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第201話 天才料理人

 


 私はシーナ。王都キンリーの商業学校で学ぶ真面目な学生さんよ。私は田舎町リーベの商人アデルの娘なんだけど、このままじゃお父様の決めたどっかのヒヒ親父に嫁がされるわ。いわゆる政略結婚て言うやつね。まっぴらごめんだわ。そこで、見聞を広めたいとかもっともらしい理由を付けて王都の学校に逃げ出したの。少なくとも学校在学中の4年間は私は自由の身よ。最後の自由な4年間、他の学生のみなさんみたいにのほほんと遊んで暮らすと言う選択もあったけど、王都に向う途中で山賊に襲われてから私は目覚めたの。私と同い年のアメリとサオリが命がけで戦う姿を見てね。私はなんて甘ちゃんだったんだろう。政略結婚が嫌だからとわがままを言って王都の学校に逃げたって問題が先延ばしになるにすぎないわ。政略結婚が嫌なら家から自立すれば良いのよ。お父様に養ってもらってるうちは言う事を聞くしかないわ。自立すれば文句は言わせない。私は私の決めた相手と結婚するんだ。


 自立にはお金が必要だわ。この国一番の商人になる私の野望のためにもお金は必要だわ。私は友達になったサオリからある日面白い話を聞いたの。嵐の中、船で都に果物を運び大金持ちになった男の話をね。これだわ。私もアメリやサオリのように命を張った仕事をするときが来たんだわ。それからの私はこつこつとお金を貯めたわ。いくらお嬢様の私だってバカみたいにお金をもらってるわけじゃないからね。アルバイトもしたわ。学校が終わってから商店で働かせてもらったわ。小さい頃からお父様の商会のいろんな仕事を手伝ってきた私には働く事は苦にならなかったわ。そうして貯めたお金と借りたお金で勝負したの。勝負は大勝利だったわ。キンリーからリーベに運んだ荷物は私の目利きも良かったからだと思うんだけど想定以上の莫大な利益を生んだわ。ほくほく顔でキンリーに戻ろうとしたんだけど、サオリとアーリンに諭されて実家にも顔を出したの。案の定お父様に大目玉を食わされたわ。しかし私の性格を知っているお父様は最期には許してくれたわ。それどころかキンリーに戻る際の荷物をただでくれたわ。お父様大好き。


 暇だからサオリとアーリンに付いて冒険者ギルドに行ったんだけど、冒険者達のガラの悪さにハッキリ言ってビビったわ。でももっとビビったのはアーリンの無謀さね。雲を突くような大男と腕相撲で勝負しようって言うんだもの。いくらアーリンが凄い冒険者だとしても腕相撲では大男に敵わないのは素人の私でも分かるわ。でもサオリがアーリンに全財産賭けるから私も賭けたわ。もっとも私は全財産賭けるような無謀な事はしないけどね。誰もがアーリンの負けを確信してたんだけどまさかアーリンが勝つとわね。私は猛烈に感動したわ。私もアーリンみたく強くなりたいと思ったの。すぐに二人に弟子入りを申し出たわ。そしたらサオリが私も美少女戦隊に入れって言いだしたの。さすがに商人の私にサオリ達みたいな事はできないから断ろうとしたら、私は何にもしなくて良いって。なら私に断る理由はないわ。でもボスのアメリに無断で入っても良いのかと思ってたら、サオリがアメリをキンリーから連れてきたわ。どうなってるのかと思ってたら、さらに不思議な事にはアメリがキンリーの自分たちの家で私の歓迎会を開いてくれるみたい。


「良い?シーナ。これから信じられない事が起こるけど絶対に途中でわたしの手を離しては駄目よ。他のみんなも分かってると思うけどわたしを掴んだ手を離さないでね。」


 町はずれの人気のない原っぱで私達4人はサオリを中心にして手を繋ぎ合っていた。いったいこれから何が起こるんだろうか。私には想像もつかない。ただ、ニヤニヤ笑うアメリとアーリンの顔を見るとこれから良くない事が起きるのは容易に想像できる。


「じゃあ皆行くよ。ワープ!」


 サオリの掛け声とともに目の前の景色が歪み始めた。そして真っ暗になったと思ったら何回か遊びに来たことのあるアメリ達の家の庭に来ていた。な、何が起こってるの?私の頭では理解が追いつかない。とりあえず握ったサオリの手を離さないように力を籠め直した。


