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第248話 楽しいショッピング

 


 *イサキサイト




「えっとー。なんか変なショッピングを楽しむことになったけど、みんな無理しないように。ショップの外の通路は安全みたいだから、魔力が尽きたり大けがしたら通路に避難して仲間に助けを求める事。それと一応言っとくけどここの魔物は幽霊系だからただ斬っても斬れないよ。必ず魔法を絡めて攻撃する事ね。じゃあ、砂漠の狼との約束の場所まで自由にショッピングを楽しもう。」


「「「「「おう!」」」」」


 アメリの注意を聞いた後、私達は思い思いの店へと散って行った。私の相棒はサオリだ。向かうはもちろん武器屋だ。私にはイサキちゃん軍団がいるから使用する武器の数も多いからね。


「いらっしゃい。」


 いかにも武器屋って感じの厳つい親父がいた。


「えっとー。刀が欲しいんだけど、お勧めの物なんかある?」


「おっ。刀かい?これなんかどうだい?」


 私は刀に関してはうるさいのだ。なんせ刀の本場ジパンの出身だからね。


「ちょっと抜いても良い?」


「もちろん良いよ。じっくり見て決めてくれよ。」


 私は言われるままに刀を鞘から抜いたけど、ここで戦闘になったらこの親父は敵に武器を渡した事になるよね。ばかじゃないの。


 まあ、それはひとまず置いといて刀だ。ジパン出身の私の目から見てもこれは業物だ。親父良い仕事しているじゃん。


「おやっさん。これは良い刀だね。ジパン出身の私の目から見ても良い物だと分かるよ。」


「お、お嬢ちゃん。ジパン出身かい。刀の本場じゃねえか。本場の人に褒められてうれしいね。丹精込めて打った甲斐があったよ。よし、気分が良いから大出血サービスだ。1ゴールドでどうだい?」


 1ゴールド?1ゴールドって確か金貨1枚だったよね。これって凄いお買い得じゃないの。


「買った。」


「毎度あり。」


 これは良い買い物した。1ゴールドを払うと私はニコニコ顔で店を後にした。


 あれ?


「なんか、すんなり買えちゃったね。イサキ。」


「うん。良い買い物したよ。サオリ。」


「それって偽物とかじゃないよね?」


「私の審美眼を疑うの?私は刀に関してはプロよ。プロの私から見てもこれは本物だわ。」


 あ、通路のベンチにイサキちゃん2号とアメリがいるわ。


「イサキにサオリ。どうだった?」


 アメリが聞いてきた。


「うん。良い買い物ができたよ。」


 私はるんるんでアメリに答えた。




 *アーリンサイト




「えっとー。なんか変なショッピングを楽しむことになったけど、みんな無理しないように。ショップの外の通路は安全みたいだから、魔力が尽きたり大けがしたら通路に避難して仲間に助けを求める事。それと一応言っとくけどここの魔物は幽霊系だからただ斬っても斬れないよ。必ず魔法を絡めて攻撃する事ね。じゃあ、砂漠の狼との約束の場所まで自由にショッピングを楽しもう。」


「「「「「おう!」」」」」


 自由に買い物って言うけど不安だ。だって私の相棒は脳筋リオなんだよ。最悪だ。脳筋リオが嫌いだから言ってるんじゃないよ。私も脳筋リオもイーラム語が分からないから言ってんの。いったいどうやって買い物するのよ。


「irasshaimase」


 きれいなお姉さんがなんか言ってるわ。ニュアンスからしていらっしゃいませって言ってるんだよね。防具の看板に惹かれて入ったけど、どうやって買い物するのよ。私も脳筋リオもイーラムの通貨持ってないじゃん。


「naniwoosagasidesuka?」


 もうわからないじゃないの。たぶんなんか聞いてるよね。


「ごちゃごちゃ言ってんじゃねえよ!」


 え?脳筋リオ姉さん、もう喧嘩を売るの?


 これじゃあ私達は質の悪い迷惑客時じゃないの。


「e!nanikasituewigaarimasitaka?」


 お姉さん、困ってる。


「その腰に差してる剣を抜きな!」


「nandayoyarunoka?」


 凄い剣幕でお姉さんの剣を指さして言うもんだから、お姉さんもようやく理解したみたいね。私達が招かざる客だって事が。


「goutouhataizisinaitone!」



 あ、男女アメリと一軒目の服屋に入った時みたいにシャッターが下りたわ。奥からもう一人の店員さんまで剣を振りかぶって出てきたわ。これって戦闘開始の合図で良いのね。私はあわてて呪文を唱え始めたわ。


