第247話 地下鉄?
砂漠の狼の案内で砂漠を歩く事小一時間。砂漠の中にぽっかりと口を開けた石でできた建造物が見えてきた。その建物以外は周りに何もなかった。
「着いたぜ。ここが遺跡のダンジョンだ。」
先頭のアリがその建物を指さして言った。
「え!ここ?変な建物が一軒あるだけじゃない。」
「いや。よく見て。イサキ。その建物は単なる入り口みたいよ。どうやら地下型ダンジョンのようね。」
この建物はまるで地下鉄の出入り口みたいだった。地下に向って階段が続いていた。砂漠の狼を先頭に階段を下りると広場に出た。その広場は細長く、端にはどこまでも続く大きな溝があった。驚くことに魔道具の照明が付けられているのか中は昼間の外のように明るかった。
「これって?」
「サオリも思った?」
「うん。まるで地下鉄のホームじゃないの。」
「砂で埋もれているけど、これは線路だよね。」
オレとサオリは線路?に飛び降りた。線路?の向こうは暗くて見えないがまっすぐどこまでも続いていそうだった。
「おっとそこは他所のホームに向かう通路だぜ。そこに行っても良いけど、とりあえず今日はここのホームから探索しようぜ。」
アリが下に下りる階段を指して言った。今、ホームって言ったよね。これはもう間違いない。古代の地下鉄跡に間違いない。そして今から行くのはさしずめ古代の地下ショッピングモールと言う所か。
思った通りだった。階段を下りた先には巨大な空間があった。それは真ん中が大きな吹き抜けになっており、吹き抜けに沿って通路があり、通路の吹き抜けと反対側には小さな空間がびっしりとあった。
「これってショッピングモールじゃないの!」
「うん。地下二階の巨大ショッピングモールにいらっしゃいませって所ね。」
オレとサオリは通路から身を乗り出して下を眺めて言った。
「あー。ここは見た通りこの巨大な古代遺跡がダンジョン化しているんだ。そしてこの小さな空間を俺達はショップと呼んでいるけど、ショップにはそれぞれ店番の魔物がいるんだ。店番の魔物を倒すといろいろなアイテムが手に入るぜ。ショップを無視して進んでも良いけど、アイテムを手にいれたかったらショップに入った方が良いぜ。
この狭いショップで10人もいてもしょうがない。ここは二手に分かれて進もうぜ。俺達砂漠の狼はここから右に進むから、お前たち美少女戦隊は左に進んでくれ。
向こうに下に下りる階段がみえるだろ。あそこで落ち合おう。」
そう言ってアリは吹き抜けの向こうに微かに見える階段を指さした。
「わかりました。」
オレは美少女戦隊を代表して答えた。
「それでどんな魔物が出るんですか?」
「うん。レイスにファントムにゴーストって所かな。」
幽霊ばっかりじゃないか。道理でアーリンが真っ青な顔をしているわけだ。
「アーリン。顔色悪いけど大丈夫?」
「か、帰っても良いですか?」
「帰ったら、そのまま王国まで帰すよ。」
弱気になったアーリンに活を入れた。アーリンは渋々付いてきた。
一軒目は服屋か。イーラムの服には興味ないけど、せっかくだから覗いてみるか。
「いらっしゃいませ。おっと、うちの店は狭いから来店は二名までにしてくれない?」
店長らしき女の人?が店を覗くオレ達に入場制限してきた。
「よし!オレが行こう。もう一人はそうだな。アーリン行くかい?」
「は、はい。」
アーリンが嫌そうに答えた。
オレとアーリンが店に入ると、いきなりシャッターが下りた。
「な、閉じ込められた。」
「落ち着け!アーリン!」
半ばパニック状態になったアーリンを殴ってオレは落ち着かせた。
「いらっしゃい。あら、かわいい女の子が二人ね。お二人にはこの服が似合うわよ。」
そう言って女店長?は二着のイーラム服を取り出した。
「いや。今日は結構です。」
オレが断るとニコニコしていた女店長?の表情が一転した。
「なに!冷やかしかい!じゃあ、死にな!」
いつの間にか現れた女店員?までオレとアーリンを襲って来た。二人の手には大きな鎌が握られていた。
「うわー!」
パニックに陥ったアーリンが女店長?を斬った。しかしアーリンの剣は空しく空を斬っただけだ。
「アーリン!呪文を唱えて!こいつらはレイスよ!」
アーリンを落ち着かせつつ、オレも呪文を唱え始めた。
女店員?がオレに斬りかかってきた。オレはそれをかわすと、
「ファイアーボール!」
かわしざまに魔法を撃った。怯んだ女店員?を間髪入れずに居合抜きで斬り払った。思った通りだ。ただの剣攻撃では斬れないが、魔法を絡ませれば斬れる。
「ファイアーボールそして突きー!」
女店長?の方はアーリンがオレの必殺技のパクリ技で仕留めた。
カウンターには服が二着とイーラムの通貨の銀貨が何枚か残されていた。
オレが戦利品をアイテムボックスにしまっているとシャッターがあいた。
「大丈夫?」
心配したサオリ達がショップに入って来た。
「ここのショップは戦闘に勝つと商品がもらえるみたいよ。」
オレは戦利品の服と貨幣をサオリ達に見せながら言った。
「なんだって?世界一危ないショッピングセンターじゃないの。」
「じゃあ、もう止めとく?サオリ。」
「冗談じゃない。世界一面白いショッピングセンターでもあるわ。次はわたしが行かせてもらうよ。」
やる気満々のサオリを先頭にショップを出ると、戦闘で荒れたはずの店内が復元した。
「いらっしゃいませー!」
それどころか女店長まで復活した。
「よし!リオ!わたしと行くよ!」
サオリがリオを引き連れて店に戻ろうとした。
「ちょっと待ってサオリ。店に入った人を外で待っているのも時間の無駄だから、二人ずつでチームを組まない?」
「え?何言ってんの?アメリ。私達五人じゃない。」
「サオリこそ何言ってんだ。イサキちゃん二号がいるじゃない。オレ達には。イサキ。イサキちゃん2号を出して。」
「おう!」
オレはイサキに式神のイサキちゃん2号を出させた。
話し合いの結果、アーリンとリオは王国語しかしゃべれないのでイサキとイサキちゃん二2号とコミュニケーションが取れないと言う事で、イサキちゃんズとは組めないので、オレとイサキちゃん2号、サオリとイサキ本体、アーリンとリオの組み分けになった。ちなみにショップはすぐに復活するみたいだから砂漠の狼の行った方にも行く事にした。
「えっとー。なんか変なショッピングを楽しむことになったけど、みんな無理しないように。ショップの外の通路は安全みたいだから、魔力が尽きたり大けがしたら通路に避難して仲間に助けを求める事。それと一応言っとくけどここの魔物は幽霊系だからただ斬っても斬れないよ。必ず魔法を絡めて攻撃する事ね。じゃあ、砂漠の狼との約束の場所まで自由にショッピングを楽しもう。」
「「「「「おう!」」」」」
オレの注意事項を聞くとそれぞれのチームは思い思いの店に繰り出した。
て、オレの相方は式神なんですけど大丈夫なのか。式神とコミュニケーション取れるのか。イサキ以外の人の言う事を聞くのか。すっごい不安なんですけど。
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