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第187話 ラストボス

 


 脳筋リオ男女アメリの失踪事件から一か月経った頃、ようやく私達美少女戦隊2軍にもボスのいる最下層階への挑戦が始まった。ちなみに脳筋リオ男女アメリの二人はすぐに1軍に復帰して、1軍はラストボスまでとうに倒していた。ここまで来るのは私達2軍にとってはなかなか困難な場面も多々あったが、私達には先に攻略を進めている先生がいた。攻略法はばっちりだと言う事だ。


「アメリさんの説明によるとこの階はミスリルトカゲが出るみたいね。ミスリルトカゲはどう攻略しようか?」


「サンダーの魔法で仕留めようよ。アーリン。」


 私の問いかけに最近魔法を覚えて魔法を撃ちたくてたまらない犬女エイミーが答えた。


「アメリに聞いたけどミスリルトカゲは中々に素早いから魔法は簡単には当たらないらしいよ。ここはサンダーソード一択でしょ。」


 同じく剣に電撃を絡めて斬るサンダーソードをマスターしたばかりの幽霊マームが答えた。


「わしもマームさんに賛成。」


 こちらも苦手の魔法を習得してようやくサンダーソードを使えるようになったエイハブが言った。


「そうね。素早くて硬いミスリルトカゲはサンダーソードしかないよね。エイミーとロボには後ろにまわって援護してもらおうか。」


「ちぇ。私とロボも前に出て活躍したかったな。」


「活躍したかったらサンダーソードを早くマスターすることね。」


 私はそうは言ったが、ここ最近の犬女エイミーの進歩は凄い。サンダーソードもすぐにマスターするだろう。


「じゃあ、いつものようにわしが先頭で歩きますね。」


 探索能力に優れたエイハブが先頭で歩き始めた。エイハブの後ろは私と幽霊マームが続き、犬女エイミー子犬ロボは最後尾だ。エイハブと同じく探索能力に優れた子犬ロボが最後尾にいれば後ろから不意打ちされることもない。


「みんな。止まって。あの岩の影に一匹隠れています。」


 しばらく歩くと、先頭のエイハブが立ち止まって警告を発した。


「よし!みんな!打合せどおりサンダーソードで行くよ!呪文を唱えて!」


 私の指示で全員呪文を唱え始めた。さすがに脳筋リオ男女アメリのようにサンダーソードを長時間保つのは私達には無理だ。斬る直前に電流を流すしかない。そうは言っても前もって唱えておかないといざと言う時に間に合わない。呪文の前倒しだ。


「じゃあ私があぶりだしてあげる。サンダー!」


 そう言って犬女エイミーが岩に向って魔法を撃った。


「グギャー!」


 岩に隠れていようと電撃は金属に向って流れる。金属の塊のようなミスリルトカゲに易々と当たった。不意を突かれたミスリルトカゲは岩陰から飛び出した。さすが最下層階の魔物だ。犬女エイミーごときの魔法で一発で倒れたりはしない。しかし効いていないわけではない。動きが鈍っている。チャンスだ。


「「「サンダーソード!」」」


 私達3人は一斉に自分の剣に電流を流してミスリルトカゲに斬りかかった。ミスリルトカゲはあっさりと息の根を止めて光の球になって消えた。後には魔石とミスリル鋼がドロップしていた。


