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第238話 闇夜の砂漠

 



「ねえ、なんでアメリ達は顔を隠しているの?」


「ああ。これはイーラムの女の人の風習なんだよ、リオ。オレ達は外国人だろ。どうしても目立つじゃない。だからこうして頭にすっぽりかぶっていたら目立たないし、日焼けもしないから一石二鳥なんだよ。リオとアーリンの分もあるけど、どう?」


「どう?ってそんな怪しい盗賊みたいな恰好をするわけないじゃない。そうよね?アーリン。」


「いや、私は日焼けするのが嫌だからもらいます。アメリさん、ください。」


「ふん。みんなして盗賊になっていれば良いわ。私はこのままで行くからね。」


「うん。べつに好きにしたら良いよ。どっちにしろ5人も若い女の子がぞろぞろと歩いていたら目立つんだから、外国人だろうがイーラム人だろうがあんまり関係ないかもしれないしね。」


 この国では、女の人が顔を隠さないといけない習慣から考えて社会の表舞台にはなかなか出られないんだろうと思う。そんな男尊女卑の社会で女のオレ達が徒党を組んで歩いていたらそれだけでも悪目立ちする。今更外国人である事を隠す事も無いかもしれない。しかしこの国の日射量は王国と違ってきつい。だからオレは美白のためにもベールをかぶるけどね。だって女の子なんだもん。


 そんなわけでリオ親分と4人の盗賊は、宿おすすめの外国人も満足できる安心安全な高級なお店に着いた。宿の女将さんの話によると適当なお店に入ると、ぼったくられたりガラの悪い連中に絡まれたりする事が多いそうな。宿おすすめの高級店だけあってお店はきれいだし雰囲気も良かった。もちろん大声で騒いでいるような輩もいなかった。


 オレ達5人はメニューを見てもさっぱりわからなかったので高くてうまそうな料理を適当に頼んだ。飲み物は、エールはないけどワインがあったのでそれを頼んだ。出てきたのは、何かの肉を焼いたものと、肉とイモの煮込みスープだったけど、どれも香辛料がたっぷりと入ったエスニックな料理だった。汗が出るほど辛かったが美味かった。ちなみにパンもあったがもちろんご飯を頼んだ。


「それでオレがイーラムでも一応リーダーみたいことをさせてもらうけど、異論はない?」


 オレは飯を食べながらみんなに聞いてみた。


「いまさら何を言っているのよ。私達美少女戦隊のリーダーはどこに行ってもアメリあんたしかいないよ。」


「ありがとう。リオ。」


「私の国では一番強い者がボスになるわ。だからもちろんアメリで異論はないわ。」


「そうなんだ。イサキ。ありがとうね。じゃあ、オレがリーダーって事で仕切るけど。それで、明日は朝一でダンジョンに行こうと思うんだ。」


「やったー!さっそくダンジョンね。それでどんなダンジョンなの?アメリ。」


「うん。このパンフレットによると砂漠の古代遺跡がダンジョン化したみたいね。リオ。」


「砂漠って何ですか?」


 リオに答えるとアーリンも質問してきた。そうだよな。オレ達王国人は砂漠なんて知らないよな。


「砂浜って草も木も生えてないだろ。その砂浜の超巨大な奴だよ。簡単に言うと。ここペグーの町は大河のほとりにあるから水が豊富にあって草も木も生えているけど。町の外は草も木も生えない死の世界が広がっているんだ。」


「死の世界ですか?」


「そ。死の世界。昼は死ぬほど暑くなるのに夜は逆に死ぬほど寒くなるんだ。それに水が全くない世界だから。水を大量に持って行かないと死んじゃうってわけ。まあ、オレには関係無い話だけど。」


「さすが人間倉庫。」


「重たい水を持ち運ばないだけでもずいぶん楽になるだろう。少しはオレに感謝しなさいよ。リオ。」


「もちろん感謝しているよ。今の私達があるのはアメリさんのおかげです。」


「なんか嘘くさい言い方だけど、まあ良いや。それでそのダンジョンだけど歩いて3時間の距離にあるんだ。」


「3時間ならそんなに遠くもないじゃん。」


「バカ。リオ。ここは温暖なすごしやすい王国とは違うんだよ。死の砂漠を3時間歩くのはきついよ。それで少しでも涼しいうちにペグーの町を出ようと思うんだ。」


「夜が明ける前に出発するって事ね。」


「そう言う事。だからリオは飲み過ぎないように。それと朝は寒いけど昼は死ぬほど暑いから服装も気をつけてね。一応みんなの着替えはオレが持っているけど。」


「その死の世界の砂漠ですけど、魔物もいないんですか?」


「アーリン。良い質問だよ。砂漠でも生きていける生物はいるんだ。もちろん魔物もね。だから気を抜かないように。」


「じゃあ、どんな魔物がいるの?」


「うん。これもパンフレットの受け売りだけど、サンドラビットって砂漠のウサギやサンドスコーピオンって言うサソリのオバケがいるみたいね。リオ。まあ、オレも初めてだし、当たって砕けろって事だね。まあ、明日の注意事項はこんなところだ。さあ、料理が冷めないうちに食べよう。」