「痛いよ。シーナ。もう離して良いから。」


 サオリの声に我に返った私はあらためて辺りを見回した。


「こ、ここってアメリ達の家?え?え?え?何が起こってるの?」


「ふーん。シーナはあまり驚かないタイプだね。もっと派手に驚いてくれないと盛り上がらないじゃない。」


「いや。十分に驚いているみたいですよ。アメリさん。」


 そう言ってアーリンは私を指さした。私は腰が抜けて立てなかった。


「これはわたしのオリジナル魔法でワープって言うの。わたしが行った事のある所ならどんなに遠くても一瞬で行けるから便利よ。ちょっと目の前が暗くなって眩暈がしたと思うけどわたしのわたしの手を離さない限り安全だから安心して。」


 そう言ってサオリは私を優しく立ち上がらせてくれた。


「じゃあやっぱりここはキンリーのアメリ達の家?信じられない。」


「ああ。オレの家だ。そして美少女戦隊の拠点でもある。ようこそ美少女戦隊へ。」


 アメリが右手を差し出してきた。私はアメリとがっちりと握手をした。


 サオリのワープショックから覚めてきた頃から私の頭にはある考えがよぎって来た。これっていけるんじゃない?サオリの魔法を使えば何日もかかってたリーベの行き来が一瞬でできる。人間を運べるって事は馬や馬車も運べるよね。


「ねえ。サオリ。ワープってサオリの掴んだものなら一緒にできるんでしょ?大きな物でも大丈夫なの?」


「うん。メガロシャークと言ってこの家より大きな魔物を運んだ事もあるよ。」


 それを聞いて思わず私は微笑んだ。リーベからの帰りはサオリの能力で一瞬じゃん。それどころかこれからもサオリに頼めばどこでも一瞬じゃん。美少女戦隊に入れて本当に良かった。


「えー。そう言うわけで今日から仲間になったシーナだ。仲間と言ってもオレ達みたいな冒険者と違ってシーナは学生で商人になる勉強をしてるんだ。だからオレ達と一緒にダンジョンに潜る事もなければ一緒に生活することも無いけど仲良くしてやって欲しい。

 シーナ。挨拶して。」


「シーナと申します。私は冒険者じゃないので今はみなさんと一緒に戦う事はできませんが、近い将来にはこの国一番の商人になりますのでその時にはみなさんを経済的な面でサポートできると思うので仲間に入れてやってください。」


 私が挨拶するとみんなは拍手で温かく迎えてくれた。そして順番に挨拶を返してくれた。リオはスタイルもいいし綺麗なお姉さんて感じかな。セナはかわいい妹タイプか。エイミーも妹タイプかな。マーム?綺麗だけどリアルにお姉さんじゃないの。まあ大人の女性もいるのね。そして最後はエイハブ。え!激渋なおじさま。ちょっとタイプかもって。えー!ていうか、なんで男がいるの?あとでアーリンに教えてもらうまでこの二人のアダルトな人達は謎だった。もっとも教えてもらった後の方がいろいろと謎があるんだけど(笑)。


「よし。今日は久々に天ぷらでも作ろうかな。船長はグラスとお皿をテーブルに配って。マームはオレを手伝って。シーナは今日はお客さんなんだからそのまま座ってて。」


 アメリの指示で二人のアダルトはてきぱきと働き始めた。なあんだこの人たちは家事の手伝いの人達だったんだ。でないとおかしいよね。子供達だけの集団に大人が二人って。


「グラスと皿は行きわたったわね。じゃあとりあえずパンとエールを渡すから順番に取りに来て。あっ。エイミーはミルクだったわね。まずは今日のお客様のシーナからね。」


 厨房のカウンターから顔を出してアメリが言った。言われた通りに私はグラスと皿を持ってカウンターに行った。アメリはグラスにキンキンに冷えたエールを注いでくれた。パンも二個皿に盛ってくれた。パンもまるで焼きたてのように熱々だ。ていうか焼き立てでしょ。これは。その前に今何にもない所から出したよね。魔法?私が混乱しているうちにアメリとマーム以外の全員に行きわたったみたいだ。


「じゃあ今度はオードブル出すよ。またシーナから取りに来て。」


 そう言ってアメリはハムと野菜のサラダを渡してくれた。ハムがいっぱい入ったおいしそうなサラダだ。早く食べたい。ていうかいつこれを作ったの?調理している時間はなかったよね。再び混乱している内にみんなにサラダは行きわたった。