「ミスリルトカゲもたいした事ないわね。」


 ドロップ品を拾いながら犬女エイミーが言った。


「たいした事無いのは、私達が電撃に弱い事を知っているからよ。知らなかったら硬いし素早いしで苦労すると思うよ。」


 私は犬女エイミーが調子に乗らないように釘を刺した。


「はい。はい。アメリ達1軍様のおかげね。」


 おざなりに犬女エイミーは答えた。急速に力をつけてきた犬女エイミーは最近調子に乗っている。調子に乗るのは良いけど慢心にならないように気をつけさせんと。


「エイミー。わかっているなら気をつけてね。」


「はーい。」


 不満気に犬女エイミーは答えた。この糞犬女はいつか締めんといかんな。


「じゃあ。次行きますか。」


 にらみ合っている私と犬女エイミーを無視してエイハブが歩き出した。


「お、おう!」


 あわてて私と犬女エイミーは後を追った。


「曲がり角の影に今度は二匹いますね。」


 再びエイハブが警告を発した。さすがに曲がり角の向こうまでは魔法を飛ばせない。どうしたもんかと思っていると、今まで大人しくしていた子犬ロボが急に走り出した。


「あっ!ロボ!」


 犬女エイミーが慌てている所を見ると、犬女エイミーの指示ではないようだ。私達は慌てて子犬ロボの後を追った。子犬ロボは曲がり角の手前で止まると威嚇の吠え声をあげた。レベルの低い魔物ならそれだけで足がすくんで固まってしまうだろう。だがさすがにミスリルトカゲはそんな事ではひるまない。逆に怒りもあらわにして曲がり角の影から飛び出してきた。私はあわてて呪文を唱え始めた。




 二匹のミスリルトカゲは子犬ロボに向って来た。


「buuooow!」


 魔法?子犬ロボが吠えると二匹のミスリルトカゲは一瞬動きを止めた。チャンスだ。


「サンダーソード!」


 私は剣に電流を流してミスリルトカゲに斬りつけた。手ごたえあり。ミスリルトカゲに刺さった剣に電流を流し続けた。弱点の電流を体の中に流されてはさすがのミスリルトカゲもたまったものではない。一撃で光の粒子になって消えた。もう一匹のミスリルトカゲはエイハブが首をはねていた。


「すごいね。アーリン。一撃じゃないの。」


「ロボが足止めしてくれたおかげだよ。」


 私は犬女エイミーとハイタッチをした。犬女エイミー子犬ロボを呼び寄せ頭を撫でてねぎらっていた。


「ロボー。あんたのおかげだって。よし。よし。」




 ****************************




 ついに私達は最後のボス部屋にまでたどり着いた。当たり前だがこのダンジョンにはこれ以上先がない。待ち構えているのはこのダンジョン最強の魔物であるミスリルオオトカゲである。ミスリルオオトカゲはミスリルトカゲと基本同じ特性である。電撃が弱点だ。しかしいかんせん体がでかい。頭の先から尾の先まで3メートルはあるだろう。トカゲと名が付くが小さなドラゴンと言っても差し支えないだろう。体がでかいと言う事はHPも豊富だと言う事だ。これは簡単には行かないだろう。私はボス部屋の前で最後のミーティングを開いた。


「いよいよ最後のボス戦ね。みんなも知っている通りラスボスはミスリルオオトカゲよ。弱点は電撃。サンダーソードで斬って斬って斬りまくるわよ。」


「「「おう!」」」


 ここまで来たら細かい作戦なんかいらない。当たって砕けろだ。私はボス部屋の扉を勢いよく開けた。部屋の中央にそいつはいた。わかってはいたがやっぱりでかい。思わずたじろぎそうになるがその弱気を吹き飛ばすかのように私は一番に斬りつけた。


「サンダーソード!」


 剣がミスリルオオトカゲに刺さった瞬間に剣先から電気を流してミスリルオオトカゲの体内に電気を流した。


「グギャー!」


 ミスリルオオトカゲが悲鳴をあげた。効いている。この攻撃はアメリ達に聞いた通り有効だ。しかし、いかんせん敵のHPが多すぎる。効いていると言っても100のHPが99になっただけと言う感じだ。事実ミスリルオオトカゲは悲鳴をあげただけで態勢もくずさず尻尾で反撃してきた。私は剣で受ける事ができたがそのまま後方へと吹き飛ばされた。


 吹き飛ばされた私に代わってエイハブが斬りつけた。同じくサンダーソードによる攻撃だがこれも決め手とはならない。体の硬いミスリルオオトカゲ相手ではいくら達人であろうと一撃で致命傷を与える事も出来ず、私と同じく尻尾の反撃を受けてしまう。


