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第220話 ご飯は元気の素

 


 何回かの試行錯誤のおかげでオレはやっとご飯を完璧に炊けるようになった。日本でもご飯は炊いたことがあったけど、それは炊飯ジャーだったからね。スイッチ入れるだけの炊飯ジャーと違って鍋で炊くのは難しいんだよ。水加減とか火加減とか。水は手首の所までとか、始めちょろちょろ中ぱっぱ、赤子泣いても蓋取るなとかいろいろあるでしょ。完璧に炊けた時はサオリと二人で味見して泣いたよ。これ日本で食った事のある味とまったく同じじゃん。もちっとしつつふんわりとしている食感で淡白で味が無いみたいだけどほのかに甘くって。所詮はもどきだから味の方までは期待していなかったけど、これはまごう事なきお米じゃないですか。しかも抜群に旨い。このままおかずなしでも塩かけるだけでなんぼでもいける。もっと食べたい誘惑を絶ってご飯をアイテムボックスにしまうのは大変だったよ。


 おかずをどうしようかと思ったんだけど、リオ達異世界人にもご飯を思いっきり食べてもらいたいから丼物にすることにしたよ。それでリオ達の好物と言ったら何といっても肉ね。肉たっぷりの丼と言ったらやっぱり牛丼でしょ。日本の○○屋の牛丼て言ったら脂身ばっかりでろくに肉が入ってないでしょ。その点オレ様特製の牛丼は肉がたっぷり入っているからね。旨いに決まってるよ。


 まずは玉ねぎもどきをくし切りていうの5ミリ幅ぐらいに切ってフライパンで炒めます。先に玉ねぎもどきを炒めるのがコツだぜ。玉ねぎもどきの旨味や甘味が出るからね。この炒めた物を鍋で煮るんだけど、味付けは醤油と砂糖とみりんでつけるんだぜ。砂糖はもともと持っていたし、醤油とみりんのもどきは昨日の店でついに見つけたからね。これからは大いに利用させてもらうぜ。リオ達異世界人の好みに合わせてちょっと甘くするのがコツかな。煮汁が沸いてきたらいよいよダンジョン牛の投入だぜ。あくを取りながら弱火で煮詰まるくらいまでじっくりコトコト煮たら完成だぜ。


 丼が無いので皿に盛ったごはんにかけたら出来上がり。お好みでショウガもどきの千切りを添えてと。おっとオレはつゆだくが好みなんだよな。オレのはつゆを多くかけてとんがらしもどきもいっぱいかけてと。どんどんよそってはアイテムボックスに入れていった。


 ご飯と言ったらやっぱり合うのは味噌汁だよな。なんと味噌もどきまであったからもちろん買い占めさせてもらったよ。具は豆腐何てしゃれた物はもちろん無いから、シンプルに海辺の村オーリーでもらった海藻だけだぜ。いわゆるわかめ汁さ。もどきだけどね。具がシンプルな分きっちりと自家製煮干しと自家製鰹節で出汁をとったからこれも旨いぜ。最後に味噌もどきを溶き入れると鍋ごとアイテムボックスにしまった。こちらの世界にはスープを入れる皿しかないから冷めないようにみんなの目の前でつごうってわけさ。


