第190話 オーク軍団
私はアーリン。美少女戦隊一の魔法の使い手よ。剣はさすがにリオやアメリの脳筋組に敵わないけど。魔法なら誰にも負けないわ。
え?サオリに負けてるんじゃないかって?サオリのは魔法じゃないわ。スキルよ。卑怯なチート技よ。
え?魔力量でもアメリに負けているって?アメリは魔力量が多いだけよ。いくらすごいポテンシャルがあっても使いこなしていないわ。脳筋じゃ高度な魔法は使いこなせないってわけよ。
そんな私が今回参加するのは黒髪をキャプテンとするチームBよ。他の隊員は守銭奴に骨だわ。骨以外は、剣よりも魔法を得意とする言わば頭脳班ね。男女達肉体班はダンジョンに行くけど、私達頭脳班は今日はオーク退治よ。いくらチート持ちの黒髪でも行った事のない所にはワープできないらしいので、今日は早朝から馬車に乗って出発よ。馬車は黒髪と守銭奴がかわるがわる運転したわ。冒険者アカデミーで習ったらしいけど馬車の運転までできるなんてすごいわ。さすがA級冒険者ってところね。
そしてこの馬車が素晴らしいの。男女が特注で作らせた物なんだけど。すごい乗り心地が良いの。車輪には柔らかくてすごく伸びる魔物の皮がまいてあって、それが路面の細かいショックを吸収してくれるの。あと男女がサスペンションって言っていたバネも付いていて大きなショックも吸収してくれるわ。そんなわけで朝早かった事もあって私は不覚にも馬車の中でぐっすりと眠ってしまったわ。眼を覚ました時には目的地のコゼ村に着いていたってわけ。道中の景色を楽しめなかったけど、疲れが取れたから結果オーライね。
コゼ村ではすでに村人は避難して命知らずの冒険者のパーティが何組かいるだけだった。
「どうする?他にもパーティがいるけど、彼らと共闘する?」
守銭奴が私達に聞いてきた。
「まあ、待って。まずは情報収集よ。オークの集落の情報を集めてから考えよう。わたしと船長で実際に見てくるわ。アーリンとセナは聞き込みをお願いするわ。」
チームリーダーの黒髪の指示で私達は聞き込みに行った。と言っても村人は既に避難して誰もいない。いるのは荒くれの同業者達だ。
「あのう。すみません。」
私は近くにいた二人組の荒くれに声をかけた。
「ああ。なんだ?お姉ちゃん。逃げ遅れたのか?」
「いや。そうじゃなくて。オークの事について教えてもらいたいんですけど。」
「オークだと。お前たちもしかして冒険者か?」
「そうですけど。」
「それならなおさら早く逃げたほうが良いぜ。俺らも今引き上げようとしていたところだぜ。」
その荒くれの話を要約すると、オークの集落は冒険者ギルドで聞いてきたのよりもはるかに大きく、なおかつそこにいるオークの数も10や20どころでない大量だと言う事だった。
「命あっての冒険者だぜ。あれは集落じゃねえよ。軍団だ。俺達冒険者レベルで潰せるもんじゃねえぜ。都の騎士団の一個師団がいるぜ。」
もう一人の荒くれもオーク討伐は不可能だとまくしたてた。
他のパーティにも聞いてもオークのあまりの数に討伐をあきらめてひきあげると言う事だった。これは厄介ね。多量のオークにびびった他の冒険者達は使い物にならないわね。私達だけでやるしかないわね。
「セナさん。なんか厄介な依頼みたいですね。どうします?私らも逃げ帰ったほうが良いですかね?」
「うーん。サオリ達の報告を聞かないとなんとも言えないけど。他の冒険者がビビって逃げるって言うんなら逆にチャンスだわ。私達で賞金を総取りよ。」
意外な事に慎重派の守銭奴がやる気満々だった。やっぱり金に目がくらんだのか。まあ私も逃げる気はないわ。私達美少女戦隊は受けた依頼は100パーセント達成するのよ。
しばらくして黒髪と骨が戻って来た。
「今、わたしと船長で見てきたけどあれは集落じゃないわね。オークの軍団と言っても良いわね。数も10や20じゃないわ。推定だけど100はゆうに超えてるわね。」
「やっぱりそうですか。他の冒険者達も同じことを言ってました。」
「それでアーリン。他の冒険者達はどうするって?」
「みんな、逃げるって。」
「まあ、そうだろうね。命あっての冒険者だもんね。」
「それでどうします?私らも逃げますか?」
「逃げる?バカ言っちゃいけないわ。わたし達美少女戦隊の辞書に逃走の文字はないわ。」
「でも、100対4はさすがに厳しいんじゃないですか?」
「4じゃないでしょ。うちには元気の良いのがまだいるでしょ。」
「あっ!アメリさん達チームAの事ですね?」
「そうよ。助太刀を頼むのは少々癪だけど、今はそんな事を言ってる場合じゃないよ。アーリン以外のみんなも異存はないわね?」
「「「おう!」」」
「よし。もうダンジョンから戻ってる時間だと思うからさっそく迎えに行ってくるわ。」
言うなり、黒髪はワープして私達の前から消え去った。さすが黒髪。できる子。私達のリーダーだわ。行動が迅速。
しばらくして黒髪が男女達を連れてワープで戻って来た。
「話はサオリから聞いたわ。100匹以上のオークとなるとさすがに厄介ね。まともにぶつかればオレ達に勝ち目は無いね。と言う事で奇襲しかないわね。」
リーダーの男女を司会として急遽作戦会議を開いた。
「あのう。一旦戻って冒険者ギルドに助けを求めると言うのはないんですか?」
犬女が正論を吐いたがもちろん却下される。
「ダメよ。オーク軍団がいつまでもここにとどまっているとは限らないわ。助けをもとめに行っている間に動き出されたら被害が出るわ。それに一か所に固まっている今が殲滅のチャンスじゃないの。」
「エイミー。あんた。怖くなったの?」
黒髪にはやんわりと理論的に脳筋には半ばバカにされて。
「怖くはないですけど。多勢に無勢ですから。」
涙目で犬女が答えた。
「エイミー。心配ないって。うちには規格外のモンスターが二人もいるのよ。アメリとサオリがなんとかしてくれるって。」
脳筋の言うとおりだ。この異世界人コンビならなんとかしてくれるだろうと言う安心感がある。
「規格外のモンスターって誰の事やねん。神に選ばれし神の子ならここにいるけど。まあ、最悪の場合は規格外のモンスターのワープで逃げれるから大丈夫よ。
それで作戦だけど、奇襲と言えば夜襲よね。みんな夜まで体を休めといて。特にマームとエイミーは魔力量がカラになっているから安静にしてて。眠れない人はアーリンに魔法をかけてもらって。」
私達は農家の軒先で体を休める事にした。
休めと言っておきながらそう言った本人が黒髪とどこかに行こうとしていた。
「アメリさん。どこに行くんですか?」
「うん。オレはまだオークの集落見てないからね。明るいうちに下見しとこうと思って。」
「じゃあ。私も連れて行ってください。」
「良いけど。絶対に見つからんように頼むよ。見つかったら向こうも警戒するから奇襲の意味が無くなっちゃうからね。」
「ええ。任せてください。」
こうして私と男女黒髪の3人でオークの集落の下見に行く事になった。
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