204話 ネッシー?
「みんな。聞いてくれ。今日でオレとサオリと船長は美少女戦隊を抜けるていうかもう抜けた。」
夕食後のミーティングの時間にオレはそう切り出した。
「えー!突然何を言ってるの!アメリ達は私達を見捨てるの!」(セナ)
「そうよ。突然すぎるわ。アメリと一緒に戦えないなら私は冒険者を辞めるわ!」(リオ)
「わ、私は辞めないけど。それでも突然抜けるなんて納得できないわ。説明して!」(アーリン)
「私も納得できません!」(エイミー)
「使い魔の私はどうなるの?」(マーム)
「ちょっと。みんないっぺんにしゃべらないで。セナ。見捨てたりしないから。リオ。また一緒に戦えるから辞めないで。アーリン。エイミー。今から説明するから聞いて。マーム。オレはあなたを使い魔だなんて思ってないから。」
オレはいきり立つみんなを落ち着かせた。
「じゃあ。順番に説明するから聞いて。今日タロウが来たのはみんな知ってるよね。」
「タロウに引き抜かれたの?」
「リオ。話は最期まで聞いて。先日タロウのパーティである絆がシードラゴンと戦ったのよ。結果は全く歯が立たなかったそうよ。リベンジしたいけど絆ではかないそうにもない。そこでタロウは考えたのよ。オレとサオリと船長を仲間にしたパーティならいけるんじゃないかってね。みんなで戦うって選択もあったけどたくさんで戦うとそれだけ犠牲が増えるから少数精鋭で行こうて事ね。それにオレとサオリと船長も乗っかったてわけ。だから新しいパーティもシードラゴンを倒すまでの期間限定ってわけ。だからみんなを見捨てたりはしないから安心して。」
「アメリー!」
オレの説明を聞いて安心して気が抜けたのか感激したのかリオがオレに抱き付いてきた。お前らには利用価値がある限りオレは切ったりしないつうの。オレがにやりと微笑んでいると
「こいつはみんなが考えるほど良い奴じゃないよ。みんなに冒険者としての利用価値がある限りこいつはみんなをこき使うよ。だから見捨てるなんてありえないよ。」
ちっ。せっかく感動的な流れになっていたのにサオリのバカが水を差しやがった。
「ちょっ!サオリさん。何をバカな事を言ってるんですか。もう。
魔物に親を殺されたやつ、魔物に仲間も自分も殺されたやつ、異世界に紛れ込んで行く所のないやつ、親に口減らし同然に見捨てられたやつ、みんなここが我が家だと思って集まった仲間じゃないの。いや仲間じゃないわ。家族よ。船長がお父さん、マームがお母さん、リオが一番上のお姉さんで残りのオレ達は姉妹なんだよ。そんな家族を見捨てたり裏切ったりするわけがないでしょ。
シードラゴンは危険すぎる魔物なのよ。オレとサオリだって死ぬかもしれないわ。そんな危険な魔物との戦いに家族を巻き込めないわ。」
「アメリー。」
再び感激したリオが抱き付いてきた。よしよしリオは簡単でいい。
「家族が戦うなら私も家族のために戦うわ。」
そんなリオがトンでも無い事を言い出した。
「リオ!私達じゃ足手まといって言ってるのよ。アメリは。」
すかさずセナがリオをたしなめた。
「セナ。足手まといだなんて・・・・。死ぬのはオレ達4人だけで良いんだよ。あ。船長は不死身だから。3人か。
あと、オレとサオリと船長は異世界の日本と言う国から来たんだ。もちろんタロウもね。この同郷の4人で最強パーティを一度でも良いから組んでみたかったんだ。これはオレ達のわがままね。S級のタロウに不死身の船長、何でも屋のサオリにそしてオレ。どんな強いパーティになるかワクワクするじゃないの。」
「もう。わかったわよ。勝手に4人で死んできな。アメリが死んだら私は冒険者を辞めるから仇は討たないわよ。」
「ありがとう。リオ。オレは死なないから辞める事もないよ。」
「アメリ。絶対に生きて帰ってくるのよ。私はまだまだあんたを利用したいからね。」
「ありがとう。セナ。オレもみんなをまだまだ利用したいから死んでも生き返って帰って来るよ。」