 準備ができたのでみんなを呼びに行こうと思ったらすでに全員着席していた。大方リオにでもオレが久しぶりに料理をすると聞いて今か今かと待ちわびている所か。


「よし!みんないるね。シェフ自らよそうから端っこのリオから取りに来て。」


「おう。待ってました。」


 オレは一番乗りのリオにアイテムボックスから出した牛丼と目の前でスープ皿によそった味噌汁を渡した。


「お肉の煮た物とスープね。うまそう。良い匂い。」


「熱いから気をつけてね。」


 今日の料理は何か誰にも言ってないからサオリ以外は料理名はわからないだろう。


「おや。このスープはなんか懐かしい匂いがするんですけど。」


「うん。食べてからのお楽しみね。船長。」


 エイハブには米を使っている事も教えてない。スープよりも料理の方に驚くぜ。


 みんなに行きわたったところでいただきますだが、その前に注意事項を言わないと。


「みんな!スープが冷めやすいから早く飲んだ方が良いよ。じゃあ、いただきます。」


「「「「「「「いただきます。」」」」」」」


「あっち!」


 冷まさないで飲んでリオが熱がるのはいつもの約束だ。


「これは味噌汁じゃないのか!」


「そうよ!味噌汁だわ!」


 異世界コンビのエイハブとサオリが大声を出した。


「なんと言う物を出すんだ。」


 エイハブが大声で泣き始めた。


「船長。泣くのは料理の方も食ってからにして。」


 オレが注意するとエイハブは恐る恐る料理に口をつけた。


「!」


 今度は無言で泣きながらむさぼり食いだした。


「これは牛丼じゃないの。しかも良いお肉をたっぷりと使った。旨い。旨すぎる。こうしてまたお米を思いっきり食える時が来るなんて。」


 やっぱりサオリは料理名を言い当てたか。


「ああ。サオリ。売るほど作ったからおかわりし放題だよ。」


「牛丼て言うんだ。甘辛く煮たお肉が美味しいね。それになんといってもこの茶色い粒粒が旨い汁を吸っててスプーンですくう手が止まらないわ。」


「その茶色い粒粒がオレが昼に買ったお米だよ。セナ。」


「え?でも白かったんじゃ。あ、汁を吸って茶色くなったんだ。」


 オレがしてやったりとにやついていると、


「みんな。スープの事忘れてない?こんな味のスープは生まれて初めて飲んだよ。」


 リオが味噌汁の感想を言ってきた。


「リオのお口には合わなかったかな?」


「いや。生まれて初めての美味しさだよ。濃厚な味の牛丼と良くマッチしているよ。」


 もちろんリオも褒めてくれた。


「あのぅ。」


「何だい?エイミー。」


 いままで無言だったエイミーが恐る恐る話しかけてきた。


「おかわり。良いですか?」


「え!もう食ったの?もちろん良いよ。つゆをいっぱいかけて欲しかったらつゆだくでって言って。卵をかけてもうまいよ。」


「じゃあ。つゆだくで。卵もお願いします。あ、味噌汁も。」


 こいつは体の割には大食いだからな。


「私もつゆだく、卵、味噌汁つきで。」


 大食いと言えばもちろんこの人も黙ってない。リオもすかさずおかわりをした。


「アメリさん。あなたは神か?あなたにつけて良かった。本当に良かった。」


 と言ってエイハブがオレを拝み始めた。


「船長。オレを拝むのはまだ早いぜ。」


 オレはアイテムボックスから出した酒をコップについでエイハブに渡した。


「うん?水ですか?」


 そう言ってエイハブはコップの中身を一気に飲み干した。


「ぶふぉ!」


 エイハブがむせた。


「ちょっと。船長。高い酒なんだからもっとゆっくり味わって飲まないと。


「こ、これは日本酒じゃないか!」


「そうだよ。コメもあるし醤油もあるしもしかしたらとお店の人に聞いたらあったよ。正確には日本酒じゃなくて東の大陸の地酒だけどね。


「やっぱりあなたは神だ。」


 そう言ってまた拝み始めた。


「ちょっと。神は女神様がちゃんといるんだからそっちを拝みなよ。」


 そう言ってオレは天を指した。


 パン食の異世界人に米の飯は合うのか心配だったけど。いらぬ心配だった。みんな。味噌汁も含めてきっちりおかわりしてくれた。あ、エイハブは酒の方をおかわりしていた。


「みんな。今日オレはまた勝手に米と言う東の大陸の穀物を買ってしまったんだけど。それは小麦の20倍の値段はする高い物なんだ。オレもさすがにお高いと思ったから二の足を踏んだんだけど、これはオレとサオリと船長のいた国の主食だったんで思い切って買ってしまったんだ。みんなが無駄使いって言うならオレはポケットマネーで弁償するけど。」


「米って茶色い粒粒の事ね。全然無駄使いじゃないわ。」


「私もリオさんに同意です。」


「リオもエイミーもオレの買い物は無駄使いじゃないと言ってくれてますけど。どうですか?セナさん。アーリンさん。」


「わ私の負けね。こんな旨い物を出されたら認めるしかないじゃないの。お米代は経費として認めます。」


 セナが渋々認めた。


「私はお米を買った事は非難してませんよ。最初っから。その常軌を逸した買い方を避難してるだけですよ。店の物全部買い占めるなって言ってるんですよ。」


「ふーん。じゃあ。次からはアーリンだけパンの上にお肉を載せるよ。」


「え!それもおいしそう。じゃなくて負けましたよ。私も。好きにしたら良いわ。」


「よし!満場一致だな。オレら美少女戦隊は民主主義で物事を決めるからね。文句があるなら言っても良いんだよ。」


 そう言ってお米の爆買いをみんなに認めさせた。よし。これからは朝はご飯に味噌汁だ。焼き魚も付けた方が良いよな。オレは朝はトーストじゃなくてご飯派なんだ。これから毎朝楽しみだぜ。シードラゴンをやっつけてオレはなんかやる気が出なかったんだけど、ご飯を食べたらやる気ももりもり沸いてきたぜ。明日からまた頑張るぞ。




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