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第223話 前衛アート

 


 馬車の中で揺られる事しばらく、どうやら目的地のアジトに着いたようだ。オレとサオリは馬車から降ろされた。馬車の移動時間から考えてここはまだジップ町内だろうか。アジトの中に入れられて階段を降りさせられた。袋をかぶせられて足元が見えないのでつまづきそうになった。おいおい。囚われの身で何も言えないんだけど、もう少しやさしく扱ってくれよ。地下室らしき所の檻に入れられて初めて縛りを解かれた。それどころか着ている服までも下着も含めて全部はぎとられた。お、親父にも見られたことないのに!もうお前らは死刑決定だ。サオリも怒りでプルプルと震えている。サオリ。まだだ。我慢してくれ。


 縛りを解かれた瞬間に反撃もできたがやめておいたんだ。もともとオレもサオリもこんなロープをぶち切る事は簡単なんだけど、あえて捕まっているわけだからもう少し我慢してくれ。


 オレ達が入れられた部屋はランプが一つだけしかない薄暗い部屋だった。オレとサオリの入れられた檻の他にもう一つの檻があり、オレとサオリと同じくらいの年頃の女の子達3人がやっぱり全裸で囚われていた。これはもう人さらいに決定だな。


 二人組の男達は一人が見張りとして残り、もう一人は階段を昇って行った。


「アメリどうするのよ?牢屋に入れられちゃったじゃないの。」


 サオリが小声で耳打ちした。


「おい!そこ!こそこそ訳の分からない言葉でしゃべってんじゃねえ!」


 見張りの男がすかさず檻を棒で叩き日本語でしゃべったサオリを黙らせた。


「あのう。すみません。この子はエイジア大陸の出なんで王国語がちょっと不自由なんです。それより、私達はどうなるんですか?ここから出してください!」


 オレは咄嗟に嘘をついた。


「ふん。外国人か。どうりで珍しい顔をしているわけだ。でも安心しな。お前たちは生まれ故郷のイーラムに帰れるぜ。」


「イーラム?どういう事ですか?」


「おっと口が滑ってしまったぜ。でもどうせ逃げられないんだ。かわいそうだから教えてやろう。お前たちはこれからイーラム人の闇商人に買われて海を渡るって事だ。」


「海を渡る?海を渡った後はどうなるんですか?」


「さあ、知らねえな。お嬢ちゃん達二人は特に上玉だから、性奴隷としてイーラム人の金持ちにでも売られるんじゃねえのか?俺の知った事じゃねえけどよ。」


「性奴隷?性奴隷って何ですか?」


「さっきから質問の多いお嬢ちゃんだな。まあかわいいから許してやるけどよ。性奴隷ってのは性のご奉仕をする奴隷って事だ。良かったな。きれいな顔と体で生まれて、他の3人と違ってつらい仕事をしなくても良いぜ。」


 見張りの男はそう言ってもう一つの檻の3人を見て下品に笑いやがった。


「性のご奉仕はつらくないんですか!」


 今まで黙っていたサオリが見張りの男に噛みついた。


「お、言葉がしゃべられるんじゃねえか。性のご奉仕は楽しいぜ。なんなら今俺と試してみるかい?」


 さらに下品に笑いやがった。サオリは怒りなのか恥ずかしさなのか真っ赤な顔をしてうつむいた。


「アメリ。もう限界。やらして。」


「サオリ。まだよ。こいつらの人数をまずつかまないと。」


「だから外国語で内緒話をするんじゃねえ!」


 男が再び檻を棒で殴った。ガシャーンと凄い音がして女の子たちが短く悲鳴をあげた。オレとサオリはしかたなく黙った。


 しばらくオレとサオリは黙ってうずくまっていたが全裸なのでだんだん寒くなって来た。


「ね。おじさん。ちょっと寒いんだけど。服を返してもらえない?」


「ダメだな。お前たちが逃げられないように服は預かっておくぜ。それに眺めも良いからよ。」


 オレをじろじろ見ながら言いやがった。なるほどね。檻から出られても素っ裸じゃ外に出て逃げられないってわけか。頭良いじゃねえか。まあでもオレなら素っ裸でも平気で逃げれるけどよ。