「sine!」


 お姉さんがいきなり脳筋リオに斬りつけたわ。なかなかの太刀筋だけど、脳筋リオの敵じゃないわね。脳筋リオはお姉さんの剣を自分の剣で軽々と受けたわ。


 おっと!人の心配している場合じゃないわね。店員さんが私に対して、振りかぶった剣を振り下ろしたわ。私は咄嗟に後ろに飛んだわ。


「ちょっと、危ないじゃないのよ!ファイアーボール!」


 飛びのきながらもファイアーボールを撃つことは忘れてないわよ。店員さんが魔法で固まった所に、


「そして突きー!」


 突きでとどめよ。


「サンダーソード!」


 つばぜり合いをしていたお姉さんは脳筋リオの剣から電撃を受けて固まっているわ。


「悪いね!」


 そう言って電気を帯びた剣で袈裟斬りにしたけど、本当に悪いのはこちらだわ。ごめんなさいね。


 お姉さんが光の粒になって消えると、後には銀貨が1枚と鎧が一個残されていたわ。この鎧は初心者がまず身に着ける皮のやっすいやつじゃないの。


 まあないよりはましね。私がドロップしたアイテムを回収しているとシャッターが開いたわ。


 私達が出るとお店もお姉さんも復活したけど、お姉さんがこっちを凄い形相で睨んでるわ。


 なんか後味が凄い悪いんですけど。いやな気分でいると、


「どうだった?アーリン。」


 イサキちゃん2号とベンチに腰かけていた男女アメリが話しかけてきた。


「どうだったも何も、言葉が通じないからショッピングになりませんよ。それで戦闘したけどがらくたしかドロップしませんでしたよ。」


 そう言って私は戦利品の安い鎧を男女アメリに見せた。




 * アメリサイト





「えっとー。なんか変なショッピングを楽しむことになったけど、みんな無理しないように。ショップの外の通路は安全みたいだから、魔力が尽きたり大けがしたら通路に避難して仲間に助けを求める事。それと一応言っとくけどここの魔物は幽霊系だからただ斬っても斬れないよ。必ず魔法を絡めて攻撃する事ね。じゃあ、砂漠の狼との約束の場所まで自由にショッピングを楽しもう。」


「「「「「おう!」」」」」


「ええとー。2号さんで良いのよね?」


「ええ。そうですよ。2号で良いですよ。2号って呼んでください。」


「じゃあ2号はどこに行きたい?」


「そうですね。本体のイサキが武器を欲しがってますから武器屋が良いですね。」


「えっとー。2号は自分で考えたり判断したりできるの?」


「当たり前じゃないですか。私はイサキの作り出したイサキの分身だけど、イサキとは別人格ですから、イサキであってイサキじゃないんですよ。」


 イサキちゃん2号は自意識があるんだ。そのうえ、本体のイサキと違って腰が低いじゃないか。オレはイサキちゃん2号の方が好感度を持てるな。


「ふーん。オレは2号の方がイサキより好きかも。」


「ありがとうございます。私もアメリさん好きですよ。私もイサキも強い人が好きですからね。あの雷の魔法には感動しましたよ。なんせ私は一瞬で燃え尽きましたもの。」


「え!イサキとオレのバトルを覚えてるんだ?」


「当たり前じゃないですか。私も参加したじゃないですか。」


「いや。あの燃え尽きた2号とオレの目の前の2号は別の人かと思ったから。」


「私はイサキの零体の一部が紙に憑依した者ですから、紙の体が燃やされても何度も復活できるんですよ。だから何度燃やされようと私は死なないんですよ。」


「へえ。凄いね。」


 死なないって元々生きてはいないんじゃないのかとも思うが、余計な事は言わないほうが良いだろう。


「あ、そこに武器屋の看板がありますね。」


「よし。そこに入るか。」


「いらっしゃい。」


 オレとイサキちゃん2号が店に入ると店先で剣を研いでいた荒くれものが声をかけてきた。こいつが店主か。なんか頑固者そうだなって、どうせやっつけるんだったらどうでも良いか。