そんなこんなでオレ達の離脱はリオ達になんとか認めてもらった。
*
翌日オレとサオリとエイハブはダンジョン行を休んだ。もう美少女戦隊ではないのだからリオ達と一緒にダンジョンには行けない。代わりに朝から訪ねてきたタロウと作戦会議だ。
「タロウさん。シードラゴンについて詳しく教えてもらえますか。」
「うん。俺もそんなに詳しいわけじゃないけど。」
オレの問いにタロウは一枚の紙に絵を描き始めた。タロウは絵がうまかった。あっという間に一匹の魔物の絵を描いた。
「「ネッシー!」」
タロウの描いた魔物を見て、オレとサオリは思わず元いた世界で最も有名なUMAの名を叫んだ。長い首にひれ状になった足、どっからどう見てもネッシーいや海竜である。
「うん。俺もそう思った。こいつはまるで恐竜だよ。しかも火のブレスを吐く厄介な恐竜だよ。恐竜じゃなくてこれは怪獣だね。」
「怪獣って事は当然大きいんですよね?」
「ああ。でかい。そこらの船よりもでかいだろう。」
オレの問いにタロウは両手を広げて答えた。しかしそこらの船って言われても良くわからんがエイハブの船よりは大きいのは間違いないだろう。
「それでどうやってその大きな怪獣とタロウさん達絆は戦ったんですか?まさか。空を飛んだりしないですよね?」
「うん。さすがの俺も空は飛べないから。村で借りた手漕ぎ船に4人で乗って戦ったんだよ。」
S級冒険者のタロウでも空は飛べないのか。どうやらこの世界には空を飛ぶ魔法はなさそうだな。
「それでひっくり返されて終わりですか?」
「そう。終わり。」
しばしの沈黙の後、今まで黙っていたエイハブが口を開いた。
「やはりわしの船を出すしかなさそうですな。」
「え!船があるの?」
「うん。幽霊船が一艘ね。」
「幽霊船とはひどいですな。せめて海賊船て呼んでくださいよ。アメリさん。」
「とにかくその海賊船があるから簡単にはひっくり返されたりはしないわ。」
「その船は大きいんかい?」
「けっこう大きいよね。ちょっとした帆船ね。」
「それは頼もしいけど、そんな大きな船をたった4人で漕げるのかい?」
「うん。これが幽霊船たる所以なんだけど、その船は生きてて自走できるんだ。」
「え!そうなの?それじゃあその船で戦えば俺達も簡単にはやられないね。」
「うん。クラーケンやメガロシャークもやっつけた事あるよ。」
「なにー!クラーケンにメガロシャーク!お前たちいったい何者なんだよ!」
「だからタロウさんと同じ異世界転移者じゃないですか。オレ達だってタロウさんと同じようにチート能力を授かってるんですよ。」
「これはやっぱり俺の選択に間違いはなかった。そのエネルギー砲でやっつけたんだね。」
「あ、オレを鑑定してスキルを見たんですね。残念ながらそれはかすっただけで有効打にはならなかったんですよ。」
「じゃあ、どうやってやっつけたんだい?」
「それは秘密なんですけど。」
「秘密か?俺達は仲間だろう。隠し事は良くないな。俺の能力に読心術も隠密もあるのはアメリちゃんならわかるだろ。俺にそんな卑怯な能力を使わさせないでおくれよ。」
「あー。わかりました。オレの負けですね。サオリのワープを使ったんですよ。」
「ワープ?ワープってどっか遠い所に瞬間移動する便利な能力だろ?それでどうやってやっつけたんだい?」
「じゃあ、今から実戦しますから思う存分コピーしてくださいよ。サオリ頼む。」
「アメリ。良いの?」
「良いんだよ。どうせいつかバレるし、盗まれるよ。」
「盗むって酷いなあ。ちょっとコピーさせてもらうだけだよ。」
「そのコピーで王国一の実力者になったんですよね。」
「うーん。まあ否定はしないよ。そのワープでどうやってクラーケンやメガロシャークのカタストロフィ級の魔物をやっつけたのか早く教えてよ。」
「教えて欲しいのは魔物のやっつけ方じゃなくてワープじゃないんですか?」
「酷いなあサオリちゃん。確かにワープには興味あるけど、今は魔物退治ね。」
