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第203話 ドリームパーティ

 


 コンコン


「アメリさん。お客さんです。」


 部屋で昼寝をしていたオレはエイハブに起こされた。エイハブに導かれ応接間兼食堂の大部屋に行くと待っていたのはS級冒険者のタロウとサオリだった。


「じゃあ。わしはこれで。」


「待って。エイハブさんも話を聞いてください。」


 オレを呼んで来て自分の役目は終わったとばかりに部屋に戻ろうとしたエイハブをタロウが呼び止めた。


「いらっしゃいませ。タロウさん。元日本人ばっかり集めて何を企んでるんですか?」


「ああ。お邪魔してます。アメリちゃん。いや、アメリさん。さすがに鋭いね。A級パーティのボスだけあるよ。」


 そう言う自分はS級パーティのボスじゃないか。


「S級の人にそう言われてもねえ。」


「いやいや皮肉じゃなくて純粋に褒めてるんだよ。それで本題だけど単刀直入に言おう。オレとパーティを組んでくれ。いや組んでください。お願いします。」


 そう言ってタロウは突然土下座をした。


「いや。ちょっと頭をあげてください。何があったんですか?」


「実は・・・・」


 オレがタロウの土下座を止めさせて椅子に座らせるとタロウは訥々と語りだした。それによると、新しいダンジョンの帰りに海辺の村で頼まれた魔物退治に行った所現れたのはなんとシードラゴンだったと言う事だ。


「シードラゴン!」


 シードラゴンと聞いてエイハブがいきり立った。無理もない。前世のエイハブはシードラゴンに殺されて魔物に転生したのだ。シードラゴンは自分も含めての仲間たちの仇だ。


「船長。気持ちはわかるけどまずはタロウさんの話を聞こう。」


 オレはエイハブを落ち着かせタロウに続きを促した。


「エイハブさんもシードラゴンとは因縁があるみたいだね。まあ。それでシードラゴンとわかっても俺達4人は挑んだんだ。S級冒険者としてのプライドもあるからね。自信満々で挑んだ俺達だったけど、結果から言うとけちょんけちょんさ。魔法はあまり効かない。海に潜られると剣も槍も届かない。最後は乗ってた船をひっくり返されてお仕舞さ。え?それでなんで生きてるって?浜辺で戦ってたから応戦しながら命からがら陸に泳いで逃げたってわけさ。攻撃魔法は効かなくても目くらましとかそう言うのは効いたからね。」


「大変な目にあったのはわかりましたが、それでなんでオレ達とパーティを組みたいんですか?」


「うん。このまま負けっぱなしじゃ俺のプライドが許さんのよ。それにカタストロフィ級の魔物を放置しておく事もできんだろ。俺達絆の4人でリベンジするのがベストだけど、冷静に戦力分析してみても無理なんだわ。これが。S級と言っても他の3人はA級に毛が生えた程度だからね。俺の意地で仲間を死なせたくないからね。

 仲間を失いたくないから代わりに戦ってくれなんて虫が良すぎるのは十分に分かっているんだけど。俺の知る限り俺と同格の強さなのはアメリちゃんとサオリちゃんだけなんだよ。」


「同格ってオレもサオリもA級になったばかりの未熟者なんですけど。」


「いや。謙遜しなくても良いよ。俺にはアメリちゃんからコピーした鑑定の能力があるからね。二人の能力は十分にわかってるよ。」


 そうだった。オレのスキルの鑑定はタロウに盗まれたんだった。


「それでもわたしには戦う理由がないんですけど。」


 サオリが弱気な事を言ったがオレ達冒険者にはそこに魔物がいればそれが戦う理由だ。オレがサオリを説得しようとしていたらエイハブが口を開いた。


「わしには戦う理由があります。シードラゴンは死んでいった仲間のそしてわし自身の仇なんです。アメリさん。そしてタロウさん。わしも仲間に加えてください。」


「もちろんオッケーよ船長。オレと一緒に仇を討とう。タロウさん。オレもシードラゴンじゃないけどドラゴンには因縁があるわ。オレも仲間に加えてください。」


「もう。二人が仲間になるのはわかってたわよ。わたしだけ仲間はずれになるわけにはいかないじゃないの。わたしも仲間に入れていただくわ。」


「サオリちゃん。」


 感極まったタロウが泣きながらサオリに抱き付いた。


「ちょっとー。そう言うのは良いから。」


 真っ赤になったサオリがタロウを必死になって引き離した。オレとエイハブはサオリの必死な姿に笑ってしまった。


「それでタロウさんとパーティを組むとしてオレ達自体のパーティはどうしたら良いんですか?」


「うん。基本的にパーティの掛け持ちは禁止されてるみたいだから、美少女戦隊は抜けてもらわないといけないかな。なあにシードラゴンを倒すまでの間だよ。短期間だけど史上最強のドリームチームができるんだよ。素晴らしいとは思わないかい?」


「確かに最強チームですよね。でもパーティってそんな簡単に抜けたり入ったりできるもんなんですか?」


「まあ大丈夫だよ。パーティ間のドラフトってよくある話だからね。」


「それを聞いて安心しました。美少女戦隊はオレとサオリで作ったパーティですから愛着もひとしおなんですよ。」


「俺の絆だってそうさ。苦しい時や辛い時を一緒に乗り越えてきた仲間だからね。絆は俺の人生なんだよ。」


「それでボスはタロウさんにするとしてパーティの名前はどうします?」


 渋々加入したくせにサオリは超ノリノリだ。


「そうだね。ベタだけどドリームチームって事で夢ってのはどう?」


 どう?ってそのまんまやないかい。ここはひとつオレが良いのを考えてやるか。


「はい。夢も良いですけど、みんな日本人なんだから日本人の誇りを忘れないようにライジングサンってのはどうですか?」


「そうだよね。わたし達はどこにいても日本人に違いないんだよね。アメリの金髪碧眼のバタ臭い顔を見てたら忘れていたよ。よし。ライジングサンに決定しましょ。」


 サオリがオレの案に賛成してくれたのでライジングサンに決まった。タロウはオレがボスなんじゃないのかってぶつぶつ言っていた。そんなタロウをエイハブがドンマイと言って慰めていた。


「よ、よし。善は急げだ。早速冒険者ギルドに登録に行こう。」


「「「おう!」」」


 最期にタロウがボスらしい貫禄を見せて仕切ってオレ達4人は冒険者ギルドに行った。冒険者ギルドは大騒ぎだった。無理もない。冒険者ギルドのナンバーワンのパーティとナンバーツーのパーティの生え抜きで夢の最強パーティができたのだ。


 ちなみにライジングサンは他の冒険者ギルドのギルド長の推薦をもらってないと言う事でS級にはなれなかった。まあS級は自分の力でもぎ取るから良いけどさ。残念。



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