第184話 帝王イカ討伐
ゴランの家に泊まらせてもらったオレ達は早朝に起きると、オレ、リオ、ゴランの3人で三度海に漕ぎ出した。結局、一泊することになってしまったがサオリ達心配してるかなー。せめて行先だけでも告げてくれば良かったかなー。帰ったらリオと一緒に謝らなくっちゃ。土下座したら許してくれるかなー。電話もない世界だから仕方ないよねー。
海は霧が立ち込み波もなく凪いでいた。観光で来ていたなら、その幻想的な風景に見とれる所だが、今は決戦前だ。そんな風景に見とれている余裕はない。オレ達は一生懸命に船を漕いだ。
昨日のポイントにあっと言う間に着いた。
「どうやらかかったみたいね。」
オレは前方を見据えて言った。そこには巨大な木が何もない海面で立っていた。次の瞬間その巨木は海の中に引きずりこまれた。
「あんな大木を海中に引きずり込むなんてすごいパワーね。アメリ。」
「船だって引きずり込むくらいだからね。あんなものは楽勝でしょう。それより筏の上に乗るよ。リオ。ゴランさん。」
そう言ってオレ達は大木を何本もつないで作った筏の上に乗りこんだ。これらは昨日、村の人達に頼んで総出で船で海まで引っ張ってきてもらった物だ。
「それにしてもあんな大きな化け物イカを釣ろうだなんて、オレ達漁師でも思いつきませんぜ。」
「いや。思いついても普通はやらんでしょ。それをやってしまうのがうちのリーダーの凄い所ですよ。」
二人が褒めてくれてなんだかうれしいけど、浮かれている場合じゃないな。
「うん。ここは漁村だから、釣り針の代わりになる錨もウキの代わりになる大木もゴロゴロあったからね。苦労したのは錨を針のように鋭く研ぐことだけね。村の鍛冶屋さんもビックリしてたよ。それよりも、いつかかったか知らんけど、随分元気だな。一晩中大木を海の中で引きずり回してまだへばらないのか。筏まで引っ張っているよ。」
「本当だ。この筏、引っ張られているね。大丈夫?アメリ。」
「まあ大丈夫だと思うけど。長い間苦しめるのもかわいそうだからとどめをさしてやるか。よし。リオ。交互に電流流してやろう。ゴランさんはさがっててください。」
二人に指示を出すとオレはサンダーの呪文を唱え始めた。
「じゃあ、オレから行くよ。サンダー!」
オレは筏に結び付けてあったロープを握ると握った手から電流を流した。何度も言うようだけどロープにはアイアンボールの体液がしみ込ませてあり、超電導だ。ロープの先にいる帝王イカにまで電流は確実に流れている。何度も何度も電流を流しているとついに大木が海面に浮かび上がった。
「よし。引くよ!」
オレ達はロープを手繰り寄せるとロープを短くして筏に結び直した。さらにサンダーの連続攻撃を続けた。
ついに帝王イカがその巨体を海面に出した。
「チャンス!オレはロープから流すからリオは直接当てて!サンダー!」
「わかった。サンダービーム!」
オレとリオのサンダー無双を喰らって、逃げるのは無理と悟ったのか。帝王イカはこちらに向って来た。
筏にその長い腕を巻き付けてきた。
「リオ!サンダーソードよ!」
「私の十八番じゃないの。わかったよ。」
オレ達はそれぞれの剣に電流を流して帯電させてそれで斬りつけた。
しかし何度も何度も斬りつけたが長い手足を切り刻むだけで中々致命傷にはならない。これはきりがないな。仕方ない。覚悟を決めるか。
「リオ!ちょっと集中するからオレを援護して!ゴランさん!今から出す技の事は他言無用でお願いします!」
「「おう!」」
オレは二人に指示を出すと、集中を始めた。海の広大な気を体内に集め、体内の気を練り直して全てを両の掌に集めた。気が集中した手のひらはうなりを上げ光を放っていた。
ついに帝王イカはその巨体を水面に現した。
「今よ!アメリ!」
「おう!エネルギー破!」
オレの前方に繰り出された両の掌からエネルギーの塊がビームのように一直線に飛び出した。エネルギー破はオレの狙い道理帝王イカの目と目の間に大きな風穴を開けて突き抜けた。
「リオ。後はよろしく。」
そう言うと全エネルギーを使い果たしたオレはその場に崩れ落ちた。
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