第188話 チームAB
「みんな、おめでとう。これで2軍のみんなも廃坑のダンジョン攻略者って事だ。もう1軍だの2軍だののクラス分けはいらないわ。オレ達全員ただの美少女戦隊だ。」
ダンジョン攻略を終えて帰宅後の夕食の席で男女が言った。
「え!それってどういう事ですか?」
男女の言葉に私は思わず聞き返した。
「ああ。オレ達1軍もアーリン達2軍と同じD級からやり直して8人全員でS級を目指すって事だ。」
「ちょっと待って。わざわざ降格する必要はないわ。依頼料だってさがるし。」
聞かされていなかったのか、慌てて黒髪が口を挟んだ。たしかに私達が2軍でなくなるのはうれしいけど、1軍までわざわざ降格するのはどうかと私も思う。
話し合いの結果、A級でしか受けれない依頼もある事だし降格はしない事になった。その代わりに男女の提案どおり1軍2軍のクラス分けはやめてAチームBチームと単純に2つのチームにする事になった。その場合、受けれる依頼はD級の物となるから実質降格と同じだけどA級の肩書は残った。まあD級なら大概のダンジョンに潜れるから支障はないけどね。
「それでどうやってAチームとBチームに分けるんですか?」
「そうね。キャプテンをABそれぞれに決めておいて、後はキャプテンの決めた仕事にそれぞれやりたい方に自由に参加するんで良いんじゃない。」
「じゃあ。そのキャプテンと言うのはどうやって決めるんですか?」
「もちろん投票よ。アーリン。あんただってキャプテンに選ばれる可能性はあるわ。」
男女のいた世界ではなんでも公平に決めるのが当たり前らしい。序列や身分で決めるこの世界とは大違いだ。投票の結果、男女と黒髪が選ばれた。まあ二人の実力を考えれば妥当な線だろう。しかしチート能力持ちの二人が分かれると言う事は戦力が半減すると言う事でもあるのはこの脳筋は分かっているのであろうか?
「あまりうれしくはないけど選ばれた以上は全力を尽くすわ。それでAチームのキャプテンさんは明日はどうするの?」
黒髪は全員に挨拶した後、男女に問いかけた。
「もちろんダンジョンよ。迷いの森がまだ未攻略だからね。」
「やっぱりダンジョンか。アメリらしいわね。じゃあ、わたしはオークの集落潰しにでも行くわ。」
黒髪は男女と被らないように冒険者ギルドで前もって見つけておいたクエストを持ってきた。オーク自体は弱いと言えど集落となると何匹いるかわからない。中々に危険度の高いクエストだ。もう一方のダンジョンの方は何が出るかわからない怖さがある。私は考えた末に黒髪の方に行く事にした。何かあった時の黒髪のワープはやはり魅力的だ。私は安全を第一に考えているんだ。死んだら元も子も無いからね。
結局のところ、アメリの率いるチームAは男女、脳筋、幽霊、犬女の4人。サオリの率いるチームBは黒髪、守銭奴、骨、私の4人に決まった。
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翌朝、オレ達チームAのメンバーはキンリーの町のワープポイントまで歩いてきていた。ちなみにサオリの率いるチームBは早朝から馬車に乗って既に出発していた。チームBの方は泊りがけの遠征であるからサオリのワープはあてにできない自分の足で歩いて行くしかないのである。そうは言っても便利なワープポイントがあるわけだからそんなに不便は感じない。ワープポイントを通り抜けダンジョンの町タイタンに来た。沼地のダンジョンは既に攻略していたがマームとエイミーの事を考えて沼地のダンジョンに再度挑戦する事にした。
「オレとリオは2度目だからこのダンジョンの注意事項を言うと、出てくる魔物はヘビとワニだから、剣ではあまりダメージは与えられないわ。有効なのは雷魔法ね。ミスリルトカゲほど強くないから雷魔法で一発よ。」
「ヘビはわかりますけどワニって何ですか?」
オレがダンジョンの入り口で説明しているとエイミーが質問してきた。
「まあ簡単に言うとトカゲの化け物ね。口がでっかくて牙がすごくて。奴らは一見して鈍そうなんだけど瞬発力は凄いから油断禁物よ。」
オレは地面に絵を描いて説明した。
「そんな凄いのにミスリルトカゲより弱いんですか?」
「まあ、ミスリルトカゲが強すぎるって事ね。それをやっつけてきたんだからエイミー達の実力は凄いって事よ。でも油断は禁物ね。」
オレは褒めつつも油断をしないように釘を刺した。
「エイミー。あんたサンダーは?」
「はい。できます。」
「じゃあ。あんたは真っ先にばんばん魔法を撃って。魔法は使えば使うほど上達するから。他のみんなもエイミーの撃ち漏らしを魔法で攻撃よ。」
「「「おう!」」」
「あと、言い忘れてたけど、ぬかるみが深いからロボには木道から出ないように言っておいて。」
「はい。」
エイミーとロボ、マーム、リオ、オレの順番で進む事になった。オレとリオは後ろに回って補助に努める事にした。
しばらく進むとロボが立ち止まってうなり始めた。
「ダンジョンアリゲーターが2匹いるよ!」
オレが警告を発すると同時に沼地の中からそいつらは現れた。
「ド、ドラゴン!」
エイミーが大声をあげた。リオと同じ反応かよ。やっぱりドラゴンに見えるんかい。
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