「刀を探しているんですけど、良い刀はありますか?」


 あ、そんな言い方したらこの手の荒くれは怒るよ2号。


「なに!うちの武器に良いも悪いもあるか!全部俺が丹精込めて作った傑作だ!」


 案の定荒くれを怒らせた。これは入店早々バトル開始かと思ったら。


「これは大変失礼しました。私の言い方が悪かったなら謝ります。ごめんなさい。」


 イサキちゃん2号が深々と頭を下げた。


「いや。こちらも大人げない事を言っちまった。頭を上げてくれ。刀なら帝国の曲刀からジパンのジパン刀までなんでも揃ってるぜ。オレが丹精込めて打ったからな。」


 イサキちゃん2号の腰の低さに荒くれもほだされた。


「じゃあ、ジパン刀を見せてください。」


「おう。わかった。ちょっと待ってな。」


 そう言うと荒くれは店の奥に引っ込んで行った。


「こいつらがうちにあるジパン刀の全てだ。」


 そう言って荒くれはカウンターにジパン刀を並べ始めた。


「おじさん。抜いても良いですか?」


「おう。もちろんだ。」


 イサキちゃん2号は刀を鞘から抜いて眺め始めた。これってチャンスじゃない。その刀で荒くれを斬っちゃいなよ。そんな不穏な事を考えていたら、


「これが良いですね。」


 イサキちゃん2号が一本の刀を選んだ。うん。それで間違いないよ。オレの「鑑定」でもそれが一番の業物だと言ってるよ。


「お。お目が高いじゃねえか。それは俺の最高傑作だぜ。1ゴールドと500シルバーでどうだ?」


 うん。まあそんなもんだ。オレの「鑑定」も適正価格だと言ってるよ。


「えー。高いー。おじさん。まけてよ。」


 え!値切るの?これは荒くれが怒って戦闘開始ってパターンだな。オレは呪文を唱え始めた。


「うーん。そうだなぁ。おじさん、こんなかわいい子に失礼な事言っちゃったしな。よし。わかった。1ゴールドと300シルバーでどうだ。」


「えー。私、1ゴールドしか持ってないんだけど。」


「さすがに1ゴールドは無理だぜ。そうだ。よこのお嬢ちゃんに借りなよ。」


 え!オレ?そう言えば先程の戦闘の勝利品の銀貨があったな。


「200シルバーなら持ってるけど。」


 そう言ってカウンターに銀貨を置いた。


「もう。わかったよ。1ゴールドと200シルバーで良いよ。毎度あり!」


「ありがとうおじさん。アメリ。」


 ジパン刀を手に入れたイサキちゃん2号はにっこにっこだった。あれ?バトルは?


 うーん。これはもしかして普通に買い物できるんじゃないの。しかも超お買い得で。で、バトルしたらろくでもない物しか手に入らないんじゃないのかなあ。まあ、オレもイサキちゃん2号も文無しになったしここは他の人達の様子を見て検証ね。


 イサキちゃん2号とベンチに座って休んでたら、オレ達が入った店とは別の武器屋からイサキとサオリが出てきたわ。



「イサキにサオリ。どうだった?」


「うん。良い買い物ができたよ。」


 オレが聞くとイサキはジパン刀を見せて言った。さすがはイサキちゃんズだな。二人とも選ぶものは一緒か。


 それよりも店の事だな。


「店の様子はどうだった?イサキ。」


「うん。頑固おやじだけど、安くしてくれたよ。」


「バトルにはならなかった?」


「うん。なんか普通に買い物できちゃった。それも超お買い得で。」


「やっぱり。オレ達もイサキちゃん2号がジパン刀を値切り倒して買ったよ。」


「え!そうなの。普通に買い物もできるんだ。じゃあなんでアメリとアーリンの時はバトルになっちゃったんだろう?」


「うん。たぶん怒らせたからバトルになっちゃったと思うんだよね。あ、アーリンとリオが出てきたよ。」


「どうだった?アーリン。」


 オレはアーリンに聞いた。


「どうだったも何も、言葉が通じないからショッピングになりませんよ。それで戦闘したけどがらくたしかドロップしませんでしたよ。」


 そう言ってアーリンは戦利品の鎧をオレに見せてきた。アーリンの言うように安い鎧だな。


「もしかして店の人を怒らせた?」


「ええ。リオさんが店に入って早々に『その腰に差してる剣を抜きな!』なんて言って凄むもんだから店のお姉さんはぷんぷんでしたよ。」


「いや。だって何を言ってるか分からないし、どうせバトルするなら早い方が良いと思って。」


「うん。まあリオとアーリンにはショッピング無理だよね。やっぱり店員を怒らせるとバトルになるんだ。でバトルに勝ってもろくなものは手に入らないがちゃんとお金を出して買い物すると良い物が安く買えると言う事だ。」


「えー!そんなこと言っても私もアーリンも一文無しだし言葉すら通じないじゃない。」


「うん。リオとアーリンは最初から戦闘班だからね。買い物しないでどんどんバトルしてイーラムの通貨を稼いでよ。」


「えー!嫌ですよ。復活したお姉さんに凄い形相で睨まれたんだから。」


「やかましい。アーリン。オレと2号だって文無しだよ。オレ達も戦闘班だよ。覚悟を決めて強盗に入ろうじゃないの。」


 こうしてイーラム通貨を豊富に持ったイサキ、サオリ組以外は強盗犯になってしまった。オレ達って正義の味方を目指してたんじゃなかったっけ。なんかダーティな道に進んでるなw。




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