「ならしかたないなあ。特別にあんたらにあげるわ。」


 そう言ってオレはアイテムボックスから下着と服を2着ずつ出して、1着はサオリに渡してもう1着を着始めた。


「な!今どこから出した?」


「え?どこってここからですけど。」


 そう言ってオレは檻の中を差した。


「お、お前は魔法使いか?」


「え?違いますけど。」


 嘘は言っていない。オレは魔法剣士だもの。


「く、くそ!」


 そう捨て台詞を残して男は階段をあわてて登って行った。


「よし!サオリ!隠れるぞ!」


「わかった!ワープ!」


 サオリのワープでオレ達は檻の外に出ると物陰に隠れた。


「おい。寝ぼけて夢でも見たんじゃねえか?」


「兄貴。ちゃんと起きて見張ってたぜ。」


「そんな魔法は聞いたことないぞ。まあ、どっちにしろこの檻からは出れんだろ。」


 そう言いながら3人の男達がそろりそろりと階段を下りてきた。


「な!いねえ!」


「どこに隠れた!」


「お前逃がしたんじゃねえのか!」


 無人の檻を見て3人が同時に三人三様の声を発した。異変が起きれば全員で見に来るだろう。敵は三人か。


「兄貴。鍵はかかったままですぜ。鍵は俺が持っているから絶対に開けれないはずだ。」


 檻の鍵を確かめた男が言った。この男は見張りの男と一緒にオレ達を拉致した男だから、もう一人の兄貴と呼ばれた男がボスか。


「よし。鍵を開けてみろ。」


「わ、わかった。」


 そう言って三人は鍵を開けて檻の中に入った。


「やっぱり。中は何もねえな。」


 そう言いながら檻の中を調べ始めた。


「もうがまんできない。アメリ。わたしにやらせて。サンダー!」


 そう言ってサオリが突然人さらい三人にサンダーを撃った。


「おい。サオリ。殺すんじゃないぞ。」


「大丈夫よ。対人間用に威力を絞ってあるから。」


 言葉道理に三人は死んではいなかった。死んではいないが白目をむいて気絶していた。


 オレは気絶している男から鍵を奪うと男達のいる檻は鍵を閉めて、女の子たちのいる方は開けた。


「アメリ。この檻をアイテムボックスに入れられる?」


「人間ごとは無理だけど。檻だけなら。」


「おっけー。じゃあ女の子たちのいた方の檻をもらっておいてよ。」


「わかった。」


 オレは檻をアイテムボックスに入れた。


「じゃあまずは女の子達からだね。みんなこれでも着て。」


 そう言ってオレはアイテムボックスから取り出したリオのシャツを女の子3人に配った。3人はオレとサオリと同じくらいの背丈であったからリオのシャツはちょっと大きかった。大きい分下まで隠れるからパンツがいらないってわけだ。


「ありがとうございます。このままでは私達も海を渡って性奴隷にさせられるところでした。本当にありがとうございます。」


 3人の少女たちは涙を流して感謝してくれた。この3人だって十分にかわいいじゃねえか。


「ところであんたらはどこで拉致されたんだい?」


「私達みんなジップの町でさらわれました。」


 一人の子が代表して答えた。


「ふーん。ジップの町か。オレらと一緒だな。じゃあすぐにでも家に帰りたいかもしれないけど。証言のためにオレらに付いてきてもらえるかい?」


「ええ。良いですよ。」


「よし。じゃあ。まずはここからの脱出だ。オレとサオリの後を付いてきてくれ。」


 そう言ってオレは先頭に立ち、階段を上った。どうやらこの地下室は隠し部屋らしく、階段の先の扉をあげるとそこは一階の部屋の床だった。扉の隙間から部屋の中をうかがったが思った通り大丈夫そうだった。誰もいない一階を抜けて外に出た。人さらいのアジトはどこにでもあるような普通の民家だった。いや馬車もおけるような金持ちの民家か。


