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第183話 帝王イカ

 



「あ、アメリ!クラーケンなの?」


「クラーケンじゃないわ。」


 リオの焦った問いにオレは鑑定を使って魔物を調べて答えた。


「良かった。クラーケンじゃないのね。」


「それがあんまり良くはないわ。クラーケンほどじゃないけど強いのは確かよ。同じくS級だからね。」


「えー。それじゃどうするの?アメリの事だから、もちろん何か策はあるよね?」


「もちろんあるよ。とっておきの策がね。ゴランさん。頼みます。」


「へ?」


 オレがお願いするとゴランは気の抜けた返事をした。そりゃそうだよね。何の打ち合わせもしてないものね。


「へ?じゃないわよ。逃げるよ。リオも漕いで。帝王イカがお食事をしている隙に逃げ出すよ。」


 オレ達3人は全力で逃げ出した。ゴランは船尾で櫓を漕ぎ、オレとリオは左右でオールを漕いだ。このために村で一番速く漕げる男を雇ってたんだ。でもいくらオレ達が全力で逃げても帝王イカが本気で追ってくればあっという間においつかれるだろうけどね。だが幸いな事に食事に夢中の帝王イカは追って来ることはなかった。


「どうやら、逃げのびる事ができたみたいね。」


 オレはオールを漕ぐ手を緩めて言った。


「ちょっと。あんた達、何の策も持たずに化け物を退治しようとしていたのか?」


 船尾で櫓を漕いでいたゴランが半ばあきれて言った。


「失礼な。策ならあるよね?ねえ。アメリ。」


「まあ、今回は下見ですから。次はとっておきの作戦でイカ野郎をやっつけてやりますよ。」


 とオレは言ったが実のところは何にも考えてないぞ。どうしようか。困ったな。とりあえず、陸に戻って考えようか。


 オレ達は陸に上がるとゴランの家で作戦会議をすることにした。


「アメリ。また白神を呼んでやっつけてもらいなよ。」


 白神はオレと友達になったオルカの魔物でクラーケン退治の時には手伝ってもらっていた。


「それがオレとサオリが美少女戦隊本隊から離れた時から会っていないんだよ。たぶんキンリーの近海にはいるとは思うけど。」


「えー。残念。じゃあ、どうする?みんなを呼んでくる?」


「うーん。美少女戦隊として正式に依頼を受けるとなると、クラーケンじゃないと言えど、とてもこの村じゃ報酬を払いきれないよね。」


「じゃあ、どうすんのよ?」


 うーん。帝王イカは大きいけどクラーケンほども大きくないよね。じゃあ、あれでいけるかな。


「オレとリオのエース二人だもの、なんとかなるさ。」


 そう言ってオレはにやりと笑った。


「あ、アメリ。その顔はまたなんか卑怯な作戦を思いついたね。」


「卑怯とは何よ。卑怯とは。賢い作戦と言い直しなさい。」


「はい。はい。賢い作戦です。それでその賢い作戦てどういうの?」


「それはね。・・・・・・・・・・・・・・・」




 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 オレ達3人は再び帝王イカのテリトリーへと来ていた。


「しかし、こんなものどうするんだい?」


「それは後のお楽しみって所よ。」


「あ、リオ。それはオレのセリフだろう。ゴランさん。まあ、黙って見ててください。」


「お、おう。」


 オレはゴランに答えるとアイテムボックスから別のある物を取り出して海にぶちまけた。


「うわー!きもい。よくそんな物を大事に取ってたもんだ。」


 リオがキモがるのも無理はない。基本この世界の人達は臓物を食べない。その食べない臓物を冒険者ギルドで分けてもらってアイテムボックスに潜ませておいたんだ。どうせただでもらった物だ。オレはその血も滴る新鮮な奴を桶で何杯も景気よく海にぶちまけた。


「そ、そんな物を海にぶちまけてどうするんですか?」


 神聖な海を魔物の血と臓物で汚されたと思ったゴランがむっとして聞いてきた。


「まあ、黙って見てて。ほらさっそくおいでなさった。」


 オレの指さした海面を割ってマッドシャークが飛び出した。


「じゃあ、さっそく行くよ。ふん!」


 そう言ってオレは銛を、臓物を夢中になってむさぼり食っている一匹のマッドシャークに向って投げた。


「よし。どうやら刺さったみたいね。リオ。お願い。」


「わかった。サンダー!」


 リオは手に握ったロープに電流を流した。そう。これはかってマッドシャークを仕留めた方法だ。ロープの先にはオレが投げた銛が付いているのだ。もちろんロープにはアイアンボールの体液をたっぷりとしみ込ませてある。超電導なアイアンボールの物だ。ロープを伝った電流はマッドシャークの体内に流れた。気絶したマッドシャークは腹を上にして海に浮かんだ。リオには殺さないように手加減して魔法を撃つように言ってあったのだ。


「よし。引くよ。」


「「おう!」」


 オレ達3人はロープを引いた。いくら巨体のマッドシャークと言えど気絶して水の上に浮けば引くのは簡単だ。気絶したマッドシャークを狂気の晩餐会をしている仲間達から素早く引き離した。こいつらは共食いも平気でする奴らだからね。


「じゃあ、準備してくるよ。」


 そう言ってオレは海に飛び込んだ。良かった。温かい季節で。


「なるほどねえ。こんな方法があったんですね。」


 ゴランが感心して言った。


「だから策があるって言ったでしょ。」


 リオが得意げに言った。考えたのオレなんですけど。


「じゃあ。帰ろうか。」


 準備を終えたオレはタオルで体を拭きながら言った。早く帰らんと今度はオレ達が帝王イカに襲われるからね。


 オレ達は先程のように陸を目指して全力で船を漕いだ。




 *******************************





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