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第199話 決着

 


 黒髪サオリの合図と同時に私は右手に全力を込めた。わかってはいたがやっぱり糞漢ガンディーノの右手はピクリとも動かない。


「ふんそれで全力かい?」


 糞漢ガンディーノが鼻で笑った。


「3」


 審判の黒髪サオリがカウントを数え始めた。


「2」


 私と糞漢ガンディーノに動きはない。


「1」


 相変わらず真ん中で手を組んだままだ。


「0」


「よし!いけー!」


「3秒経ったぞ!ガンディーノ!」


 3秒経っても私達には動きはなかった。


 それからしばらく経っても動かない。


「おい。どうしたんだ?おかしいじゃねえか。審判のおねえちゃん。ちょっと調べてみろよ。」


「そ、そうね。」


 酔っ払いの指摘に黒髪サオリもようやく異常に気付いた。


「ア、アーリン!どうしたの?」


「う、うーん。サオリさん。大丈夫です。じゃあ勝たせてもらいます。せーのっ!」


 私が右手に力を込めると大男の糞漢ガンディーノは右手の甲をテーブルに着けるだけでなく簡単に体ごとひっくり返った。


「なんだってー!」


「どうなってるんだー!」


「おい!ガンディーノどうした!」


「金返せー!」


 番狂わせに酔っ払い達は大騒ぎだ。


「やかましい!これがわたし達美少女戦隊の実力よ!あっ!ごめん!アーリン様の実力よ!文句があるならかかってこいや!」


 お金を握り締めた審判の黒髪サオリが吠えているが、仕事をしたのは私なんですけど。


「でも独り占めは良くないわね。このお金でみんなで飲んで!」


 そう言って黒髪サオリは白銀貨を10枚ほどカウンターのギルド職員に渡した。ギルド職員は目をぱちくりしていたがただで酒が飲めるとわかった酔っ払いどもはさらに大騒ぎだ。元々はあんたらのお金なんだけどね。


「じゃあ。ガンディーノが目を覚ます前にづらかろうか?」


 大騒ぎの中、黒髪サオリが私に耳打ちをした。


「ええ。そうですね、いろいろとめんどくさそうだし。」


 私達は喧騒の冒険者ギルドを後にした。酔っ払いどもは私達と飲みたがったがそれを振り切って、お金を握った黒髪サオリを先頭に私達は冒険者ギルドを脱出した。


 そして今は町はずれの雰囲気の良いレストランに入っている。雰囲気が良いと言う事は客層が良いと言う事だ。つまり荒くれの冒険者どもが来ないお店って事だ。


「ねえ。いったいどういうからくりでガンディーノはひっくり返ったの?」


 席に座るなりお嬢様シーナが聞いてきた。


「魔法でしょ?」


 さすが黒髪サオリは鋭い。


「そう。魔法です。組み合った瞬間わかりました。これは敵わないって。だからサオリさんの作ってくれた3秒はありがたかったです。」


「でしょ?少しはわたしに感謝しなさいよ。」


「え?全くわからないんだけど。冒険者じゃない私にもわかるように説明してよ。」


「ごめん。ごめん。簡単に言うとガンディーノの敗因は勝てるのにすぐに私を倒さなかったって事ですね。3秒もあれば十分です。サンダーの呪文を唱えられました。ただ私も感電するからあまりやりたくなかったんですけどね。握った手から電流を流してやりましたよ。」


「そうね。両方とも感電して気絶してたよね。でも自分だけ気絶から覚める確信はあったの?」


「確信はないですよ。これは賭けですよ。やらなきゃ私がサオリさんに殺されてたでしょ?だから一か八か。」


「酷いわね。殺しはしないわよ。ただ失った白銀貨分は働いてもらうけどね。」


「どっちにしろ、嫌ですね。後、確信はないけどたぶん大丈夫だと思ってました。なぜなら私はサオリさんやアメリさんにいつも感電させられているから大分耐性が付いてると思ってましたし(笑)。おそらく初めて感電するガンディーノといつも感電させられて耐性の付いた私じゃ同じサンダーを喰らっても私の方が耐えられると思ってました。ただ個人差もありますから思わず多くの電流を流しすぎて私まで気絶したのはちょっと誤算ですけどね。」


「説明を聞いても全くちんぷんかんぷんなんだけど。電流って何?」


「うーん。口で説明しても分からんか。じゃあ実際に体験すれば解るよ。」


 そう言って黒髪サオリはお嬢様シーナの手を握った。


「ギャー!」


 これもおそらく初めての経験であろうお嬢様シーナは大声を出した。


 お店の良い雰囲気はいっぺんで台無しである。店員さんが何が起こったとすっ飛んで来た。私と黒髪サオリは店員さんに平謝りした。


「どう?これが電流よ。これの何十倍の威力のをアーリンは流したの。」


「何十倍!それじゃいくら大男でも堪らないわね。」


 ぐったりとしたまま、お嬢様シーナは答えた。


「そうよ。実戦ではさらに何百倍のを流してるわ。強力な魔物もイチコロよ。」


「本当にあんた達は凄いんだね。尊敬するわ。」


「ま、まあね。」


 黒髪サオリはちょっと照れて頭をかいた。


「よし!決めた!私はあんた達に弟子入りするわ。私にもそのビリビリを教えてよ。」


「「え?」」




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