 海が近いのはなんとなくわかるが土地勘のないオレ達二人にはここがどこなのかさっぱりわからない。


「ねえ。みんな。みんなの中でここがどこだか分かる人いる?」


 オレは3人の女の子に聞いた。


「たぶんここは港の近くだと思います。」


 一人が答えた。


「やっぱり港か。じゃあ冒険者ギルドのある中心部まで行く道が分かる?」


「ええ。大丈夫だと思いますよ。」


「よし。じゃあ冒険者ギルドまで行くぞ。」


「今からですか?ここから歩いたら2時間はかかりますよ。夜が明けてからのほうが良くないですか?」


「大丈夫。そこに馬車があるじゃないか。さあ、乗った。乗った。」


「え!馬車も運転できるんですか!あなたはいったい何者なんですか?」


「何者って!みんなと同じただの女の子だよ。」


 オレは土地勘のある女の子の案内で馬車を走らせた。さすがに馬車は速くあっという間に冒険者ギルドに到着した。さすがに深夜だけに冒険者ギルドも宿直の職員が一人いるだけであった。


 ギルド職員が一人しかいない事もあり、アジトの捜索は翌早朝になった。とりあえず女の子3人は冒険者ギルドに保護してもらいオレとサオリは冒険者ギルドを出た。


「アメリ。このままですまさないよね?」


「もちろん。大事な乙女の裸を見られたんだ。ただですますわけないだろ。サオリ。アジトまでワープだ。」


「ラジャ!ワープ!」


 オレとサオリはアジトの地下室にワープした。檻の中では三人の人さらいはまだのびていた。


「さあ。どうしてやろうか?」


「そうだね。アメリ。痛めつけるだけじゃ気が済まないよね。こいつらにもわたし達みたいな辱めを受けてもらおうじゃないの。」


「え!どうやって?」


「冒険者ギルドの前って町の中心部だから、日中は人通りが多いよね。」


「うん。今は夜中だから人気はなかったけど昨日行った時は賑わってたね。」


「こいつらは男だからわたし達二人に見られたぐらいじゃ平気でしょ?」


「たぶん。それどころか逆に喜ぶかも。」


「だから、町の人みんなに見てもらうのよ。」


「え?」


「さあ。こいつらが目を覚ます前に冒険者ギルドに運ぶよ。アメリも手伝って。」


 オレ達は檻の鍵を開けて3人をワープで冒険者ギルドの前まで運んだ。


「アメリ。檻を出して。」


「お、おう。」


 オレは冒険者ギルドの真ん前に檻を出した。


「じゃあ。こいつらを裸にひん剥いて檻に入れるよ。」


「お、おう。」


 オレとサオリはパンツ一丁までひん剥いて3人を檻に投げ入れた。


「も、もちろん。これで許す事はないよね。」


「お、おう。」


「ア、アメリ。やって。」


「お、おう。」


 オレが一人目のパンツをはぎ取ると、


「キャー!」


 サオリが顔を手で覆って大騒ぎだ。


「ア、アメリ。次行こう。次。」


「お、おう。」


「キャー!今度の方が大きい。」


 今度はじっくり観察かい。うん。たしかに立派だな。


「さあ。最後よ。」


「お、おう。」


 だんだんサオリも興奮して鼻息が荒くなってきた。


「キャー!今度のはかわいい。」


 かわいいって小さいだけじゃん。狂暴な見た目は変らんて。


「裸にしたら気が済んだ?サオリ。」


「まだよ。アメリ。墨とか筆を出して。あ、お花とかも良いわね。」


「え!」


 こうしてサオリの前衛アート作品ができるころには夜も白々と明けてきた。


「サオリ。もう気が済んだ?」


「うん。最高。」


「じゃあ。行こうか?」


「え?冒険者ギルドなら目の前にあるじゃないの。どこに行くのよ?」


「どこって船よ。船。」


「え!冒険者ギルドで手続きしなくて良いの?」



「まあ。良いんじゃない?犯人もここに捕まってるし、報酬は今度来た時にもらえば良いし。」


「そっかぁ。じゃあ戻ろうか。あれ?でもまだなんか忘れてるような?」


 オレ達は前払いで払った宿に泊まる事を忘れていた。荷物はオレのアイテムボックスに全て入っているから忘れ物はなかったんだけど。




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