第25話 新しい仲間
オレはゴブリンロード達に囲まれていた。
「あんたたちにはわたしの最終奥義で葬ってあげるから、地獄で感謝しなさいね。」
オレは構えを取って、全身の気と力を貯めた。
「エネルギー砲!」
オレの両の掌からオレのほぼ全エネルギーと周囲からかき集めたエネルギーが発射された。発射されたエネルギーはゴブリン達を一瞬で蒸発させてしまった。のみならず、洞穴の中に新たな大きな穴を開けて、外まで達した。
「や、やった。」
オレはがっくり膝をついた。
ドーン。オレのエネルギー砲で洞穴が崩落を始めた。オレの前に大きな岩が落ちてきた。もうだめか。三回目の死もすぐだったなと思ってたら、オレは手をつかまれた。
「ワープ。」
オレ達は間一髪のところで洞穴から脱出した。
「アメリ。大丈夫?良かった。」
オレを見つけたリオが声をかけてきた。
オレとサオリがワープで出てしばらくすると、洞穴は完全に崩落してしまった。
「アメリ。あんた。死ぬ気?あんな狭い所で、あんな魔法を撃ったら、どうなるか考えないの?」
サオリがオレに詰め寄った。
「しかたなかったんだよ。もうわたしにはこれしか残ってなかったんだから。」
オレは息も絶え絶えに答えた。
「だからと言って、そんなことする?最初にわたしと一緒に逃げてから、外から今の魔法を撃てば良かったじゃん。」
「あっ。」
「アメリの脳筋野郎。少しは頭を使いなさいよ。」
ポカポカとオレを殴ってきたサオリは泣いていた。
「サオリ。痛いよ。ヒールをかけてよ。」
「ばか。」
「ねえ。いちゃついてるところに邪魔して悪いけど、この子どうする?」
リオが聞いてきた。
「あっ。そうね。とりあえず、目を覚まさせましょう。」
オレは答えると、少女にヒールをかけてからおこした。
「あ、あなたたちは?」
目を覚ました少女が尋ねた。
「わたしはアメリ。冒険者で、たった今、ゴブリンからあなたを救い出したところよ。」
オレが答えると。
「わたし、助かったのね。」
「そうよ。安心して。」
着衣の乱れもない所を見ても、犯される事もなかったみたいだった。
「あなた、名前は?」
「わたしはセナです。」
「セナさんね。送るわ。おうちはどこ?」
「家は無いわ。旅の商人の娘で両親はゴブリンに殺されてしまって、どこにも帰るところがないの?町まで案内してよ。そこで娼婦でもするわ。」
「セナさん。娼婦をするとか、やけっぱちにならないで。わたしもそこのサオリも両親がいないけど何とか頑張ってるわ。」
「え。そうなの?」
「うん。わたしも魔物に両親を殺されたわ。あなたも魔物に恨みを晴らしたいでしょ。どう、わたしたちと一緒に冒険者しない?」
オレはパーティーに誘ってみた。
「え?冒険者なんてわたしにできるかな?」
「あなたなら、大丈夫。」
「わたしが言うのもあれだけど、そんな簡単に決めちゃっていいの?」
リオが心配して口を挟んできた。
「わたしにはわかるの。セナには魔法の才能があるわ。」
セナの事は鑑定済みであった。クラスの所に賢者の卵とあったのだ。賢者と言えば、攻撃魔法も回復魔法も使える魔法のエキスパートである。クラスが賢者だからと言って魔法がすぐに使えるわけじゃないが、誰もが欲しがる魔法の才を誰よりも生まれ持っているって事だ。オレやサオリと違って本物の賢者だ。今のところは、サオリが攻撃魔法と回復魔法を受け持っているが、これから敵が強くなれば、同時に攻撃魔法と回復魔法を使わなければならない事も出てくるだろう。回復のエキスパートがいればオレもサオリも攻撃に専念できる。
「え?それも勇者の能力?」
リオが聞いてきた。
「勇者かどうかわからんけど、わたしの能力よ。」
「じゃあ。わたしも剣士の才能があったからスカウトしたの?」
「いや。リオは顔だけで選んだんだけど。」
「えー。わたし。やっぱり、顔が良いだけの美少女冒険者なんだ。」
リオがちょっと落ち込んだけど、後回しだ。
「セナさん。どう?」
「わかった。よろしくお願いします。」
しばらく考えてセナが答えた。
「ありがとう。じゃあ。自己紹介をしようか。わたしはアメリ13歳。魔法と剣の担当よ。そして、こっちがサオリで同じく13歳よ。サオリは外国人なので言葉が通じないけど、わたしが通訳するから大丈夫よ。」
オレがサオリにも伝えると。
「サオリデス。ヨロシクオネガイシマス。」
とサオリは自分で答えた。
「そして、わたしがアメリ軍団の美貌と剣の担当のリオで14歳よ。」
リオもしょってる自己紹介をした。
「わたしはセナです。12歳です。何もできないけど、これからよろしくお願いします。」
セナはオレ達より年下か。ということはだ。
「セナは生えてますか?」
オレが聞くと。
「え?何が?」
セナが困惑していると。
「アメリは少々おかしい所があるから、気にしないでね。」
リオがオレの口をふさぎながら聞いた。
「セナはまだ12歳なのに娼婦になるとか言ってたの?娼婦ってどういう仕事か知ってるの。」
「うん。ゴブリンにさらわれたって世間に知られたら、もうお嫁に行けないし。手に職もない女が一人で生きていくにはそれしかないかと思って。」
「わたしも冒険者にならなかったらそうなってたかもね。」
リオがしみじみと答えた。
この世界の女の人は大変だな。ところでなんでゴブリンにさらわれるとお嫁に行けないんだろ。オレは聞いてみた。
「なんで、お嫁に行けないの?」
「ゴブリンが人間の女をさらうのは種付けをするためよ。ゴブリンロードは人間の女から生まれたハーフなのよ。」
リオが衝撃の事実を答えてくれた。
「じゃあ。わたしが犯されなかったのはまだ子供だったからね。」
セナがほっとして言った。
「じゃあ。やっぱり、生えてないのね。」
オレがそう言うと、リオに睨まれてしまった。
「セナ。あなたとは仲良くなれそうよ。もじゃ一号ともじゃ二号よりもね。」
ひるまずにセナと握手した。
「生えてるって、もしかしてあそこの事ですか。生えてませんけど、それが何か?」
セナがあそこを触って答えた。
「生えてないと、もじゃ一号と、もじゃ二号がお子様だってバカにするのよ。」
オレもあそこを触って、もじゃ一号のリオともじゃ二号のサオリを見て言った。
「わたしたちぐらいの子は生えてないほうが価値があるって聞きましたけど。」
意外な事をセナは言った。
「えー!誰に?」
大きな声を出してしまった。
「宿の女将さんにですけど。」
セナが答えた。
この世界は15歳で成人で、15歳ぐらいで結婚するのも当たり前だった。当然そういう子供たちを好む男達もいるわけだから、さらに幼い子供たちも恋愛対象なわけだ。おそるべし、異世界。
それから、とりあえず、オレ達は冒険者ギルドに戻ることにした。冒険者ギルドではオレ達がゴブリンの巣を駆除した証拠がないので、依頼が達成できたかでもめたが、セナの証言や後日の現地調査でめでたく依頼達成となった。
ちなみにセナはサオリと同じ孤児院に住むことになった。
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