけどね。


「セナだけじゃないわ。エイミーも来なさい。」


「え!私も?や、やったよ。ロボ!」


 エイミーはきょとんとするロボを抱きしめていた。エイミーだってうれしいよね。


「となると色ボケ従魔の二人も連れて行かんとね。サオリ。悪いけど呼んで来てくれる?」


「オッケー!」


 しばらくしてサオリがエイハブとマームを連れてきたわ。


「わしらもイーラムに連れて行ってもらえるんですか?」


 船長エイハブったらニコニコ顔でアメリに聞いたわ。やっぱりうれしいよね。


「おう。君達二人はオレが監視してないと色ボケしちゃうからね。」


「「やった!」」


 色ボケと言われたばかりなのに二人は手を取り合って喜んでいた。


 よーし。なんかやる気が出てきたぞー。外国イーラム、一度行ってみたかったんだ。きっと王国でも見たことないような素敵な景色の所よね。だって有名な船乗りチンドバットの物語はイーラムが舞台って事は王国の子供たちならみんな知ってるわ。私も小さい頃にお母さんによく聞かせてもらったのよ。チンドバット物語。素敵だったわ。やっぱり魔人とかいるのかしら。楽しみー。




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