「よし。じゃあ教えるよ。タロウさんがメガロシャークだとして今海で泳いでいます。そこにオレとサオリは船の上からワープして乗っかりました。」
「え!ワープってそんな使い方ができるんだ。」
「うん。自由自在に空間移動できるよね。それで今メガロシャークに乗ってる所だから、あ、ついでに船長も一緒に行こうか。サオリ。頼む。」
そう言ってオレはタロウとエイハブの体を掴んだ。サオリはそのオレの体を掴むと唱えた。
「ワープ!」
一瞬の後、オレ達はどこかの人気のない原っぱに出た。
さすがにワープの事を知っていたタロウは騒ぐ事はなかった。
「ダンジョンのワープポイントみたいな事が自由にできるんだ。素晴らしい。これも今から俺の能力だ。ありがとう。サオリ。」
「いえ。どういたしまして。じゃあ、さっそく使ってみてくださいよ。」
「良いのかい?じゃあワープ!あれ?ワープ!ワープ!ワープ?」
「どうやらできないみたいですね。」
「うーん。おかしいな。なんかコツはある?」
「コツって言うか行きたい場所を強く思い浮かべてですね。ワープ!」
サオリは10メートル程先にワープした。
「うん。そう言う事か。わかったぞ。ワープ!ワープ!」
「無駄ですよ。自分を鑑定してみてください。」
オレの言葉にタロウは自身を鑑定した。
「な、なんだ?こんなことは初めてだ。俺が自分にかけられた能力をコピーできないなんて。」
「やっぱり見たり聞いたりじゃなくて自分にかけられないとコピーできないんですね。まあ、そんな事よりワープはサオリだけに許されたチート能力みたいですね。」
「ああ。良くわかった。やっぱりサオリと仲間になって正解だった。それでどうやってメガロシャークをやっつけたんだい?」
うん。どこまでもポジティブな奴。
「タロウさん。あなたはメガロシャークでしたよね。どうですか?今陸の上に上げられて。」
「あ、俺はメガロシャークだったよね。陸の上に上げられて・・・・。あっ。泳げない。それどころか息ができないじゃないか。これを考えたのはアメリか?」
「そうです。アメリです。アメリは卑怯技の天才ですからね。」
「なんだよ。サオリ。卑怯技って。頭脳作戦て呼べよ。」
「うん。確かに天才だ。これは勝算が出てきたぞ。陸の上に上げてしまえば、水の中に潜られる事もないし、船をひっくり返される事もない。」
「でも、シードラゴンは魚じゃないですから呼吸はできますよ。」
「まあ。呼吸ぐらいは自由にさせてやらんとイーブンな条件にならないじゃないか。俺達はシードラゴンと命を懸けた決闘をするんだから。」
イーブンな条件で戦うなら敵のフィールドである海で戦うべきだと思うが。まあ海で戦っても勝ち目はないか。
「それでシードラゴンなんですけど、魔法が効かないみたいな事をおっしゃってられましたよね?」
「うん。龍鱗てやつかい。分厚い鱗の鎧があるからそれが魔法を軽減させるみたいだな。」
「そうですよね。龍の鱗は防具の素材として最高ですからね。剣も魔法も防げる防具として。」
「まあ、陸に上げても一筋縄ではいかない相手って事だ。」
そう言ってタロウはにやりと笑った。どことなくタロウには親近感が持てる。こいつはオレやリオみたいに戦闘を楽しむタイプなんだ。根っからの戦闘狂なんだ。
その後オレ達はタロウのスキルを見せてもらったがもちろんオレ達に真似できるわけじゃなく、ただビックリしただけであった。ただし魔法については別だ。新しい魔法はイメージさえできればいつかできる。呪文も教えてもらったし。ちなみにサオリの無詠唱はタロウはコピーする事が出来た。オレのアイテムボックスは無理みたいだった。エネルギー砲は一日に一回しか撃てない事とその後オレが使い物にならなくなることもあり試さなかった。大体オレのエネルギー砲を受けたら死んじゃうだろうから試せないって事もあるけどさ。
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