「じゃあ。乾杯しようか。」


 そう言ってエールの入ったグラスを持ってアメリとマームが出てきた。


「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」


 私は両隣の人とグラスを打ち付けた。まずはエールからだ。一気に飲んだ。くーっ。良く冷えていて旨い。おそらく魔法で冷やしたものだと思うけどこんなに冷たいエールは初めてだ。エール自体も良い品質の物なんだろう。次にサラダをフォークで一口食べてみた。これまたなんて旨さだ。野菜はまるで採りたてのようにパリパリで瑞々しい。その瑞々しい野菜にちょっと塩っけのあるハムが良く合ってる。食通の私にはわかる。このハムも高いやつだと。それにこのサラダ全体にかけられてる油が良い仕事をしてる。これはコリーブの実から作った貴重な油だろう。柑橘系の果汁もはいってるな。食通の私の舌はごまかせないよ。


 なんて事を考えながらサラダを貪り食ってたらあっと言う間になくなった。


「おや。シーナさん。もう食べたんですか。アメリさんの作る料理は美味しいでしょう?おかわりは自由ですよ。」


 そう言ってエイハブは自分はエールのおかわりをしていた。この男は執事かなんかと違ったのか?真っ先におかわりするなんて態度のでかい。もしかして違うの?


 エイハブに促されて私もサラダのおかわりをした。厨房のアメリは気前よくサラダを私の皿に盛ってくれた。い、今のも何もない所から出したよね。もう考えるのもめんどくさくなった。アメリはそう言うもんんだと考える事にしよう。


「さあ。第一段が揚ったよ。第一段は魚だよ。」


 アメリが厨房から声をかけると、マームが大皿いっぱいの天ぷらと言う物を持って来た。大皿から各自で自分の皿に取って食べるスタイルらしい。頭と内臓を取った小魚らしいがなんかキツネ色をした物で包まれていた。私はフォークで刺して恐る恐るかじってみた。


「熱っ!」


「あ。シーナ。熱いから気をつけて。」


 サオリが注意してくれた。


「熱いけど旨い。」


 私はハフハフしながら食べた。


「シーナさん。そのまま食べても旨いけどこの塩やレモンの絞り汁をつけるともっと旨いですよ。」


 アーリンが教えてくれた。テーブルの上には小皿がいくつもおかれており調味料がそれぞれ入っていた。言われた通りにまずは塩をつけて食べてみた。


「うんまーい!」


 思わず声に出してしまった。この天ぷらと言う食べ物と塩のコンビは最強だわ。あっさりとした白身の魚はそれだけでも旨かったんだけどもう一味欲しかったんだ。今までいろんな魚の料理を食べてきたけどこの天ぷらが一番旨いと思うわ。お魚はほっこりとして甘味まで感じるわ。


「アメリ。旨いよ。私が今まで食べた魚料理で一番だわ。」


 感激した私は厨房の中のアメリに声をかけた。


「そうだろう。そうだろう。でも感動するのはまだ早いぞ。次は肉だ。」


 アメリがそう答えるとまたマームが大皿を持ってきてくれた。


 例によってまずは何もつけずに食べてみた。お魚も旨かったが、あっさりとしたお魚とは違って濃厚な旨味の肉汁が一気に口の中に広がった。こ、これは旨すぎる。


「これはこのソースをつけると良いよ。」


 サオリが真っ黒な液体の入った小瓶を差し出してくれた。ちょっとだけつけて食べてみた。さらにうまーい。このソースと言う液体自体が旨い。私はもう一度ソースをつけようとした。