 *




 私はアーリン。美少女戦隊一の魔法の使い手よ。


 私の思惑通り、男女アメリにイーラムに連れてきてもらったのは良いけど、キンリーは朝だったのにイーラムは夜中だったわ。しかも今から夜が明けるんじゃなくて逆に夜が更けるんだって。いったいどうなっているの?時差がどうのこうのと男女アメリが説明していたけど、さっぱり分からないわ。まあ、難しい事は分からないけど、遠い異国に来たのは確かみたいだわ。


 そんなわけで、冒険者ギルドもやっていないので夜の町に繰り出したんだけど、言葉の関係でか、最初は大人しくしていた傲慢娘イサキもお酒が入って来ると本領を発揮し始めたわ。


 酒と言えば脳筋リオなのよね。言葉も通じないはずなのに二人は意気投合していたわ。なんか傲慢娘イサキにも脳筋の匂いがしてきたわ。そんなわけで楽しく宴会を終えた私達は宿でぐっすりと、て、眠れるかよ!キンリーだったら今はお昼なんだよ。


 翌朝、結局一睡もしないで私はベッドを出たわ。隣のベッドで酔いつぶれて高いびきを掻いている脳筋リオがうらやましいわ。


「おはようございます。アメリさん。」


「あ、おはよう。アーリン。よく眠れた?」


「いや。一睡もできませんでしたよ。」


「そっかー。時差ぼけはつらいよね。まあ、そのうちに慣れるよ。」


 先に起きていた男女アメリの説明によるとこういうのは時差ぼけと言って、誰でもなるらしい。少しだけ安心した。ちなみに男女アメリは船でゆっくりとイーラムに来たから、もうこっちの時間に慣れていて時差ぼけはないらしい。


「おはよー!アメリ!アーリン!」


 どうやら脳筋リオにも時差ぼけと言う物はないらしい。朝から元気いっぱいだった。


「おはよう。」(イーラム語)


「おはよう。」(イーラム語)


 私も真似してイーラム語で返したが、こっちのほうの脳筋は元気がないみたいだった。


「どうしたの?イサキ。元気ないね。」


 男女アメリが聞いた。


「ああ。昨日は楽しくてちょっと飲み過ぎたみたい。」


 て、二日酔いかよ。


「おはよう!」


 黒髪サオリの方はいつも通り元気だった。


「じゃあ、まだ宿の人達も寝ているからオレのアイテムボックスから朝食を出すよ。」


 そう言って男女アメリはアイテムボックスからパンを出して配り始めた。


「な、今何もない所から出したよね。」(イーラム語)


 傲慢娘イサキがイーラム語で驚いていたけど、どうやらアイテムボックスを知らないみたいね。男女アメリが説明していたわ。黒髪サオリのワープも凄いけど男女アメリのアイテムボックスも地味に凄いよね。初めて見たらみんなびっくりするよね。


 まあ、男女アメリのおかげでこうして朝から作りたてのごちそうが食べられるんだから、私は感謝するしかないんだけど。


 ご飯を食べたらいよいよ出発だ。外はもちろん真っ暗闇だけど、男女アメリの出した魔導ランプのおかげで足元は明るいわ。もっとも私らはみんな夜目も効くんだけどね。町の城壁を抜けると、ほんとに砂以外は何もないわ。これが砂漠ってやつね。改めて遠い異国に来たことを実感したわ。


 男女アメリに散々脅されていたけど、砂漠なんてたいした事はないわね。ちょっと歩きづらいだけだわ。私達は男女アメリ脳筋リオの二人を先頭に、黒髪サオリ傲慢娘イサキ、しんがりに私の2列で進んでいたわ。探索能力に優れた二人が先頭に立ち、無詠唱で魔法を撃てる黒髪サオリがしんがりを務めるのがいつものパターンだけど、傲慢娘イサキの通訳を兼ねているから今日は黒髪サオリは真ん中を歩いているってわけね。さすがの私達でも後ろから不意打ちを喰らえばひとたまりもないから、しんがりは先頭と同じくらい重要なのよ。その重要なしんがりを任されたんだもの、眠いけど頑張るわ。


 歩く事30分ぐらいかしら、男女アメリが立ち止まって後ろを振り向いたわ。


「まずいな。どうやらつけられていたみたいだな。」


 その声に私達も後ろを振り向いたわ。そこには無数の光る眼があったわ。何てこと、これでも後ろには気を張っていたのに。全く気付かなかったわ。これではしんがり失格ね。私は失点を挽回すべくあわてて呪文を唱え始めたわ。



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