「これは参ったわね。思った以上に強敵だわ。と、とりあえず、距離を取りましょう!」


 私はみんなをさがらせた。


「じゃあ。私の出番ね。サンダービーム!」


 後方で控えていた犬女エイミーが満を持して魔法を撃った。


 ミスリルオオトカゲは弱点の電撃を喰らい一瞬動きを止めたが、それだけだった。すかさず大口を開けて幽霊マームに噛みついてきた。危ない!私は一瞬目をそらしたが、幽霊マームは平気だった。どうやら噛まれる瞬間に幽体に戻って噛みつき攻撃をかわしたらしい。


「やるじゃない!」


「私は完全に怒ったわよ!」


 私が褒めると幽霊マームは狂ったようにサンダーソードをミスリルオオトカゲに繰り出した。自称人間の彼女は幽体の姿を人前にさらすのを極端に嫌う。幽体にさせられてしまったミスリルオオトカゲに恨みの総攻撃を加えているのか。幽霊マームの大攻勢にこれまた人間でないエイハブが加わった。二人?の攻撃は素晴らしかった。なんせ相手の反撃を骨や幽体になってかわすのだ。相手の攻撃でやられる心配がない。攻撃に専念できるってもんだ。私と犬女エイミーは後ろに周り二人?をサポートした。


 しかし二人?の大攻勢は長くは続かなかった。なぜなら二人?ともMPが少なすぎた。あっという間にガス欠だ。サンダーソードがただの剣攻撃になってしまった。ただの剣攻撃で倒せるほどミスリルオオトカゲは弱くない。鬱陶しい二人?を無視して後衛の私達に向って突進してきた。犬女エイミーをかばって子犬ロボが吹っ飛ばされた。


「ロボー!」


 犬女エイミーが叫んだ。


「エイミー!ロボの回復!」


 私は犬女エイミー子犬ロボのケアをまかせてミスリルオオトカゲに斬りこんだ。


「ファイアーボール!そして突きー!」


 アメリの必殺技であるファイアー突きである。もちろんいくら私のファイアーボールであろうとミスリルオオトカゲにダメージは与えられない。ダメージが目的ではない。顔面に炎の塊をぶつけられてはさすがのミスリルオオトカゲも一瞬視界を奪われた。その隙に私はミスリルオオトカゲの左目に剣を突き刺した。私を振り払うようにミスリルオオトカゲは前足を振って来た。私は間髪を入れずに後ろに飛んだ。


「今よ!エイミー!サンダービームで私の刺した剣を狙って!」


「お、おう!サンダービーム!」


 私の指示で犬女エイミーがあわてて魔法を撃った。私の剣はいや私のに限らないが、剣は電気を良く通す。少々外れていてもサンダー自体が剣に向ってくれる。しかも私の剣は目に刺さっているんだ。眼のすぐ奥には脳がある。腹の中を電気が通るのとは訳が違う。さすがにタフなミスリルオオトカゲも脳みそを電撃で焼かれてはひとたまりもない。光の球となって消えた。


 私はへなへなとその場に尻もちをついた。


「やった。やったね。」


 犬女エイミーが抱き付いてきた。


 幽霊マームも抱き付いてきた。


「良かったー。」


 安心した私は思わず泣いてしまった。他の二人も泣いていた。


「見事でした。」


 エイハブが褒めてくれた。


「エイハブさん。ありがとう。さあ。みんな。さっさと戦利品を拾うよ。まごまごしてたら手ぶらで入り口に戻されちゃうからね。」


 ボスを倒したらすぐに戦利品を拾う事もアメリからレクチャーを受けていた。私達が特大の魔石とミスリル鋼を拾い終わったところでサオリのワープのような不思議な力で入り口へと戻された。


 入り口にはアメリ達1軍の4人が心配して待っていてくれた。




 ******************************






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