「二度づけ禁止よ。」


 サオリにたしなめられた。一度口をつけた物は不衛生だからみんなで使うソースにつけては駄目と言う事だ。なるほどね。


「今度は海老だ。」


 アメリが厨房のカウンターから言うとマームがまた大皿を運んでくれた。


 エビってあれね?赤くて虫みたいな奴。山育ちの私にとってエビやカニって王都で初めて食べたごちそうだわ。これは食べる前から旨いって分かるわ。私は頭から貪り食った。


「あ、頭は残したほうが良いですよ。」


 アーリンがそっと教えてくれた。なるほど私以外のみんなは頭と尻尾を取って食べている。


「でもこの頭の所に入ってる味噌が旨いんだよ。」


 そう言ってサオリも頭を食べた。


「どう?シーナ。美味しい?」


「旨い。うまーい。こんな旨い料理。リーベでもキンリーでも食べた事がないわ。アメリってもしかして料理の天才?」


 厨房から出てきたアメリを私はベタ褒めした。


「いやー。それほどでもないよ。これはオレやサオリのいた国の料理を再現した物なんだ。あとこれも旨いよ。野菜の天ぷらだ。」


 そう言ってアメリが今度テーブルに置いた大皿にはイモやきのこの天ぷらが盛ってあった。


「あ。このイモはほくほくして美味しい。」


「このきのこも美味しいよ。シーナ。」


 一通り料理が出そろったみたいでアメリとマームも席に着いた。


「アメリ。あなたいったい何者なの?」


 隣に座ったアメリに私は問いただした。私も一応商人の娘としてそれなりにこの世界のごちそうって言われるものを食べてきたつもりだけど、こんな料理は見たことも聞いた事もないわ。そしてこの料理の美味しさの秘密は素材の抜群の鮮度にあると見たわ。まるで今の今で生きていたような。


「え。ただの冒険者だけど。あ。料理屋の娘だから料理には多少は自信があるよ。」


「この料理は凄いわ。いや。凄すぎる。お嬢様の私だってこんな美味しい物を食べた事はないわ。おそらくだけど王侯貴族の方々だってこれほどの物を食べた事は無いと思うわ。」


「うん。お貴族様には作った事ないからね。」


「いやそう言う意味でなくて宮中料理を超えているって言ってるの。」


「いや。いや。褒め過ぎだって。」


「褒め過ぎじゃないわ。事実よ。よし。決めた。次のビジネスはアメリの料理をキンリーで売る事にするわ。こんなに旨いんだもの。流行る事間違いなしだわ。私にも作り方を教えなさいよ。」


「無理よ。」


 私が隣のアメリをつつきながら言ってるとテーブルの向かいから声がかかった。


「えーと。たしかセナさんだったよね。何が無理なの?」


「うん。セナで良いよ。シーナ。あらためてよろしくね。

 無理なのはこの料理はアメリじゃないとできないからよ。まず、この料理に使ってる油だけど。最初の料理のサラダに使われていた油と同じものなのよ。貴重で超お高いコリーブの実を絞って作った物よ。当然コリーブオイルも超お高いのよ。だからサラダとかにも使われるけどちょっとしか使われないわ。当然ね。贅沢品だから。それをこのおバカは大鍋にいっぱいなみなみと入れてるのよ。いったいいくらかかったのか。考えただけでも恐ろしいわ。」


 衝撃の事実だ。コリーブオイルが貴重でお高いのは私でも知っている。だから最初の料理のサラダに使われてたのが分かって感動したのだ。その貴重なコリーブオイルを大鍋いっぱいってどれだけのお金がかかってるんだ。


「いや。食べれる油って他にないからこの世界では。」


 アメリがなんか言い訳がましい事を言ってるけど、いくら美味しくてもこんなアホな料理は王侯貴族しか食べれないだろう。


「次に料理の素材だけど、凄い新鮮だと思ったでしょ?普通は塩漬けや干し物にされている魚や肉がまるで今獲れたばっかりみたいに。」


「うん。思った。新鮮でめっちゃ美味しいわ。」


 私は魚の天ぷらを口に運びながら言った。


「これ。本当に獲れたてなのよ。」


 同じく魚の天ぷらを口に運びながらセナは言った。


「え?どういう事?」


「詳しい事はアメリに聞いて欲しいんだけど。これはアメリの能力なの。何もない所から物を出すのをシーナも見たでしょ。」


「ええ見たわ。なんか良くわからないけど凄い魔法ね。」


「うん。その魔法だけど。オレは物を時を止めた状態で異空間にしまえるんだ。だから新鮮なんだよ。」


 セナに代わってアメリが説明した。


「つまり。こいつは人間冷蔵庫なのよ。キンキンに冷えたエールもホカホカの焼き立てパンも自由自在に出せるのよ。」


 セナが言うと。


「人間倉庫でもあるわね。アメリのアイテムポケットには家よりもでっかい魔物がごろごろと入ってるんだから。」


 サオリも答えた。


「なんだよ。人の事を便利な道具みたいに言って。」


 アメリはちょっとふくれて言った。


 え。ちょっと待って。ようするにアメリのアイテムボックスとやらには大きな物でもなんでも新鮮なまましまえるんだよね。何その便利すぎる能力。どこでも自由に行けるサオリと組めば、いやもう組んでるか。どこにでも一瞬で多量の荷物を新鮮なまま運べるじゃないか。これってビジネスチャンスだわ。私はにやりと笑った。


「あとオレとサオリはあまり商売に利用しないように。オレの能力もサオリの能力も他人には知られたくないんで。」


 私の思った事を見透かされたようでアメリにいきなり釘を刺された。


「オレ達もバカじゃないからこの能力を使えばいくらでも儲けられるのはわかってるよ。だけどオレ達は商売人じゃないんだ冒険者なんだ。あえてこの能力は金もうけには使ってないんだ。」


「いや。バカでしょ。楽に儲けられるのにあえてそれをしないなんて。そう言う私もそのバカの一人なんだけど。」


 セナが言った。なんだかんだ言ってもセナも冒険者なんだよな。


「じゃあ。リーベの町からの戻りなんだけど、また危険を冒してサオリとアーリンとで三日かけて戻ってくれば良いの?」


「うん。まあそれはシーナもオレ達の仲間になった事だし、サオリのワープを使っても良いんじゃないかな。ただしワープの事はくれぐれも内密でね。」


「うん。わかったわ。」


 良かった。アメリが頭が固く無くて。超便利なサオリの能力を私の商売に使うなって言われたらどうしようかと思ったわ。もともと命がけで行く覚悟はあったんだけど。一瞬で行けるのがわかっていて今更三日もかけて行けないわよね。人情として。


「ねえ。シーナも私ほどじゃないけどけっこう美人よね。」


「あ、ありがとう。リオだっけ?」


「うん。リオよ。美少女戦隊ナンバーワン美女の。」


 今まで黙っていたリオが私に話しかけてきた。


「それで私が美人だったらなんなの?」


「うん。この美少女戦隊はアメリの趣味でとびっきりの美少女ばかり集められてるでしょう?」


「そう言われれば確かにそうよね。まあ中でも私が一番きれいだけど。」


「一番スタイルの良い私が新しい商売を考えたんだけど。みんなの絵を描いてもらってそれを売れば売れるんじゃない?」


「あ、それはいい考えね。あと、売り上げで誰がナンバーワン美女かはっきりするわね。私がナンバーワンになったら先輩方に申し訳ないんだけど。」


「リオもシーナも何をしょった事を言ってるのよ。絵だとそんなにたくさん描けないでしょ。私の絵がすぐに売り切れるじゃないの。」


 そう言うセナもずいぶんとしょってるんだが、確かにセナの言う通りだ。


「そうよねえ。私の美しさを王都のみなさんにも知ってもらおうと思ったのに残念ね。」


 私達が残念がってると


「オレの魔法でなんとかなると思うよ。」


 また何も無い所から何かを出しながらアメリが言った。


「これはキンリーの画家に描いてもらった物なんだけど。良い?見てて。」


 アメリは自分の肖像画の上に左手をかざして何やら呪文を唱え始めた。


「フルコピー!」


 謎の呪文を唱えると左手が光出した。左手が光を弱めていくと同時に今度は右手が光始めた。右手も光を弱めていくとその下の紙にアメリの肖像画が現れた。


「「「「「「「「おお!」」」」」」」」」


 かたずを飲んで見守っていた私達はビックリして思わず声をあげた。


「何?今の魔法は。瞬間で絵を描いたの?」


「うん。正確には描いたんじゃなくて写したんだけど。この魔法は本を模写するのに使ってたんだけど、絵にも応用できるんじゃないかと思ってやってみたらうまくいったよ。」


 私の問いにアメリは得意げに説明してくれた。これはいけるわ。


「私の次の商売は決まったわ。みんなも絵を描いてもらって。私がこれをキンリーの町で売りさばくわ。」


「おもしろい。どうせなら誰の絵が一番売れるかみんなで競争しようじゃないか。一番売れた人には売り上げの中からボーナスを出すって言うのはどう?もちろんシーナも参加して。」


 私の決意にボスのアメリも賛成してくれたがアメリもナンバーワンになるき満々だ。


「あのう。わしはどうすればいいんじゃろか?」


「もちろん。船長も参加よ。船長の絵なら女性にも買ってもらえるじゃない。」


 おずおずと質問してきたエイハブにアメリが答えた。


「よし。明後日は一日休みにしよう。みんな絵を描いてきてもらって。」


「「やったー!」」


 思わぬ休みをもらえてリオもセナも大喜びである。私は毎日が休みみたいなもんだけど私もおめかしして絵を描いてもらいに行こうっと。




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